第484話 そんな内容の話もしましたかねぇ?

 学園都市に到着。


「フウジュ君、今日はどうもありがとう、またよろしくな!」


 そう一声かけて、マジックバッグへ戻す。

 そして自室に戻り、冒険者装備を外すなどして着替える。

 この際、シャワーも浴びようかと思ったが、時間的に厳しいので浄化の魔法で済ませた。

 まあ、ロイターたちを待たせるのもどうかと思ったしさ。

 てなわけで、食堂へ移動。


「おっ、今日はヴィーン御一行も一緒か?」

「おうよ!」

「このあと模擬戦にも参加させてもらうつもりですからねぇ」

「今日もよろしくです、アレスさん!」

「……よろしく」


 そしてどうやらソイルも、夕食は仲間と食べるって感じで女子からのお誘いを断っているみたいだ。


「それで、アレスは今日どこに行ってたんだ?」

「ああ、スケルトンダンジョンへ挨拶に行ってきたんだ」

「そうか……」

「アレスさん……」


 おっと、しんみりした雰囲気にして気を使わせるのも悪いよな。


「そんで、ダンジョンに出てくるスケルトンの傾向が変わったみたいでな!」


 ビビりなスケルトンナイトの話をしたった。


「ふぅ~ん? そいつはダッセェスケルトンナイトだな!」

「でもまあ、相手がアレスさんではねぇ……」

「たぶん、スケルトンナイトたちなりに危険を察知したんだろうなって思っちゃいますね」

「……だな」


 このようにヴィーンたちが感想を述べてきた。


「そういえば……お前はゴブリンにも避けられているといっていたな?」

「ええ、おっしゃってましたね」

「うむ、ゴブリンにもらった腰布を巻いてないと逃げられる」

「えっと……確かワインレッドにキレイに染まってたやつですよね?」

「そう、それ」

「おいおい……ゴブリンの腰布だろ? そんなん巻いてんのか?」

「え、えぇと……僕らにはちょっと、理解が及びませんねぇ……」

「……」


 ソイルは森の中を一緒に走ったとき見ていたので知っていたが、それ以外のヴィーン一行は困惑顔を浮かべている。


「ま、ヴィーンたちとモンスター狩りに行ったときにでも、どんな感じか見せてやるよ」

「いや、ゴブリンの腰布なんか見たかねぇどな……」

「ま、まあ……仲間がやられて逃げるっていうのは分かりますが、何もしてない段階でゴブリンが逃げようとするっていうのは、ちょっとだけ気になりますねぇ……」

「……だな」


 とまあ、こんな感じで夕食の時間を過ごした。

 そして運動場へ移動し、食後の模擬戦である。

 このとき全員平静シリーズを、それも4つ身に付けて参加している。

 そこで頭部のニット帽かヘアーバンド、胴体のジャージ上下、そして履物のランニングシューズっていうのは割とみんな共通なのだが、それ以外は多少ばらつきがある。

 ま、それぞれ好みに合わせて、いろいろ試してくれといった感じだ。

 また、今日もどちらかというと平静シリーズに慣れることを重視した模擬戦……というか、組演武に近いものとなった。

 たぶん、しばらくはこんな感じになりそうだね。

 でも、これはこれでガッチガチに打ち合うのとは違った学びがあるのでいいと思う。

 技の一つ一つを丁寧に自分の体に馴染ませるとでもいえばいいだろうか、そうすることでさらに技の理解が進む気がした。

 こうして時間いっぱいまで過ごし、談話室へ移動して反省会。


「ソイルの阻害魔法で慣れてるつもりなんだが、それでもやっぱ楽じゃねぇなぁ……」

「うん、それに僕らは保有魔力量がみんなに比べて少なめだからねぇ……」


 まあ、トーリグとハソッドは男爵家相応の保有魔力量だからね、特に俺みたいに魔力のゴリ押しができないぶん苦労するのは仕方あるまい。

 とはいえ、ソイルの阻害魔法で慣れているというのも事実で、動きそのものは悪くない。

 そのためおそらく、ほかの保有魔力量が同じ程度の学生より実力は上であろう。

 そしてロイターやファティマたちも、着々と平静シリーズの使用感に慣れていっているようである。

 たぶん、5つ目に挑戦するのもそう遠くないんじゃないかなって思う。

 そうして反省会を終え、今日も大浴場へ。

 そして風呂に浸かっているあいだ、ふと昼間のことを思い出したので、話題に出してみる。


「そういえば今日、『ヴィーン式女子との会話術』を試してみたのだが……俺にはまだまだ使いこなせなかったみたいだ」

「……私の?」

「おいッ! ヴィーン様式ってどういうことだよ!?」

「そういえば昨日……そんな内容の話もしましたかねぇ?」

「えっと……アレスさん?」

「またアレスは適当なことを……」

「あはは……いつものことですね」


 ヴィーン一行は「なんだそりゃ?」って反応をしつつ、ロイターとサンズは「またか……」ってあきれ顔を浮かべている。


「いやぁ、昼食時なんだがな……」


 てな感じに、昼の出来事を話した。


「そりゃ、ただ見つめられただけなんだから、誰だって多少は照れるわな」

「だねぇ……」

「なんというか、アレスさん……もうなんもいえないです」

「……それに私は関係ないのでは?」

「アレスのやることだ……やはりそんなものだろうな」

「ええ、まったくです」


 みんなから総ツッコミをくらった。

 ま、結局のところ無口キャラっていうのは、いうほど楽じゃないってことだね。

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