第488話 これが何を意味するか分かって?
昼食の約束をしたところで、エトアラ嬢は去っていった。
そこでなんとなく、嵐が通り過ぎたような感覚になった。
まあ、もともとセテルタ君のこともあんまり印象に残ってなかったからね、それだけにあれだけギャーギャーいってる姿に驚きだったのかもしれない。
でも、よく考えてみればセテルタ君もAクラス……ということはだよ、彼も女子からのお誘い攻勢に辟易としているタイプなんじゃないのかな?
たとえ本人が地味とか実力的に微妙だったとしても、やっぱり家の爵位っていうのはそれだけ重要視されるみたいだからね。
あ、いや、セテルタ君が特別劣ってるっていいたいわけじゃない……エトアラ嬢には「豆粒にも劣る」とかいわれちゃってたけどさ。
それはともかくとして、俺みたいによっぽど嫌われていた奴でもない限り、きっとメシの時間の多くは女子と共に過ごしていたはず。
そうであるなら「貴重な時間を無駄にしないように」だなんて忠告を送ってくるのも不思議な気がする。
だって、友人とかでもない限り、本命以外と過ごす時間って無駄といえば無駄だろうからさ。
ああ、モテモテタイムを謳歌したいってタイプもいるか……
とはいえ相手も貴族の令嬢……下手なことをしたら家同士の問題にもなりかねない。
それに、相手が見ているのは自分ではなく、家の爵位……これは切ない。
まあでも、主体性ない系男子なら来てくれた令嬢の中から一番よさそうなのを選んでハイ終わりって感じもアリかもしれん。
基本みんな美少女で、ぶっちゃけ前世感覚からすれば誰でもオールオッケーともいえるレベルだしさ。
でも、そんな中で俺は、お姉さんじゃなきゃイヤ。
はぁ……俺も贅沢になったもんだねぇ。
ま、ああだこうだ脳内でグダグダいってみたが結局、セテルタ君はよっぽどエトアラ嬢のことが嫌いってことだろうね。
もしかして、昔ナンパしてこっぴどくフラれたとかだったりして……
そして「あなたみたいなちっちゃい男なんてイヤよ」とかいわれたら落ち込むしかないもんな……哀れセテルタ君! 強く生きろよ!!
まあ、その点俺はさ、ダイエットを必要とするぐらいデッカイ男だからね!
いや、今はもう横幅は標準レベルになっているけどさ。
それで縦のほうはたぶん、イケてる男子の最低限には到達しているはずなので、あとはどこまで伸ばせるかが勝負ってところだろう。
よっしゃ! モリモリ食べておっきくなろう!!
……あ、腹内アレス君がアップを始めちゃったよ。
中央棟の食堂へ移動しているあいだ、気分に任せてそんなことを考えていた。
「見て、あの方よ……どうする? 声をかける?」
「えぇ、どうしよっかなぁ……やっぱり、ちょっとコワいんだよね」
「でもさ、少なくとも1回ぐらいはアタックしなきゃじゃない? コワいとかいってらんないよ!」
「じゃあ、アンタが率先して行きゃいいじゃない!」
「私はパ~ス!」
「あ、それはズルいんじゃないの!?」
「そうよそうよ! あなたも己の運命と戦いなさいよ!」
「いや、それは大げさ過ぎじゃない? それに私は実家から何もいわれてないも~ん!」
「駄目、そんなの卑怯よ!!」
「いいなぁ……お父様さえ余計なこといわないでくれたら、もっと気楽で楽しい学園ライフを送れたっていうのにさ……」
「うちはママがね……」
「アンタらは両親にいわれてでしょ? アタシなんか、叔母様にいわれてよ!?」
「あ、ウチも~なんかね、とにかくあの方のお役に立てるようになりなさいっていわれちゃってさぁ、そんなの知らな~いっていいたいところだけどぉ、なかなかそうもいかなくってぇ」
待ち合わせ場所に到着。
そこで、小娘の集団が何やらガヤガヤしていた。
そしてたぶん俺のことなんだろうけど……やっぱり両親とか親類の指示で誘いに来てたんだなぁ。
「はぁ~あ、前期の頃はこんなめんどくさいこといわれてなかったのにねぇ?」
「まあ、いい相手を見つけろとはいわれてたけど、逆にその程度って感じだったかなぁ?」
「そうそう、少なくともあの方をピンポイントでってことはなかったわ」
「つーか、あの人って、ちょっと前まで偉い人たちに嫌われてなかったか?」
「うん、特に中央はそうだったはず……いや、今でもあんまりいい顔はされてないと思うんだけど……」
「それなんだけど、私の情報網によるとね……あ、いい? これはここだけの話だからね?」
「もったいぶらないで教えてよぉ」
「わくわく」
「どうせ大した話でもないでしょ? さっさと話しなさいよ!」
「ふぅん? 内容によっては、パフェを奢ってあげようじゃないの」
「つーか、そんな極秘情報をペラペラしゃべっていいんか?」
腹内アレス君……パフェにだけ反応しないでおくれよ……
そしてチラリと視線を向けてみた感じ、ペラペラ令嬢は極秘情報をしゃべる気マンマンのようだ。
「おっほん! それでは、お話しましょうか……まあ、あの方が文系の中央貴族に疎まれているっていうのは割と有名な話よね? でも、それは全員ではない……まあ、それはそうでしょうね。ここで注目なのは、男性の当主は今もなおあの方をよく思っていない……しかしながら、その夫人や女性の当主はあの方の味方だということ! これが何を意味するか分かって?」
「あ、そっか、だから叔母様は……」
「うちのママも、そういうことだったのね……」
「そういえば、あの方ってそういう層の女性とばかり熱心に関わっていたわよね……てっきりそういう趣味なのかと思っていたけれど、なるほど、そういう作戦だったというわけね、まんまとしてやられたわ……」
「えっ! 私はお父様にいわれてなのよ!? それなのに、なんでぇ……!!」
いや、ゴメン、作戦とかないから……
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