第14章 秘めたる想い
第470話 またお世話になります
「キズナ君、約2カ月ぶりにこの部屋に戻ってきたわけだけど、どうかな? ちょっと懐かしい感じがしないかい?」
というわけで、エリナ先生の研究室から自室に戻ってきた。
そして、キズナ君に話しかけながら所定の位置へ。
それからなんとなく時計に目をやると、午後の10時をだいぶ過ぎている。
「ちょ~っとエリナ先生の研究室でゆっくりし過ぎてしまったな……いや、エリナ先生は『私も楽しかったし、気にしなくて大丈夫』っていってくれたけどさ、それでも迷惑をかけたことには変わりないもんね」
……でもやっぱ、エリナ先生は最高だったなぁ。
この約2カ月間というエリナ先生に逢えなかった時間がさ、その想いをより強めているんだろうなぁって気がしちゃう。
よっしゃ、この後期からさらに! エリナ先生にいいところを見せられるよう頑張るぞ!!
とはいえ時間も時間だし、今日のところは寝る直前まで精密魔力操作に取り組むとしよう。
そうして、じっくりと魔力と触れ合う時間を過ごして眠りについた。
「……ふむ、このベッドの寝心地も久しぶりだったね。おっと、それはそれとしておはようキズナ君、今日もいい朝だね! そして、今日から学園の後期が始まるんだ、気合を入れていかなくちゃだね!!」
まあ、自分ではそんなに気を張っていないつもりだったけど、無意識のうちにソリブク村で緊張していたのかもしれない。
なんというか、自分の部屋という解放感で思いっきりリラックスしていたのか、夢を見ることもなくぐっすり寝た。
「ああ、そういや昨日は平静シリーズの6つ目に初挑戦したんだったもんな……それによる精神的な疲れっていうのも大きかったかもしれんね」
そんなことを呟きつつ着替えるというか、寝るときから着ていた平静シリーズのインナーとジャージのほかにヘアーバンド、サングラス、靴下そしてランニングシューズを身に付けていく。
よし、これで6つだ! 昨日で多少は慣れたとはいえ、まだまだ「ズン……!!」ってくることに変わりはない。
それに夏が過ぎて秋に入ったのだ、そのうち寒い冬もくる……そのときはウインドブレーカーや各種ウォーマーも必要になってくるだろう。
それまでに早く6つに慣れ、さらに増やす準備をしておかねば!
……まあ、平静シリーズではない防寒具を着るとか、組み合わせを変えるっていう選択肢もあるんだけどさ。
だが、そんな志の低いことではいかん!
ゆえに、増やす方向で考えるのだ!!
そんなふうに決意を新たにしながら朝練に向かう。
「なんですか、あの格好は……」
「……変っていうか、なんで平静?」
「おい、あんまジロジロ見んなって、俺らは俺らで行くぞ」
「お、おう、そうだな……」
「なんだかなぁ……」
移動中にすれ違った学生たちのリアクションが聞こえてくる。
そうか、君らは平静シリーズの凄さをまだ知らんようだな。
まあ、いずれ知る日が来るだろう、期待しているといい。
なんて思いつつ、いつものスタート地点に到着。
そこにはお馴染みの、あのきゅるんとした姿をした少女がいた……そう、ファティマだ。
「おはよう、そして久しぶりね」
「おう、しばらくぶりだが元気そうで何よりだ」
「ええ、まあね……それより、また奇抜なことを始めたみたいね?」
「ああ、これか? どうだ、イケてるだろう?」
「……そうね、あなたが気に入っているのなら、私がとやかくいうことはないわ」
あっ、コイツ……今ダセェって思ったな?
でも大丈夫、俺もそう思ってるから!
「それはともかく、そろそろ走り始めましょうか」
「おっ、そうだな」
というわけで、さっそくランニング開始。
うむ、この感じも懐かしいね。
そしてこの夏休み中の活動について、お互い披露しあった。
それでファティマの場合は、家の手伝い的にモンスター狩りをする機会が多かったみたいだ。
あとは、周辺の貴族家とのお茶会とかね。
まあ、ファティマの実家は実質辺境伯とか呼ばれているぐらいだからね、その娘であるファティマもいろいろ忙しかっただろう。
「……なるほど、その服にはそんな効果があるのね?」
それから、俺の話を聞いてファティマは平静シリーズに興味を示したみたいだ! さすがだね!!
「ああ、スライムダンジョンで大量に入手してきたからな、お前にも1セットやるよ」
「あら、それはありがたいわね……では、お礼として秋季交流夜会のエスコートをお願いするわ」
「はぁっ!? またそれぇ……!?」
「ふふっ、そうよ……とはいえ、パルフェナやロイターたちとも一緒に参加することになるでしょうけれど」
秋季交流夜会……合コンイベントパート2って感じだね。
これは前期にあった春季交流夜会と基本的には同じような内容である。
違いがあるとすれば、全学年一緒ってことぐらいだと思う。
ああ、それと前期では特別クラスとして別けられていたエルフ、ドワーフ、獣人族等の異種族も加わってくるってことかな?
後期からは異種族たちも、特別クラスから俺たち王国民と同じA~Gのクラスに移ってくるからね。
それはつまり、原作ゲームにおいてこの時期から順次ヒロインが新たに登場してくるということでもある。
いや、ぶっちゃけ俺にはあんまり興味ないことだけどね……どの異種族ヒロインにも特にお姉さん感があるわけでもなかったしさ……
それはそれとして、ファティマとの会話に戻るとしよう。
「……まあ、みんな一緒ならそれでいいや」
「おそらく、先に私から誘ってもらっておいて助かったと思うことになるわ」
「……なんで?」
「後期からはあなたもモテモテになるからよ」
「えぇっ!! なんでぇ!?」
「まあ、モテモテといっても令嬢たちからというより、その実家からといったほうが正確かしらね」
「……ああ、そう」
まあ、ソエラルタウトの実家で俺も何度かお茶会に参加したもんな。
その際、義母上や兄上と俺の関係が良好だということを貴族家の方々も知っただろう。
となれば、ソエラルタウト家との関係強化に俺が使えるとなってもおかしくあるまい……はぁ、めんどくさ。
というわけで、後期からの学園生活に暗澹たる気持ちが湧いてくる瞬間でもあった。
「……ファティマさん、後期からまたお世話になります」
「ええ、こちらこそ」
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