第461話 姿勢はどうだっていいんだけどな
「うぐっ……ぎぎ……」
「なんなんだこの! 体ン中に熱湯を注がれたような熱い痛みは!?」
「い、痛ぇよぉ……」
俺が担当することになった村人みんなで手をつなぎながら大きな円になり、魔力交流で魔力を流した。
すると、その多くがこんな反応を示す。
「おいおい……魔力操作の練習をやっておくように昨日いっただろ? 聞いていなかったのか?」
「い、いや……俺たちも、その……いろいろと忙しくてさ……」
「そう! やろうやろうとは思ってたんだよ!!」
「ああ、俺たちも悪いなぁ、とは思ってんの!」
「ふぅん? そうか」
「おお、分かってくれたか! だからさ……その、な?」
「そうそう、そういうわけだから……もうちょっとこの、痛ぇのを緩めちゃくんねぇか?」
「へへっ……頼むよぉ」
まあ、魔力操作を嫌がる奴っていうのは、こんな感じでトコトン嫌がるんだよなぁ。
いや、価値観は人それぞれとか、そういうのは俺も多少は理解しているつもりだけどね。
それに普段なら、ある程度勧めたところで切り上げるしかないなって感じだけど、今回はそういうわけにもいかない。
というのがソリブク村の畑の面積的に、残念ながら意欲ある村人の保有魔力量だけでは管理し切れないのだ。
平民の保有魔力量というのは、どうしても少なめになりがちだからね……こうしてやる気のない奴にも無理してもらわなければならない。
そんなわけで、俺の彼らに対する回答はもちろん……
「悪いが、お前たちにも頑張ってもらわなければならん……だから、このままだ」
「そ、そんなぁ~!!」
「ひどい……」
「横暴だぁ!!」
「……ソリブク村が終わってもいいのか?」
「うっ……!!」
「そ、それをいわれると……」
「さらにいうと、ほかも似たような状況だろうから、ソリブク村を捨ててどっかに逃げようとしたって無駄だと思うぞ?」
「……なッ!?」
「い、いやだなぁ~俺たちがそんなこと考えるわけないだろぉ?」
「さて、どうだかな? とまあ、そんなおしゃべりをしているうちに……だいぶお前たちの魔力経もほぐれてきたんじゃないか?」
「そんなわけあるかぁ! 痛ぇもんは痛ぇ!!」
「で、でも……多少は……」
「まあ……ちょっとだけなら、慣れてきた気がしないでも……ないかな?」
というわけで魔力交流をいったん止めて、次の段階に移行。
「それじゃあみんな、畑の土に手を当ててくれ」
「……こうか?」
「まあ、正直なところ大地の魔力とつながるイメージができるのなら姿勢はどうだっていいんだけどな……なんだったら、土の上で寝っ転がってくれてもいいぞ?」
「ほ~ん? そんじゃあ、いっちょ寝っ転がってみますかね!!」
「あっ! このおバカ!!」
「あ~あ、これだからお調子者は……」
「へへっ、俺は今! 畑の土と一体になったぞォ!!」
「そんな簡単になれたら苦労ねぇだろ……」
「お~い、そのまんま寝んなよぉ」
「どうせ、体を流れる魔力の痛みで寝る余裕はないだろうよ……」
「だなぁ……」
こうして、村人たちが思い思いのポーズで土と触れ合ったところで準備完了。
「よぉ~し、やることはさっきまでの魔力交流とさほど変わらないが、イメージはお前たちの体から大地へ魔力を送り込む……そして今度は、大地から魔力を吸い上げる、その繰り返しだ! とはいえ、それ自体は俺が魔力交流で主導しておこなうから、今のところお前たちはその流れを感じ取ることに集中すればいい!! それじゃあ、やるぞ!!」
俺と大地のあいだに村人を挟んだ魔力交流って感じ。
なんというか、村人を延長コードみたいな役割とイメージすれば分かりやすいだろうか。
また、実際に触れ合ったほうがやりやすくはあるが、遠隔で魔力を送ることも可能なのでそうしている。
そうしてフォーク並びみたいな形状で、俺と大地のあいだで村人たちは魔力の行ったり来たりを体験するわけだ。
とまあ、そんな感じのことを昼食休憩以外ノンストップで夕方までおこなう。
「ふむ……今日のところはここまでとするが、明日まで各々自主練習してくることを期待している。それじゃあ、何か質問等があればこのあと受け付けるが、とりあえず全体としては解散としよう、みんなお疲れ!」
というわけで、本日の訓練は終了した。
そしてギドや3人娘と合流し、夕食。
その際、ほかのグループの成果を聞いていると、ギドとサナのグループにまあまあ筋のよさそうな村人がいたようだ。
あと、やはりというべきか、子供のほうが伸びやすそうな雰囲気みたい。
ちなみに、俺のグループに子供はいない。
まあ、スパルタ式になるだろうと思っていたからね……あえて最初から入れないようにしていたっていうのもある。
そんな感じで、夕食としばしのくつろぎを終えたところでギドと小屋へ移動。
「昨日の夜、そう遠くないうちに魔族が現れると予想したのは、あの魔力の塊のせいか?」
「はい、そろそろ吸収限界に達する頃なので、回収に来るのではないかと思います」
「まあ、だいぶ魔力でパンパンって感じだったもんな」
「そうですね」
「あの塊を潰したり穴を開けたりしたら、畑に魔力が戻るか?」
「あまり急激に圧力をかけると破裂する可能性があるので、潰すのはお勧めしません。そのため、丁寧に穴を開けるのがよろしいかと」
「へぇ……それなら爆弾を投げるみたいな使い方もできそうだな?」
「それも可能でしょうが……アレス様の場合は普通に魔法を使ったほうが早い気がします。また、ほぼ魔石と変わりませんので、同じようなことをしたいのであれば、魔石を投擲してみるのも手ですね」
「ふむ……それもそうだな」
こうしたやりとりを経て、今日のところは眠りにつく。
そして……さあ来い! マヌケ族よ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます