第442話 一番弟子

 お昼を食べ終え、冒険者ギルドでゴブリンの素材を大量納入したところで、ソレバ村へ向けて再出発する。

 このときも平静シリーズを装備して走って向かう。

 また、ここ数日ほぼ一日中着ているだけあって、3人娘も4つ装備にある程度慣れてきたようだ。

 フフッ、いい感じだね。


「そういえば、ソレバ村にはアレス様の一番弟子の方がいらっしゃるとか?」

「……『一番』という響きがうらやましい限り」

「ああ、順番的にリッド君が最初になるだろうなぁ」


 一応ソレバ村に行く途中でゼスにも魔力操作を勧めはしたけどね。

 でも、本格的に教えたといえば、リッド君が一番だろう。

 

「それで、さっき街の人も話してたけど、なかなか活躍してるみたいですよねっ?」

「う~ん、あの話に出てきた農作物の生育に一番関わってそうなのは、カッツ君という地属性の天才少年だろうけどな。まあ、当然リッド君を含めたほかの子たちも一緒にいろいろやってそうだけど」

「アレス様をして天才といわしめるとは……よほどの少年なのですわね!?」

「もちろんだ……地属性と親和性が高く、そして誰からも教わっていないのに魔力の色を感じ取れたぐらいだからな」

「すっご~い! そんな天才少年、今から会うのが楽しみっ!!」

「ソレバ村……侮り難し」


 こんなふうに会話を交えながら走っていたところ、ギドが言葉を発する。


「どうやらウワサのソレバ村が見えてきたようですね」

「そのようだ……って、え?」

「えっと……あれが村?」

「村にしては……なかなか堅固そうですわね?」

「……まるで、ちょっとした砦?」

「まあ、先ほどの方たちも村が防備を固めているとおっしゃっていましたからねぇ」


 確かにそういってたけども!

 村の外観がゴツゴツとした石を積み上げられた壁で囲まれ、なんというか……武骨。

 そんな感じで、俺の記憶にあるソレバ村からだいぶ様変わりしていた。

 ま、まあ、短い期間に2度も村の存亡に関わるような事態に遭遇したんだから、これぐらい備えるのは普通のことかな……

 こうして少々面食らいながら、ソレバ村に到着。


「おっ、アレスさん! 久しぶりだね!!」

「ああ、久しぶりだな」


 2人いた門番のうち、顔見知りのほうと挨拶を交わす。

 う~む、前回までは門番も基本1人だった気がするんだけどね。


「えっと『アレス』っていうことは……もしかして?」

「そう! この方こそが村を2度も救ってくれた英雄、アレスさんだ!!」

「おおっ! この人が!!」


 英雄とまでいわれてしまうと少し照れてしまうな。

 それに3人娘も我が事のように誇らしげな顔をしているし……

 また、顔見知りではないもう1人のほうは、最近村に越してきた人なのかもしれない。

 そんなことを思いつつ、身分証を提示して村に入る手続きをする。


「まあ、アレスさんとその御一行なら顔パスでもいいと思うんだけどね」

「ハハ、そういってもらえると嬉しいが、一応決まりを破らせるのも悪いからな」

「気遣いありがとさん……これでよし、ようこそソレバ村へ!」


 こうして手続きを終え、村に入れてもらう。

 そして村に入ったところで、前と同じようにリッド君の出迎えを受ける。


「アレス兄ちゃん! 久しぶりっ!!」

「やあ、リッド君! 元気そうだね?」

「うん! それでね、アレス兄ちゃんの魔力を感じて、オイラ待ってたんだ!!」

「そうかそうか! しっかり魔力操作の練習も続けているようだね、感心だよ!!」


 そういってリッド君の頭をなでる。

 このときリッド君は照れ笑いを浮かべていたのだが、少しして真面目な表情に変わる。


「でもアレス兄ちゃん……どこか調子でも悪いの?」

「え、どうしてだい?」

「なんていうのかな……前に会ったときより魔力の感じが重そうっていうか、ちょっとしんどそうだなって」

「へぇ……よく気づいたね! 凄いじゃないか!!」


 さらにリッド君の頭をワシャワシャしちゃう!!


「えっと、そうかな?」

「うん、とっても凄いよ! ああ、それで心配する必要はまったくなくてね、今着てるこの服の影響なんだ」

「服の影響?」

「そう、この『平静』ってロゴの入った衣類を3つ以上身に付けるとね、魔力操作が難しくなるんだよ」

「えぇっ!! そうなの!?」

「うん、それでこれを着て魔力操作の練習をするとね、効果バツグンなんだよ」

「わぁ~っ! すごいやぁ!!」

「フフッ、それでこの平静シリーズなんだけど、ほかにもいっぱい持っててね、リッド君にもプレゼントしたいなって思うんだけど、ちょ~っとクセが強いからさ、先にナミルさんと相談してからにしようと思うんだ」

「そっかぁ……うん、分かったぁ!」


 聞き分けのいいリッド君、とってもナイスガイだね!

 こうして再会の挨拶が一段落したところで、ギドと3人娘をリッド君に紹介した。


「はじめまして! 僕、リッドっていいます! ステキなお姉さんたちやお兄さんにお会いできて光栄です!!」

「や~ん! この子ったら、とってもカワイイ~!!」

「あらあら、これはご丁寧にありがとうね」

「もう! すっごくカワイイからお姉さん、ギュ~ッってしたげるねっ!!」

「あ、あわわ……」


 ノムルに抱きしめられて真っ赤になりながらアワアワしているリッド君……凄くいいね!!


「このような受け答え……ここしばらく頻繁に見てきたような……?」


 とかいいながら、サナがこっちを見てくる。


「なるほどなるほど、これはまさしく一番弟子のようですねぇ」


 そしてギドも、ニッコリと微笑みを浮かべながらこっちを見てくる。

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