第475話 お前なりの答えが出たようだな?

 原作ゲームのエルフヒロインにわざわざ声をかけられるだなんてあまり予想していなかった出来事があったものの、気を取り直してロイターとサンズのところへ向かう。


「さっそくエルフ族の令嬢とお近づきになるとは……お前もなかなかやるではないか」

「ええ、まったくです。アレスさんも隅に置けませんねぇ?」


 なんて2人してニヤニヤしながら俺を迎えるのだった。


「ほう、挨拶程度の会話でえらくはしゃぐじゃないか?」

「いやいや、その挨拶程度の会話をエルフ族と交わせるだけ立派なものだ」

「彼らはプライドが高いことで有名ですからね……初対面で、それも自分から声をかけるなど滅多にないはず。まあ、それだけアレスさんの実力を高く評価しているということなのでしょう」

「ふむ、そうであるなら光栄だ」


 とはいえ、エルフの関心は俺の実力どうこうより、聖樹らしき気配に向けられたものだろうけどな。

 そんなこんなで3人で談話室へ移動する……今後の小娘対策について話し合うためにね!

 その際にチラッと見たところ、ファティマとパルフェナは女子の集団と連れ立ってどこかへ向かった。

 いわゆる女子会ってやつかな?

 また、王女殿下は相変わらずズラリと勢ぞろいした取り巻きたちとワイワイしている。

 まあね、今回のクラス替えでAクラスに新しく昇格してきた奴もいるみたいだし、お褒めの言葉をかけたりしているのだろうさ。

 あとはそうだな、シュウという名の武術オタクのメガネは……女子に囲まれてのほほんとした笑顔を浮かべている。

 そんな姿はこれまでにもちょくちょく見かけていたし、おそらくいつものことなのだろう。

 ただし、そちらから聞こえてくる単語の数々はあまり華やかなものとはいえない……

 なんというか、これぞ武闘派って感じ。

 でもそうか、そんなふうに武術方面に興味がある女子だっているのだし、魔力操作に興味がある女子だっていてもおかしくはないはず!

 というより、思い返してみればエリナ先生と魔法の話でよく盛り上がっているもんな!!

 ファティマやパルフェナとも、そういった話題で会話することも多いし。

 なるほど、それでいいんだ!

 こっちの趣味全開でいけばいいんだ!!

 それで付いてこないのであれば……うん、それまでってことでいいな!!

 ロイターたちとの対策会議を目前にして、既に解決してしまったかもしれない。

 ま、それならそれで昼メシの時間まで適当におしゃべりをして過ごせばいいか。

 なんて思いつつ、談話室に到着。


「どうやら、この短いあいだにお前なりの答えが出たようだな?」

「そのようですね、始業式が始まる前とは顔色が違って見えます」

「ああ……そこまで変に気を遣わず、好きなように振る舞えばいいことに気付いたのだ」

「うむ、家同士の関係にヒビを入れないよう最低限は気にする必要もあるだろうが……基本的にはそれで構わんだろう」

「そうですねぇ、僕の場合はもう少し気を遣う必要があるでしょうが……公爵家のロイター様や侯爵家のアレスさんなら、相手のほうが合わせるべきでしょうし、極端におかしなことさえしなければ問題ないと思います」

「そうか、やはりな!」

「まあ、だいたいにおいて……前も少し話したかもしれんが、ほとんどの令嬢は私やお前のような者と婚姻を結ぶことまでは期待していないものだ……いや、期待できないというべきかな」

「期待できない?」

「ええ、家格差からして伯爵家以上、個人的に能力が優れた方でも子爵家がギリギリ……男爵家以下だとそれはもう、家格どうこうよりも実際に功績を積んでどうにか認めてもらうといったことになるかと思います。そのためアレスさんを食事に誘ってくるであろう令嬢の多くは、顔をつなぐ程度で満足されるでしょうし、そこまで神経質になることもないでしょう……まあ、どちらかというと、それが続くことで精神的に疲れてくるといえますかね……」

「そ、そうか……」

「そしてお前が疲弊したところを見計らって……家格差的に問題ない令嬢がスッとお前の心を奪いに来るわけだ」

「ヒェッ……! おいおい、脅かすなよ」

「今までにも派閥における寄子の令嬢を次々に向かわせて、相手が弱ったところで寄親の令嬢が仕留めにかかる……なんて連携もあったみたいですよ?」

「うげぇ、マジかよ……」

「まあ、これもほんの一例だろうな」

「ええ、僕たちが気付いていないだけで、あっと驚く作戦が展開されているかもしれません」


 う~む、それは恐ろしい……

 これは心を強く持たねばならんようだな!


「とまあ、少々脅かし過ぎたかもしれんが、相手のペースに乗らないよう注意することだ」

「はい、そのためといいますか、アレスさんが最初におっしゃった『好きなように振る舞う』という姿勢でよろしいかと」

「相分かった! これで自信を持って小娘どもと接することができそうだ!!」

「まあ、夕食は私たちと約束があるといって断ればいいだろうから、あとは朝と昼をどうするかといったところだな」

「正直なことをいえば、3食全て断ることができれば楽なんですけどねぇ……」

「貴族男子のマナーとしてそれはあまりよろしくない……だったな」

「ああ、そういうことだ」

「まったく、先輩たちも余計な伝統を残してくれたものです」


 ホント、マジそう思う!

 つーか、たぶん原作ゲームの制作陣のせいだな!!

 恨むぜ! コンチクショウ!!

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