第483話 感謝の祈り

「そんでな、既にオメェも想像がついてるだろーけど、身なりのキレイなのはスケルトンナイトとしちゃあ、弱ぇ奴ばっかだ」

「なるほど、私が以前戦ったとおりの強さなら、スケルトンナイトの風上にも置けない連中ですね」

「まあ、それでも魔法を使ってくるだけ、並の冒険者には厄介ではあるんだけどな……とはいえ、ノーマルなスケルトンの中には地味に戦い方の上手ぇ奴もいたりして、それはそれで苦戦を強いられることもあったんだっけか……」


 投石スケルトンとか、いろんな意味でトリッキーだったもんなぁ。

 その印象が強いせいか、俺の夢の中でもオーガのゲンと何気にいい勝負ができちゃったりしてるし……

 ま、それはゲンが本気で潰しにいってないだけっていうのもあるかもしれんけどね。

 いや、俺の夢の中でそんな殺伐とされても困るけどさ……


「おそらくノーマルなスケルトンは、ベースとなった市民が貴族に比べて保有魔力量などの基礎能力が低いだけに、頭を使って戦っていたってことなのでしょうね」

「まあ、フツーに考えたら力押しは無理だろうからな」

「こうして話を聞いてみた感じの印象としましては、このダンジョンに出てくるスケルトンの傾向が変わっただけで、難易度そのものは変わってなさそう……いえ、むしろ城の中と同じ対策でいいだけ、簡単になったともいえそうな気がしますね」

「ああ、そうかもしんねぇな」

「なんていっておきながら、今日は攻略をするつもりはないんですけどね」

「そっか……ま、なんにせよ、油断しないようにだけは気をつけて行ってこい!」

「はい! それでは、行ってまいります!!」

「おう、またな!」


 こうしてプラウさんに見送られながら、スケルトンダンジョンに入る。


「さて、まずは廃教会に行ってみましょうかね」


 というのが、レミリネ師匠に稽古を付けてもらった思い出の空き地で練習もしようと思うからだ。

 それでもしかしたらだけど、つい練習に熱が入り過ぎて時間を忘れてしまう……なんてことも考えられるからね。


「……オォッ!? オォォォォ!!」


 廃教会への移動中、さっそく出くわしたスケルトンナイトだったが……俺の姿を見て逃げ出した。

 フッ……レベルが違い過ぎるからね! ドヤッ!!

 といいつつ、あの程度の奴が実力の差を理解できようはずもないと思うのだが。

 それに、ダンジョンでモンスターが再出現する際、それまでに戦った記憶とかも残っていないと聞いた気がする。

 そうであるなら、俺と以前戦って恐怖を感じながら討伐されていたとしても、覚えていないんじゃないかと思うんだよな……


「ま、ダンジョンのモンスターが考えていることはよく分からんね」


 なんてことを呟きつつ……やって来ました廃教会。


「ふむ、やはり誰もいないな……」


 前に来たときもそうだったし、やっぱりなって感じだ。

 彼らについては、成仏できたのだと前向きに考えよう。

 そしてもらった首飾りのおかげでギドを救うことができた、今はそのお礼の気持ちを込めた祈りを捧げるだけだ。

 そうして神像の前でしばしの時間、祈りを捧げた。

 またこのとき同時に、転生神のお姉さんやクール神、そしてオッサン神にもお礼の祈りを捧げた。

 とはいえ、特に転生神のお姉さんには常日頃から感謝の祈りを捧げているけどね。


「よし……それじゃあ、レミリネ師匠との思い出の空き地へ向かうか」


 廃教会を出たあとも遭遇したスケルトンナイトに避けられながら移動を続け、思い出の空き地に到着。

 ここでも、まずはレミリネ師匠に感謝の祈りを捧げる。

 そんなふうに祈っているうちに、精神が研ぎ澄まされていくようにも感じる。


「それでは……本日もよろしくお願いします」


 もちろん、ここにはもうレミリネ師匠はいないが、その姿はイメージできる。

 そのイメージのレミリネ師匠と型などの基本から始まり、模擬戦をする。

 まあ、イメージによる脳内模擬戦も時間を見つけて日々おこなっていることであるが、やはりこの場所っていうのは大きいかもしれない。

 イメージがより鮮明になるというか、レミリネ師匠との思い出が自然とどんどん浮かんでくるんだ。


「でも、だからこそ、やっぱり寂しいって思っちゃうよ……レミリネ師匠」


 こうして夕方近くまで、イメージのレミリネ師匠に稽古を付けてもらった。


「今日も、ありがとうございます……また、よろしくお願いします」


 そう挨拶をして、空き地をあとにした。


「……よっしゃ! 浸るのはこれぐらいにして、元気いっぱいアレス君で行きますか!!」


 というわけでダンジョンの出口に向かう道すがら、その辺にいた及び腰になっているスケルトンナイトに風歩で急接近し、ガツンとミキオ君の一撃をかましやる。


「なんちゃってスケルトンナイトよ……グッバイ」

「オォォォォ……」


 袈裟懸けにミキオ君を振り抜いたことで胴体を粉末状にさせ、そして同時に黒い霧となってナイトと呼ぶに値しない者は消えた。

 そんな感じでスケルトンダンジョンを出て、プラウさんに挨拶をしてから学園都市に向けて再度ウインドボードをかっ飛ばす。

 ……片手に串焼きを携えてね。


「ほ~んと、腹内アレス君は串焼きが好きだねぇ」


 お前だって好物だろうに……なんて反論をされながら、夕焼けと共に空をゆく。


「初めて会ったあの日、夕日に照らされてオレンジ色に輝くレミリネ師匠は本当に美しかったなぁ……」

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