第489話 互いに支え合って生きる
それにしても、夫人や女性当主は俺の味方……か、くぅ~っ! なんんてステキな響き!!
まあ、それによって女子たちから誘いを受けるようになったというめんどくささはある。
だが、それがお姉さんたちのお心遣いの表れだというのなら、ありがたく感謝すべきことだろう。
とはいえ、お姉さんたち本人からお誘いを受けたかった……というのが正直な気持ちではあるけどね。
……あ、そういえば、夫人方とあまりにも熱心に接していると、その旦那たちから誤解や嫉妬を招くかもってギドに注意されたんだった。
うむ、俺なりに節度を持っているつもりではあるが……気を付けねばなるまい。
なんてことも考えはしたものの……実際のところ、俺自身を気に入って味方しょうとしてくれる方もいらっしゃるかもしれないが、どっちかっていうと母上を敬愛してという方のほうが多いだろうなぁ。
ま、考えようによっては、それだけ俺が母上の息子として認められつつあるともいえるだろうか……
うん、その期待を裏切りたくはないよな!
そうであるなら、もっともっと実力を付けて「あれぞまさしく、リリアン様のお子に違いない」といわれるようにならねば!!
それと……父親からの指示がどうとかって話も出てたけど、俺の記憶が正しければ、武系貴族からはさほど嫌われてないって聞いたような気がするから、そういうことなんじゃない?
しかも俺って、お姉さんたちほどじゃないけど、オッサンとも割と仲良くなりやすい傾向にあるしさ。
「でもでも~大人たちにいわれてする恋愛ってウザくな~い?」
「そうよねぇ、もっと燃えるような恋をしてみたいわぁ」
「確かに、なんていうか……本人不在って感じよねぇ? そこにホントのキモチはあるのか、私はそれを問いたい」
「そうはいっても、その程度で済んで私たちって恵まれてるほうじゃない? 昔なんて、相手を親とかの当主に決められるのが当たり前……ひどい場合だと、生まれる前から相手が決まってたなんてこともあるらしいし……というかほかの国だと、そういうのが今も続いてるところがあるって話でしょ?」
「嫌ァッ! そんなの絶対に嫌よッ!!」
うぉ、ビックリした……あの女子は恋愛至上主義とでもいえばいいのだろうか、凄いリアクションだったね。
でもま、原作ゲームの都合とはいえ、最初っから許嫁がいないっていうのは、特にあの女子のような層には福音だったのかもしれんね。
逆に……これは男女とも共通していえることだろうが、自分で狩るってことができない奴には不幸かもしれんけど……
今もね、男子寮の食堂には嘆きの詩を口ずさんでる奴が大勢いるぐらいだしさ……
かくいう俺も、アレス君ボディに転生しなければきっと、ロンリーウルフだったろうけどね!
「……まあね、周りがうるさいっていうのはあるけど、一応自由な恋愛を許されてはいるもんねぇ?」
「うん、家ごとにうるささのレベルは違うだろうし、家格とか身の程を弁える必要はあるけど、それ以外は割と自由気ままよね」
「つーか、話は戻るけどよ、あの人に関していえば誰も恋愛どうこうまでは期待されてねンじゃねーの? そんで『あの方のお役に立てるようになりなさい』だっけ? それもなんかあったとき味方しろってだけの話だろ……まあ、ホントにそんなときがくるかは知ンねーけど、とりあえずそれまでは自分でも磨いてろってカンジでな」
「そう……なのかなぁ? だといいけどぉ」
「そもそもだけど……うちらの中で、ファティマに勝てるのっている? あとパルフェナもライバルになり得るとして……どう、無理じゃない?」
「ちょっと……キビシイかなぁ……?」
まあ、ファティマとかパルフェナって同じ美少女の中でも、どことなく華やかさが違うっていうのはあると思うからね……そういう返答になるのも分からなくはない。
「えっ……ちょっとなの!? 圧倒的にじゃなくて!?」
「……あぁ? 何それ……もしかして、ケンカ売ってんの? 買うけど?」
「いいよぉ? 私も意外と狂暴ってトコ……魅せちゃうよ?」
「ストップ! ストーップ!!」
「一回! まずは一回落ち着こ! ねっ!!」
「そうそう! それに、ここには男子たちもいるんだしさ!!」
「ほら、周りみんな見てるよ?」
「……チッ」
「別に私、これぐらいでビビる男なんかいらないけどね?」
あ……あれ? 確か君、俺に声をかけるのをビビってなかったっけ?
変なスイッチでも入った? なんかキャラ違くない?
「おぉ~コワっ! 私はおっかないですよぉ~って? あはははは! ザコ女が凄んでも大したことねぇよ?」
「しょうがないね……今後のためにも上下をハッキリさせとこっか?」
「だからやめときなってぇ!」
「ま、めんどくせーから、やらせときゃいンじゃねーの?」
そして何やら不思議な盛り上がりを見せているような……?
「お、どしたどした?」
「なんか知らないけど、あの令嬢たちがケンカを始めたみたい」
「ふぅん? とりあえず負けたほうを優しく慰めてあげたら……イケるかな?」
「お前……カスだな?」
……だね。
そして周りに友人たちもいるし、そう簡単にはいかないだろうよ。
「こんなところで揉めるなんて、愚かな子たちねぇ……」
「どうせ下位の者たちでしょう? 私たちが気にすることもありませんわ」
「それもそうね、行きましょう」
そして素通りしていく令嬢たちもいるが……
「あなたたち、何を騒いでいらっしゃるのかしら?」
「あぁ? ……えっ?」
「今忙しいのよ……ね……えっ?」
「お、王女殿下ッ!!」
「あわわ……」
「あ~あ、こりゃやべーわ」
「だからウチ、止めたのにぃ……」
まさかの王女殿下がご登場。
もちろん、取り巻きたちも一緒。
まあ、未来の近衛殿ことティオグの話ではローテーションを組んでるみたいだから全員ではないけどね。
そうして、王女殿下によって瞬く間に荒んだ雰囲気が沈静化させられていく。
「……ときには衝突することもあるでしょう。ですが、わたくしたちは互いに支え合って生きる大切な仲間なのですから、相手を思い遣る気持ちは大事にしていきたい……そうは思いませんか?」
「王女殿下のおっしゃるとおりです」
「申し訳ありませんでした」
「分かってくれればいいのです。さあ、お互い握手をして仲直りしましょう」
「はい」
「仰せのままに」
「もし……また何かありましたらおっしゃってください、わたくしがあいだに入りますわ」
「い、いえ! 王女殿下にそこまでしていただくわけにはッ!!」
「そうですとも! 私たち、最高の親友ですからッ!!」
「そうですか、それを聞いて安心しましたわ」
こうして一色触発状態だった2人は仲直り……できたのかな?
本音のところは知らんけど、とりあえずこの場は丸く収まったようだ。
「お待たせしてごめんなさい、アレス様……授業がちょっと長引いてしまいまして……」
「お、おう」
そして待ち合わせしていた女子がやっと到着。
悪役ならここで「遅ぇぞ!」って怒るところなのかなぁ?
ま、やらんけどね……王女殿下に諫められるのも面倒だし。
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