第492話 同じことでも解釈が違う
メノとの昼食を終え、自室に戻ってきた。
「ふぅ、まさか腹内アレス君があそこまで反応するとは……ちょっと聞いてよ、キズナ君!」
というわけで、先ほどの出来事をキズナ君に語って聞かせた。
……愚痴じゃないからね? たぶん。
でもまあ、普段はほとんどメシのことしか眼中になかった腹内および原作アレス君。
それがあんなに意思をハッキリ示したのは、本当に珍しいことだった。
……といいつつ、ソエラルタウトの実家に帰って2人の母上やギドとの触れ合い辺りから、原作アレス君の意識が表面化することは結構あったか。
特に、ギドとの戦闘で危うくとどめを刺しそうになったときなんか、体の支配権を原作アレス君が持ってったぐらいだし。
……もしかすると、混ざり合ってた意識の乖離が進んでいるのかな?
ま、それはそれで相棒って感じでアリか……今でもメシのことなど考えてることが違ったりするもんね。
あと、原作アレス君って極度のめんどくさがりだから、大半の活動は俺に丸投げ気味だし。
『これからも俺たち……上手くやっていこうぜ?』
『……』
『お~い、聞いてないのぉ~?』
『うるさい! 俺は眠いんだ! 黙って寝かせろ!!』
『は~い』
ま、こんな感じだし、俺たちはこれでいいってことなんだろうなぁ。
フフッ、今後ともよろしく。
とまあ、そんな感じでメノとの昼食の反省会……らしきものを終えようか。
目指すところは違えど、メノも目標に向かって突き進むようだし、ぜひとも頑張ってくれたまえ!!
そう締めくくることとした。
「さて、午後からは……まず勉強かな?」
まあね、いくら後期から座学の割合が減るとはいえ、消滅するわけじゃないからね。
特に歴史とかこの世界ならではの知識については、マジで弱いから真面目にやっとこう。
というわけでこの1週間、後期から新しく始まる分野について、そして前期の内容については復習する意味も込めつつ図書館から入門編の書物を大量に借りてきてひたすら読破している。
やっぱね、一番大事なエッセンスは入門書にこそアリだと思うんだよね。
それから、著者ごとに得意分野とか大事だと思うことが微妙にズレていることもあって、その中で重複してる部分は基礎としてマジで大事なんだなってことも分かるし。
あと、著者ごとに説明の仕方が違うこともあって、ひとつのことを多面的に見ることができるのもいいかなって感じがする。
……それに、説明がよく分からん部分はポイってできるしさ。
「そんなこんなで、今日も1冊……いっちゃいますか!」
そうして数時間かけて1冊を読破……入門編とはいえ楽じゃない。
また、同じ分野を既に何冊か読んでるから数時間で読めたっていうのもあるかもしれない。
「これが初見だと……もっとかかっただろうなぁ」
こんな感じで、しばらくは入門編を読みまくる日々を続けるつもりである。
「そうして知識の基礎体力が確立したら……専門書に入ってやるぜ!」
まあ、ソエラルタウトの実家では、周囲のお姉さんたちにカッコつけるために前期で学んだ部分の専門書を読んだりもしてたんだけどね。
その効果のほどは……どうだろうね?
お姉さんたちが「アレス君! こんな難しい本を読めるなんて、ステキね!!」とか思ってくれていれば嬉しい限りだ。
そんな場面を想像して独りニヤける俺であった……あ、キズナ君に見られちゃってるね、もっとクールにいかねば。
「ふむ……夕食まではいつものように剣術か魔法の練習だな! 確か昨日は魔法の練習だったから……今日は剣術にしよう!!」
というわけで、自室で素振りやレミリネ流剣術の型練習を重点的におこなった。
こんなふうにレミリネ流剣術の練習をしている時間が一番レミリネ師匠を近くに感じられるしさ……まあ、夢で逢える時間も凄く素晴らしいんだけどね。
こうして夕方まで剣術の練習をして、その後はシャワーで汗を洗い流す。
そして軽くポーションを飲んで一息ついたところで、男子寮の食堂へ向かう。
ふむ、ロイターたちはまだ来てないようだな……なら適当なところに座るか。
「今日の昼のことなんだけどよ……お前ら知ってっか?」
「昼か……」
「きみがいいたいのは……あの魔力操作狂いが令嬢を泣かせてたってことかな?」
「えっ!? そんな……ひどい!!」
「おっ、耳が早いねぇ! そうなんだよ、あの魔力操作狂いがやっちまったみたいでな……さめざめと涙を流すあの子……あの深い悲しみに、見てるこっちまで切なくなっちまうほどでな……ホントに奴はひでぇ男だよ!」
「……いや、お前はちゃんと見たのか? あの令嬢、そういう感じじゃなかったぞ? なんか、こう……感動しましたっていうふうに俺には見えたけどな?」
「えぇっ!? そうなの……事実の曲解ひどい!!」
そう、メノが涙を流したっていうのは事実だが……あれは感極まってのものだからねぇ。
「……う~ん、ぼくは魔力操作狂いが令嬢を泣かせてたって話を聞いただけだから、どっちとも判断がつかないけど……わざと悪いふうにいうのは感心しないな」
「な、えっ……いや! 俺は!!」
「まあ、人によって同じことでも解釈が違うことはよくあることだからな……お前がそう思ったのなら、そうなんだろうさ。でも、俺は違った、それだけのことだ」
「えっ!? それだけ……もっとないの!?」
「まあまあ、その話はそれぐらいとして……今日はもうひとつ注目の話題があったんだよね、むしろこっちのほうが重要かな? それはなんと! あの王女殿下が令嬢たちの争いを仲裁なさったという話だ!!」
「えっ!? それは……なんとご立派であらせられる!!」
「お、おう! そうなんだよ! 実は俺もその話がしたくてな!!」
「……いや、俺もその場面を目にしたが、争いというにはささやかなものだったぞ?」
うん、それなら俺も見た……あれはなぁ、確かに争いというにはささいなケンカだったかもしれんが……そっからデッカイ争いに発展する可能性もなくはなかっただろうからなぁ。
まあ、王女殿下は原作ゲームのメインともいえるヒロインだったからね、ちょっとは目立つこともせんとならんということなのだろうさ。
……それをいうと、主人公君の目立ち度合いが足りない気もするけどね。
いや、俺がそこまで注目してないからっていうのもあるかもしれないけどさ。
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