第485話 想いの力
風呂から上がり、アイスミルクコーヒーを飲んでしばしゆったりしたところで自室に戻る。
「ただいまキズナ君、さっきも少し話したけど、今日はスケルトンダンジョンに行ってきてさ……」
ダンジョンから帰ってきたときは着替えてすぐ食堂に行ったので、ただ行ってきたとしか話していなかった。
そこで、今はある程度時間があるので、レミリネ師匠との思い出話を交えながらキズナ君に今日の出来事を語った。
もちろん、魔力操作をしながらね。
「はぁ……また逢いたいなぁ……」
なんてこともしみじみと呟きつつ、夜が更けていく。
「さて、そろそろ寝る時間かな……それじゃあ、おやすみキズナ君」
挨拶を一言交わして眠りに就く。
………………
…………
……
『オォォォォ!』
『ソノキドウハ、ミキッタ!』
『オォッ!?』
打ったぁ! これは大きい!!
投石スケルトンが投げた石を、見事打ち返したゲン。
ふむ……これはホームランか?
と思いきや……
『ピギャ!』
『ギュ!』
ユニオンスライムの巨体を足場に、かつ弾力を利用してトランスフォームスライムが大きく跳躍。
そして空中で羽を開いて石をキャッチ。
見事な連携である。
『ピッギャァ!』
『ギュ!』
『オォォ!』
『アタリハ、ワルクナカッタハズ……ヨシ、ツギダ!』
前も野球っぽいことしてんなって思ったけど、さらにらしくなってきた気がする。
いや、守備で空を飛ぶのってどうなん? って気もしないでもないけどね。
それにしてもなんというか……みんなで野球チームでも作るつもりなのかな?
しかも何気にメンバーはボスクラスの実力者ばっかりだし。
いや、投石スケルトンは石を投げてくるってだけでノーマルなスケルトンだけどさ。
でも、アイツにもらった石をイゾンティムルの愚王ことスケルトンキングに投げたら一発爆散だったからな……侮るわけにはいかない。
それから、ゴブリンエンペラーは相変わらず武骨な剣を磨いてご満悦なようだが……ジェネラル共々参加しないのかな?
玉座に座っているけど、見ようによってはベンチ入りしているようにも見えるんだけどね。
まあ、そのうちバッターとして武骨な剣を振っているかもしれないし、そのときはきっと飛ばすだろうなぁって思った。
といいつつ、剣が傷つくのを嫌って武骨な剣は使わないかもしれないな。
だとすると、初めて会ったときに持っていた豪華な杖をバットにするのだろうか……でも、それだとすぐ折れちゃうかな?
『ギャギャ』
『カタカタ』
『プルプル』
えぇと、それでこっちは……何してんだ?
『ギャギャ』
『カタカタ』
『プルプル』
見ているとゴブリンハグとバターナイトスケルトンが、それぞれちっちゃい木の枝とバターナイフでスライムをつんつんしていた。
そして、つんつんされるたびスライムはプルプルと身を震わせているだけ。
それをひたすら続ける三者……面白いのかな?
というか、木の枝はともかく……いやそれもそれだが、とりあえず「バターナイフでつんつんすなー!」ってツッコミたくなっちゃうね。
ま、まあ、スライムもさほど嫌がってる感じでもないし、これはこれで彼らなりのコミュニケーションなのかもしれない。
それになんだか、見てると「のどかだなぁ」って気もしてくるしさ。
そんなことを思いつつしばし彼らの様子を眺めていたら……
……!! この感じ、レミリネ師匠だぁ!!
少し離れたところで、和気あいあいとノーマルなスケルトンたちに囲まれているレミリネ師匠の姿を見つけた。
『……てか、スケルトン多ッ!!』
それはそれとして、レミリネ師匠のいるところへ向かってみる。
『あ、これはどうも』
『オォ』
俺が近づいていくと、親切なスケルトンが道を譲ってくれたりもする。
そうしてようやく、レミリネ師匠の前に辿り着いた。
『……レミリネ師匠!』
『アレス君、久しぶりだね! そしてまた、一段と輝きが強くなったねぇ』
そういいながら、にこやかに……いや、見た目はスケルトンのボディだから俺がそう表情をイメージしているだけだけど、レミリネ師匠は俺の頭をポンポンしてくれる。
そうだ、スケルトンダンジョンの思い出の空き地で感謝の祈りを捧げたが、改めてレミリネ師匠本人にお礼をいおう!
『レミリネ師匠、実はですね……』
そうして、遺してくれた剣の力によってギドの自滅魔法の解除に成功し、救うことができたことを話した。
『そうだったんだ、アレス君の助けになれたのなら嬉しいけど……それはきっと、アレス君自身の想いの力によるものだよ』
『想いの力……ですか?』
『そう、想いの力……私もあのとき、みんなを守りたいって強く想って、そうしたら自分でも信じられないぐらいの力が湧いてきてね……』
あのときっていうのは、防衛戦のことであろう。
そして「みんな」っていうのはたぶん、今ここに集まっている人たちのことなんだろうなって思う。
まあ、たくさんいるけど、これでもその一部って感じかな。
そう思いつつ周囲に目を向けてみれば、スケルトンたちがウンウンと頷いている。
おそらく、レミリネ師匠の雄姿を思い返しているのだろう。
やっぱ、凄く凛々しくて格好よかったんだろうなぁ。
そんなレミリネ師匠の在りし日の姿を俺も想像してみた。
………………
…………
……
「……えぇと、ここは寮の自室で、朝……か? ああ、そうか、夢か……うん、そうだよね……」
この、俺にとって都合がよくて幸せな夢……久しぶりに見た気がするなぁ。
だけど、夢の中ででも逢えて嬉しかった。
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