第486話 お得感もあるわなぁ
後期が始まって1週間が過ぎたってところ。
ようやくというべきか、夏休みモードだった心と体が学園モードに切り替わってきたって感じだ。
といいつつ、授業だけは本気で受けていたけどね!
それはもちろん、エリナ先生が教えてくれるのだからね!!
どちらかというと問題は、それ以外の日常生活……もっといえば、女子からのお誘い攻勢についてだね。
だがそれも、俺なりのリズムというか対応の型みたいのができてきたといえる。
フッ……これでもう、余裕さ。
そんなことを考えつつ着替えを済ませ、朝練に向かう。
「それじゃあキズナ君、朝練に行ってくるよ!」
フフッ、キズナ君も元気いっぱいみたいだねぇ。
見た感じ、そんな気がしてくる。
そうして、いつものコースに到着。
これもまたいつものように、ファティマとランニングを開始。
「令嬢たちとの食事にもだいぶ慣れてきたかしら?」
「そうだな、俺なりに本気で魔力操作について語っているのが伝わっているのか、みんな真面目に聞いてくれているんじゃないかな」
「……まあ、そうみたいね」
返事に若干の間があったが……ま、いっか!
「彼女たちが魔力操作に目覚めて、『もっと頑張りたい!』って感じになってきたら、平静シリーズをプレゼントするのもいいかなって思っているんだ」
「そうねぇ……今まで家庭教師等に強制されて嫌々やっていた令嬢だと、平静シリーズはまだ早いでしょうね」
「だよなぁ……」
「学園の先生たちも、例年に比べれば生徒たちに魔力操作に励むよう話しているみたいだけれど……最終的には個人の判断になってしまうものね」
「ま、授業が終われば、あとは自由な時間だもんな……遊びたい盛りの連中には『魔力操作なんかやってられっか!』ってなるのかもしれん……とはいえ、魔力操作によって魔力と語り合うのも悪くないと思うんだけどなぁ」
「ふふっ、そうやって魔力操作を楽しめるのも才能のうちかもしれないわね?」
「そうかぁ?」
確かに日々の進歩は認識するのが困難なほど微々たるものだとは思うが、それでもやっぱり確実に進歩できている。
特に命の危険もないし、やればやっただけ実力が上がる……そう思えば、こんなに楽しい練習ないでしょって思うんだがねぇ。
「そうよ、モンスターの森等なんらかの危険と接している武系貴族でも必要に駆られてやっているだけで、さほど楽しいとは思っていないもの」
「ふぅ~ん? そうなんだなぁ」
この辺の感覚は、前世で魔法がなかったっていうのが影響しているかもしれんね。
あと、効果がハッキリしているから、レベル上げ感覚でイケるっていうのもあるかな。
「なんにせよ、平静シリーズに到達できる令嬢が出てくればいいわね」
「おうよ!」
う~む、ぜひとも頑張ってもらいたいなぁ。
……魔王復活もあり得るから、さらにそう思っちゃう。
まあ、普通の令嬢レベルだと、おそらく戦争になってもコモンズ学園長が守護する学園都市内で待機するだけって感じになりそうだけどね。
とはいえ、何があるか分からないからね、やっぱり自衛能力はあったほうがよかろう。
そんな感じで約1時間の朝練を終え、自室に戻る。
そしてシャワー等を済ませ、男子寮の食堂へ。
ちなみに朝食まで誘われる日もあるのだが、今日のところは大丈夫だった。
といったところで、朝のゆったり食事タイムを満喫しますかね。
「最近『魔力操作、魔料操作……』ってブツブツいってる子がチラホラ目につくよな?」
「うん……なんていうかその、あの子たちの目がさ……ちょっと怖いよね?」
「……そんなこと、理由は分かり切っていますよね?」
「うむ、あの御仁しかおるまい」
「い、いや、それは分かるけどさ……なぁ?」
「うん……秋季交流夜会が来週だっていうのに、カンベンして欲しいよ……」
「確かに、そうやってフリーな令嬢に余計な色が付くのは好ましくないですよね……」
「まあ、魔力操作に励むこと自体は別に問題ないのだろうが……」
そうだよね! 全然問題ないよね!!
「いや、あのキマッてる感じ、ぜってぇやべぇって!」
「お願い、目を覚ましてぇ! そして僕と一緒に夜会に参加してぇ!!」
「なんて嘆いてみても、彼女たちはあの方の教えに従うのみ……はぁ、どうしてこうなった……」
「とはいえ、そうやって実力を伸ばした令嬢を娶ることができれば、それはそれで悪くはないだろう」
「そりゃあ、実家の爵位の割に実力があるってなったら、お得感もあるわなぁ……」
やっぱり傾向としては、次代のために少しでも保有魔力量の多い相手を選んでおきたいっていうのはあるだろうからね。
そうして上位貴族の子は代々保有魔力量の多さを誇ってきたわけだろうし。
「僕より強い令嬢はイヤだよ……」
「気持ちは分からなくもないですが……その場合、かなり選択の幅が狭まりそうですね?」
「うっ……」
「まあ、このような状況下においては、もう少し魔力操作に励むべきということだろうな」
「微妙に知ったふうな口を聞いてるけど……この中で一番魔法がヘタクソなのはお前だからな?」
「……むぅ」
見事な轟沈。
まあ、下手だからこそ、それを補える相手を探したいっていうのもあるかもしれんね。
とはいえ、君も頑張ってくれたまえ!
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