第452話 これから成長していく段階だからね
リッド君と一緒にブラブラと村歩き。
また、村の人々の様子として先ほど起こったモンスターの襲撃騒ぎは既に落ち着いている。
とはいえ、そこまで大規模なものでもなかったし、村の人々からすればあの程度はどうってことなかったのかもしれない。
そうして今回もソレバ村特産のハーブティーを買いに行き、そのときオマケでもらったお菓子などを広場でリッド君と一緒に食べる。
そして昨日も少し話したが、これまでの近況を語り合った。
「ダンジョンかぁ、オイラも行ってみたいな!」
「う~ん……ダンジョンはもう少し大きくなってからかなぁ?」
現在のリッド君なら、平静シリーズを3つ装備しても割と大丈夫なことから考えて、それなりに戦えると思う。
ただ、保有魔力量としては平民の域を出ていないので、連戦や強いモンスターが出てきたときはキツイといわざるを得ない。
まあ、まだまだこれから成長していく段階だからね、慌ててダンジョンに行くこともなかろう。
というかそもそも、ソレバ村付近にダンジョンはないため、どっちみち行くのはもっと先のことになる気がする。
「それに、俺もこの歳になって初めてダンジョンに挑戦したぐらいだからさ」
「そっかぁ……なら、オイラもアレス兄ちゃんぐらい大きくなるまでガマンするよ!」
「うん、それがいいね」
「そこでさ……オイラにもレミリネ師匠の剣術を教えてくれないかなっ!? 魔法も面白くて大好きだけど、アレス兄ちゃんの話を聞いてたらカッコいいなぁって思ってさ!!」
「もちろん! 喜んで教えるよ!!」
リッド君が興味を持ってくれそうなら、もともと教える気満々だった。
もっというと、魔力切れの心配があるからマストだとさえ思っていたところだ。
「それじゃあ、木刀を買いに行こうか、プレゼントするよ」
「いいの!? やったぁ!!」
まあ、リッド君のお父さんが使っていた剣とかもあるんじゃないかとは思うが……本物の剣を使わせるのも、まだちょっと早い気がするからね。
それに俺自身、魔纏のおかげもあってだいぶ気にならなくなってきているつもりだが、刃物で手を切るんじゃないかっていう心配は微妙にまだ残っているからさ……
それはともかくとして武器屋に向かう。
いや、武器屋といってもそこまで専門的な店というわけではなく、包丁とかの調理道具や鋤や鍬みたいな農具なんかも置いてある。
まあ、ここは村だからね、学園都市などのような街と同じわけにはいくまい。
そうして木刀を購入したわけだが、素材としては普通の木。
いや、この規模の武器屋にトレントの木刀があるとは思ってなかったけどね。
それから、店主から聞いた話では、最近は森の木も若干元気がないらしい。
そこで今現在店頭に並んでいる木刀などの木製品については、それ以前に伐採した物を使っているので関係ないが、これから作る木製品にはいくらか影響が出るかもしれないとぼやいていた。
とはいえ、畑の作物ほど深刻なわけでもなさそうなので、そこまで心配するほどではないかもしれない。
それはそれとして、さっそく空き地で剣術指導開始である。
ただ、1日やそこらで全てを教えられるわけもないので、これからソレバ村に来るたびに少しずつ教えていくことになるだろう。
そう思いつつ、まずはひととおりレミリネ流剣術の型を披露する。
リッド君の吸収力なら、一度見せておけば今すぐに物にするのは無理としても、習得スピードアップにはつながる気がするからね。
そして俺の型を見つめるリッド君の真剣なまなざしには、そんな期待が湧いてくる。
というかリッド君、眼に魔力を込めていらっしゃる……フフッ、やるねぇ。
そんな感じで、まずは型の披露を終える。
「凄い! カッコよかった!!」
「ありがとう、そういってもらえて嬉しいよ……でもね、レミリネ師匠の動きはまだまだこんなものじゃないんだ。だから、俺ももっともっと練習を積んで剣の腕を磨かなきゃいけないし、リッド君もこの程度がゴールだとは思わないようにね?」
「そうなんだぁ……アレス兄ちゃんですらまだまだなら、オイラなんかすっごく頑張んなきゃだ!!」
「リッド君の向上心は敬意に値するよ。それをこれから先も大事にしてね……まあ、それは俺自身も忘れちゃいけないことなんだけどね」
「うん、分かった! アレス兄ちゃんをしっかり見習って頑張る!!」
いい子だ……そう思いつつリッド君の頭をなでる。
「それじゃあ、そろそろリッド君も木刀を振ってみようか!」
「よぉ~し! 頑張るぞ!!」
こうして結局、遊びっていうか訓練になってしまった。
でも、リッド君は楽しそうにしてくれているし、これでよかったんじゃないかな。
それに、今はまだ遊びと訓練にそこまで感覚的な違いがない年頃なのかもしれないし。
そして日が暮れてきたところで、ギドが散策を終えて合流した。
「念のため確認してきましたが、『彼ら』はソレバ村付近におりませんでした」
リッド君が素振りに専念しているとき、ギドが小声でそう告げてきた。
彼らっていうのは、もちろんマヌケ族のことだ。
さすがギドというべきか、俺が奴らの暗躍を疑っていたのを察して調べていたようだ。
「そうか……なら、ソリブク村かな?」
「既にいない可能性もありますし……行ってみるまでなんともいえませんね」
「ふむ……とりあえずご苦労だった」
「いえいえ」
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