第482話 傾向が変わったって感じだな

 昼食を終え、昨日予定したとおりスケルトンダンジョンへ向かう。


「さて、フウジュ君! 今日もゴキゲンで頼むぜ!!」


 なんてウインドボードのフウジュ君に一声かけ、大空に飛び上がる。


「ははっ、いい風だなぁ~」


 ソエラルタウト領でスノーボードを経験したこと、そして平静シリーズを使うなどして魔力操作の練習に励んでいるためか、俺のウインドボードを扱う技術が多少は上がっているのではないかと思う。

 まあ、思うだけだけどさ。

 とりあえず、もっとカッコよく乗りこなせるようになりたいもんだね。

 そんなことを思いながら、たまに横回転とか縦回転を加えてみたりなんかしちゃいながら空の世界を楽しむ。

 こうしてしばらく飛んだところで、スケルトンダンジョンに無事到着。


「また帰りもよろしく頼むよっ!」


 ここまで快適な空の旅を提供してくれたフウジュ君に挨拶をしつつ、マジックバッグへ戻す。


「ふ~む、ここも久しぶりって感じがするねぇ……」


 スケルトンダンジョン前に並ぶ屋台通りを歩きながら、そんな感慨にふけてもみる。

 ……途中、腹内アレス君の希望で串焼きを食べたりしたのは、ここだけの秘密にしておこうかな。

 それはともかくとして、屋台通りを抜けたところで、冒険者ギルドの出張所に向かう。

 そういえば……変な職員に難癖を付けられそうになったんだっけ。

 また会ったら、威圧感たっぷりの魔力をぶつけてやるとするかね……

 なんてことを頭の片隅で考えていたが……どうやらその必要はなかったようだ。


「おっ、アレスじゃねーか! 久しぶりだな、元気してたか?」

「はい、おかげさまで。プラウさんもお元気そうで何よりです」

「ま、アタシは相変わらずここでダンジョンの管理をしてただけだからな」

「プラウさんがいるからこそ、このダンジョンを安定的に管理できるのだと思います」

「おい、よせって! 恥ずかしくなってきちまうだろぉ!!」


 照れるプラウさん……年上相手に失礼かもしれないけど、めっちゃきゃわいい。


「それにしても……ちーっと見ねぇうちに、また強くなったみてぇだな?」

「本当ですか? ありがとうございます!」

「ああ、オメェも一応抑えてはいるつもりかもしんねぇけど、感じ取れる魔力の質が前に会ったときと全然ちげぇかんな」


 確かプラウさんは出身が貴族ではないとのことだったが、それで魔力の質を判断できるとは、さすがである。

 あのうさんくさい導き手がいうには元Bランクって話だったが、それも納得だね。

 というか、プラウさんも普段は抑えているのだろうけど、ふとしたときに感じる雰囲気的にAランクでもおかしくないのでは……という気さえしてくるぐらいだしさ。


「実は、ここしばらくのあいだ実家に帰っておりまして……その際、途中にあるノーグデンド領のスライムダンジョンの攻略なんかをしてました」

「えーと、ノーグデンド領のスライムダンジョンってぇと……ああ、あそこか! 確か、あんま冒険者が寄り付かなくてしょっちゅう大繁殖を起こしてるトコだったよな?」

「はい、ですが……きっとこれからは人気ダンジョンになること間違いなしです!」

「ほう……そうなのか?」

「そのヒミツは……これです!」


 そういって、平静シリーズを取り出す。


「あのダンジョンのことはあんまし詳しく知らねぇんだけど……これ、ドロップ品だよな?」

「はい、そしてシリーズ装備です」

「ふぅん? シリーズ装備っても、いろいろあっかんな……」


 まあ、原作ゲームでもネタ装備の向きが強かったもんね……

 それはそれとして、とりあえずプラウさんに平静シリーズを試してみてもらった。


「なるほどなぁ、オメェらしいっちゃオメェらしいといえるかもな……けど、貴族ですら魔力操作を嫌がるってぇのに、これがホントにはやるか?」

「はやらせます! それに、ノーグデンド領でもこれを有効活用するべく動き出してくれることになりましたし、私の周囲の貴族子女にも勧めているところですから、徐々に広まっていくことでしょう」

「そっかぁ……うん、なんだか聞いてるうちに、アタシまでワクワクしてきたな」


 というわけで、お土産の意味も込めて平静シリーズと、お菓子やお茶の葉もプラウさんに贈った。

 きっとプラウさんなら、平静シリーズを上手く使いこなしてくれるだろう。


「おっと、土産までもらった上、つい長話に付き合わせちまったな!」

「いえ、私もプラウさんとお話しできて嬉しいですから気にせず……それで、スケルトンダンジョンはあれからどうですか?」

「う~ん、それなんだけどよ……ダンジョンに出てくるスケルトンの傾向が変わったって感じだな」

「……といいますと?」

「前はノーマルなスケルトンが城下町にたくさん出てきただろ? それが徐々に減ってな……今では身なりがキレイっつーか、装備にほとんど傷のないスケルトンナイトばっかになったんだよ」

「えぇ……」


 たぶんそれって、イゾンティムルの愚王の周りにいたクソみたいな騎士の成れの果てたちなんじゃないかな……


「たぶん、オメェが思っているとおりだろーな」

「そ、そうですか……なんだかなぁ」

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