第478話 それ系に縁があるのかなぁ?

 夕食を終えたところで、運動場へ移動する。

 もちろん、食後の模擬戦をするためだ。

 その移動中に、ヴィーン一行と合流。


「お久しぶりです! アレスさんたち!!」

「いつぞやの借りを返しに来てやったぜ!」

「この夏、僕たちもそれなりに頑張ってきたからねぇ」

「……また、よろしく頼む」


 ふむ、いうだけのことはあるようだ。

 2カ月前よりも、全身から発せられる魔力の感じが強者のそれに近づいている。


「おおっ、いい感じに夏休みを過ごしてきたみたいだな! お前たちから感じられる魔力がそれをよく物語っているぞ!!」

「このはしゃぎようを見れば、アレスの関心を引きたい令嬢たちも自分が何をすべきかということが分かろうものだが……」

「そうですねぇ……まあ、それもなかなか酷な話でしょうけれど……」


 こうしてソイルやヴィーンたちと再会を果たしたところで、運動場へ到着。

 そこには、ファティマとパルフェナも既に着ていた。


「さて、ひとしきり再会の喜びを分かち合ったところで、さっそく模擬戦に移りたいところだが……その前に、みんなに渡しておきたい物がある」


 そういって取り出したるは……そう! 平静シリーズだ!!

 というわけで、ファティマには2回目になってしまうが、その効果をみんなに説明した。


「ほう、これにそんな効果が……なかなか興味深いな」

「はい、アレスさんのいうとおりなら……訓練の質をかなり向上させてくれそうです」


 ロイターとサンズは興味津々。


「正直、また阻害系かよ……って思わなくもねぇな」

「僕たち……それ系に縁があるのかなぁ?」

「トーリグ、ハソッド……ごめんよぉ」

「別に、いいけどよ」

「そうそう、ただいってみただけさ」

「……ソイルの阻害魔法に慣れているぶん、むしろ我々には扱いやすいかもしれないな」

「ヴィーン様……ありがとうございます」


 まあ、ヴィーンたちはこれまで、ソイルの阻害魔法によって平静シリーズと似たような効果を受けてたみたいな状態だろうからなぁ……

 でもまあ、この2カ月のあいだでだいぶ仲も戻ってきているみたいだね、ソイルの顔に悲壮感もないし。

 うむ、よきかなよきかな。


「なるほど、平静かぁ……うん! そういう心構えって大事だよね!!」


 なんていいながら、ウンウンと頷いているパルフェナ。

 ただ、ジャージとかの上着……その胸部にあしらわれた「平静」というワンポイントのロゴを目にして、キリッと平静でいられる男子はどれぐらいいるだろうか……

 ……いや、俺は大丈夫だけどね!

 なぜなら、パルフェナはハタチを超えていないから!!

 だからさ、ファティマさん……その冷ややかな目をやめてくれないかな?


「まあ、いいでしょう……それじゃあ、さっそくこれに着替えて今日の模擬戦を始めましょうか」


 というわけでファティマの号令の下、男女に別れて更衣室に向かい、平静シリーズに着替える。

 そして今日は初日ということもあって、みんなには3つから挑戦するように勧めておいた。

 あまり最初から無理をすると、体の魔力経がビックリしちゃうだろうからね。


「ふむ……確かに少し魔力操作をやりづらくは感じるな」

「ええ、そのようです」

「ハハッ、こんなもん! 俺たちには大したことねぇぜ!!」

「そうだねぇ……魔力操作がちょっとやりづらいだけで、魔法自体は問題なく発動できそうだからね!」

「この高揚感……これがアレスさんのいっていた効果の一つなのか……これは凄い」

「だが、これでまだ3つ……先は長いな」


 男子更衣室内にて、それぞれが感想を述べていく。

 もともとの性格もあるのだろうが、トーリグとハソッド辺りは平静シリーズによって気分の高揚が強めに出ているかもしれない。

 その点、ロイターやサンズはもちろん、ヴィーンは実に落ち着いたもんだね。

 そしてソイルは……これまで長いことネガティブに属していたこともあってか、影響をモロに感じていることだろう。

 なんてことを思いつつ、更衣室を出た。

 少しして、ファティマとパルフェナも着替えを終えて出てきた。


「――平静」


 誰ともなしに、そんな呟きが漏れた……何が、どこが、とはいわない。

 ま、まあ……少しずつ周囲にオーディエンスも集まり始めていたしさ……

 だからね、誰の言葉だったかは不明なんだよ……

 それはそれとして、気を取り直して本日の模擬戦をスタートさせる。

 だが、今日は平静シリーズを使い始めたこともあって、あまり本気度を高めた模擬戦にはしなかった。

 そのため、どちらかというと動きを確認する意味合いのほうが強いものとなった。

 まあ、しばらくすれば平静シリーズの使用感にも慣れていくだろうし、そうなったらガッチガチに気合を入れて打ち(撃ち)合いをすればよかろう。

 こうして、このメンバーでの久しぶりの模擬戦を終え、談話室に移動して反省会。

 そこでは、平静シリーズの使用感についてのコメントが多かったといえるだろう。

 また、向上心の高さもあってか、明日には4つに挑戦したいという言葉もチラホラ出た。

 ま、これから平静シリーズをどう活用していくかはみんな次第……是非とも上手く役立ててくれたまえ!

 ちなみに、オーディエンスたちからはデザインについてアレコレ聞こえていたが、実際に着用したみんなはあんまり気にしていなかったようだ。

 ……俺とつるんでるせいで、みんなそういうのに慣れてきちゃったかな?

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