第463話 程よく絶望
まったく、ヤキモキさせやがって……やっと来たかって感じだよ。
そこでなんとなく思ったことなんだけど、ケータイのない時代なんかだと、待ち合わせ場所でデートをすっぽかされたんじゃないかって心配するときの気持ちはこんな感じだったのかなって思っちゃったね。
前世で、昔のドラマとか映画でそういうシーンをちょくちょく見かけたからさ。
まあ、マヌケ族なんかとデートをするわけないけど、こっちとしては戦闘する気マンマンだったからね、楽しみレベルとしては似たようなもんかな。
……あっ! マヌケ族とはいえ、お姉さんだったら迷っちゃうなぁ。
つーか、今のところお姉さんと敵対する機会がなかったからよかったけど、この先出会う可能性もあるよな……
正直、お姉さんと命に関わる戦いはしたくないんだよ。
それならってことで、ギドのときみたく上手く自滅魔法を解除できたらいいんだけどね……そしたら、あとは必死に説得するだけだし。
しかもマヌケ族とはいえお姉さんなら、俺の魂からの訴えを聞き入れてくれるんじゃないかっていう期待もあるからさ。
ま、結局は自滅魔法の解除が一番の課題ってことに戻ってきちゃうんだろうなぁ。
そう考えるとやっぱ、全ての基礎ともいえる魔力操作の練度を上げるしかないってことだね。
よし! コイツを始末したら平静シリーズの6つ目に挑戦しよっと!!
ああ、既にいうまでもないかもしれないけど、現在俺の目の前にいるマヌケ族は男だ。
よって、心理的ブレーキがかからないから気楽だね。
「……あ? ず~っとダンマリ決め込んでっけど、ビビってんのか?」
「いや、こんなのは比じゃないぐらい、俺はお前に待たされたのだからな……それを理解した上で反省するがいい」
「……あぁ? 何いってんだ? ……いや、そんなことよりテメェだな? この辺一帯の村にオレがせっかく施した仕掛けを駄目にしやがったのはよ」
半分アタリで半分ハズレかな? ギドと2人でやったったからね。
だって、なかなか来ないから暇だったんだもん。
ここ数日、夜中にソリブク村以外の畑の奥底に埋まってた魔力の塊に穴を開けて回ってたんだ。
途中でマヌケ族と遭遇するのもアリかなってぐらいの気持ちでね。
「お前がなかなか来ないから悪いんじゃないか。おかげでスケジュールがギリギリでハラハラしたぞ?」
「テメェの予定なんか知ったこっちゃねぇ!」
「まあまあ、そうイキリ散らさんな。それよりも人間族の行商人スタイルじゃないけど、魔族の正体を晒しちゃってていいのかな?」
「……べっつにぃ~? テメェは今晩この世とオサラバすんだから、んなもんどっちでもいいだろ。それよか、オレが行商人に化けてたってよくわかったな?」
「たぶんそうかなって思った程度さ……でもお前だろ? 良心的な値段とやらで商品を村人たちに売ったり、ズートミンに『奇跡の子』がどうとかって吹き込んだりしたのは」
「おっ、よくわかったな! ハハッ、あれはケッサクだったぜぇ? その辺の商人たちより適当に安くしてやったら、目をウルウルさせながら感謝してくんの! ククッ……オメェらの畑をメチャクチャにしてんのは目の前のオレだぞって、もう何度もネタバラシしたくなっちまってな、ガマンすんのが大変だったぜ! ギャーッヒャッヒャッ!!」
「……そうか」
「だけどな、オレとしても村を全滅させるつもりはねぇんだよ。そうだな……体力のねぇジジババとかガキが冬を越せない程度かな? そんぐれぇで上手く調節してだな、村人どもが程よく絶望に沈むのを狙ってたってわけ!」
「……なるほど」
魔王復活に利用する負のエネルギーを溜めるのが目的ってところかな……クソ野郎だね。
「んで、なんだかって村人だけどよ、ソイツは無駄に神経質っぽかったからな、ちょいと試しに適当吹いて突っついてみたのさ」
「ふむ……やはりお前のせいだったのか」
「そうでぇ~す! ヒャハッ、その様子だとアイツ、やらかしちまったな!?」
「……思い悩んだ挙句、ソレバ村で誘拐騒ぎを起こしてしまったよ……未遂に終わったがな」
「あ~あ、バッカだねぇ……未遂ってところが特にな! でもま、トロそうなヤツだったかんね、そんぐれぇでいっぱいいっぱいってトコかな?」
「……といいつつ、お前は他人に頼ってソレバ村に直接手を出せないザコってわけだ。まあ、最近いろいろあって村の人たち自身も実力を付け始めているし、騎士や魔法士も頻繁に巡回しているもんな」
「い~や、それは違うね、俺はココを使ってオメェらみたいな劣等種族を間接的に操るのがイイんだ」
コメカミの辺りをツンツンと指差しながら、そんなことを述べているマヌケ族。
「ふぅん? それで人知れず夜中にこんな仕掛けをして回ってるわけか……フフッ、ザコなりに涙ぐましい努力だねぇ」
「おい……別に趣味じゃねぇってだけで、オレはザコなんかじゃねぇぞ?」
「おや? 声が低くなったみたいだが、凄んでいるつもりかね?」
「んだと、コラァ!」
「ほっほ、威嚇するねぇ? まあ、下っ端が一生懸命に怒鳴ったところで、何も恐怖心など湧かないがね」
「テメェ、オレをキレさせてぇのかぁ? ……いいぜぇ、その余裕ブッこいたツラぁグッチャグチャにしてやんぞ!」
「果たして君にできるかな? ま、いっちょ揉んでやるから来なさい」
なんでか分からんが、最後のほうは微妙に年長者みたいな口調になっちゃったね。
ちなみに、コイツが現れた直後に周囲を防壁魔法で囲んである……うん、念のため障壁ではなく防壁。
そしてもちろん、戦闘音で近所迷惑にならないよう防音にも気を配ってある。
また、ギドは防壁魔法の外でそのまま魔力の塊に穴を開ける作業に従事している。
「ハッ! こんな壁で囲んでテメェから逃げ道を塞ぐとは……バッカだねぇ」
「まあ、これからすぐにでも逃げたくなるのは君のほうだと思うがね」
「チッ……ナメたことばかりほざきやがって! テメェ、もう終わったぞ!!」
とまあ、ほどほどに温まってきたところで戦闘開始。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます