第462話 技術指導の最終日

 起床、そして今日は闇の日……つまり、ソリブク村での技術指導の最終日となる。

 明日は学園都市へ向けて出発だ。

 また、昨日までに数人ではあるが、ちょうどいい土の魔力状態を認識できるようになったので、最低限は達成したといえるだろう。

 あとは今日の訓練で、村人たちのレベルをプラスアルファでどこまで引き上げてやることができるかって感じだね。

 というわけで、準備を整えて朝練へ。

 この朝練であるが、日を追うごとに村人たちの参加者も増えてきたので、いい傾向といえるだろう。

 まあ、俺たちソエラルタウト組は明日村を出ることになるが、このまま村人たちに続けてもらえたらいいよね。

 なんて思いながら走っていると、村長が話しかけてきた。


「アレス殿たちは明日この村を出発なさるのでしたな……」

「ああ、そうなる」

「ご指導のおかげで、儂らだけでどうにか畑の状態を整えることができそうです……本当に、感謝の気持ちでいっぱいです」

「いや、村長はじめ村のみんなが頑張ったからこそだ……俺たちはそのきっかけでしかないさ」

「まあ、それなりに大変な思いはしましたがな……特に、ソレバ村からここまで走らされたときなんかはもう! とはいえ、それがあったからこそ、今があるともいえますがな、ワッハッハ!!」

「フフッ……だろう?」


 何を隠そう、村長も土の状態を把握できるようになっているのである。

 まあ、村長からしたら、それだけムチャなことをさせられたのだからって気持ちもあるかもしれない。


「アレスさん、私からも礼をいわせてください」

「おう、ズートミンもよく頑張ったな!」

「いえ、それだけみんなに迷惑をかけたのですから……」


 そう、ズートミンも村長と同じかちょっと上ぐらいの練度に達している。

 特に才能があったわけではないが、それだけ責任感が努力を後押ししたのだろうね。


「ま、明日から本格的に農作業を再開するのだろう? そこから活躍していけばよかろう」

「はい! 粉骨砕身の気持ちで臨みます!!」

「う~ん、表現が重い……もうちょっと、リラックスしたほうがいいな」

「あっ……それもそうですね」

「そうだぞズートミン、これからは1人で思い詰めるでないぞ?」

「はい、気を付けます……」


 とまあ、こんな感じで村長やズートミンと会話をしながら朝練を終えた。

 そして朝食を経て、午前の訓練開始。

 もちろん、今日もグループに別れてとなる。


「はっはぁ! 俺が本物の土との魔力交流を見せてやらぁ!!」

「な~にいってんだい! 土の声を聞けるのはアタイだよぉ!!」

「えへ、えへへへへ、今日も魔力ちゃんと遊ぶんだぁ~」

「あははっ、魔力が全身を駆け巡る刺激……これはもう、病みつきだね!」


 ……俺は少々やり過ぎたのかもしれない。

 俺が担当した村人たちが、若干クセの強い方向に進んでしまったみたいだからね。

 でもまあ、しばらくしたら落ち着くんじゃないかな……たぶん。

 それから練度としては、土の魔力状態を完璧に把握するところまではいっていないが、それなりに感じ取ることはできるようになってきている。

 まあ、この調子で訓練と経験を重ねていけば、そう遠くないうちに畑の魔法士として独り立ち可能なレベルに達することだろう。


「はぁ……はぁ……ごめんね、ごめんね……僕の魔力が足りないばっかりに……」

「もっとだ! もっと魔力を我にィ!!」

「……無念」


 うん、最初は村人たちに自力でやらせてみるんだけど……やっぱり保有魔力量が少ないからね。

 魔力がカラな状態の畑には切ない感じになってしまうんだよ……

 ちなみに、魔力の塊はまだそのままにしてある。

 明日から村人たちが種まきとかをするので、今晩ギドと秘密裏に穴あけ活動をするつもりだ。

 あと、マヌケ族が未だに姿を現さない……まったく、何をトロトロしているのだろうか。

 こっちはもう、タイムリミットが迫っているというのに……

 仕方ないが……今晩までに現れてくれなければ、王国に任せることになりそう。

 そんなことを頭の片隅で考えつつ、訓練を続ける。


「それじゃあ俺が魔力を送るから、それを使って大地との魔力交流をするんだ!」

「おおっ、待ってたよぉ!」

「よっしゃ、こっからが本番だ!!」

「来るぞ! 魔力のゾックゾクする刺激が!!」

「えへ、えへへへ……魔力ちゃん、いらっしゃ~い」


 ま、まあ、言葉のクセは強いが、それはそれ。

 こんな感じで今日も、昼食休憩以外はひたすら訓練を続けたのだった。

 そうして日が暮れたところで、訓練を終えて夕食。

 今日は最終日ということで、みんなで焼肉パーティーをして締めくくる。

 ま、今回も食材は俺たちが提供したオーク肉がメインだ。


「……村長、今回の指導によって一部であるが、若干魔力に酔った者がいる……まあ、しばらくしたら落ち着くと思うが、それまでは温かく見守ってやってくれ」

「なんのなんの、儂もアレス殿の魔法をこの身に受けて走ったあの日、全身に漲る活力に酔いましたからな。それほど気にすることでもないでしょう! それよりも、今日は楽しく食べましょうぞ!!」

「うむ……そうだな!」


 まあ、村長がこういってるんだったら、いいかな。

 こうして俺たちは焼肉を楽しんだのだった。

 そして夕食の後片付け後、俺とギドはみんなが寝静まるのを待って深夜に行動を開始する……そう、地中にある魔力の塊に穴を開けるためにね。

 その活動中、声をかけてくる者がいた。


「おいおい……劣等種族の分際で、何やってくれちゃってんの?」

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