第441話 減るどころか増えてる村があるらしいぜ?

「アレス様、この街から東に向かって街道沿いにまっすぐ進めば、ご要望のあったソレバ村に着きます」

「そうか、いよいよか」


 ソレバ村、当初の予定では夏休みに入って最初に行こうかなって思ってたんだよなぁ。

 それがソエラルタウトの実家に帰ることになって……いや、途中で寄ることもできたんだろうけどさ、遠慮とかいろいろあってね。


「ここ数日の進むペースから考えますと、おそらくソレバ村には遅くとも今日中に着くことができるでしょう。そして、ちょうどお昼頃に着くであろう街に冒険者ギルドがあるので、そこで昼食を取るとともにゴブリンの素材を納入してはいかがでしょうか?」

「うむ、そうしようか」


 これで今日の予定は決まったね。

 それにしても、ソレバ村がもう今日中に着く距離になったか……

 ソエラルタウト領からの道中、ダンジョン攻略やモンスター狩りをしながらだったので、なかなか充実した時間だったと思う。

 それに、平静シリーズという強力な訓練アイテムもゲットできたし!

 これもまだ5種類装備したぐらいでヒィヒィいっているが、そのうち10種類ぐらいの全身フル装備で自由自在に魔力操作ができるようになったら、凄いことになるだろう!!

 ちなみに原作ゲームでは……というか大半のゲームでもそうだろうが、各部位一つずつなど装備できる数に制限がある。

 しかしながら、この世界においては特にそういった決まりはないみたいだ。

 そのため、胴体の装備にインナー、ジャージ、ウインドブレーカーと重ねても効果を発揮してくれるのでありがたい。

 ただ、インナーの上にインナーみたいな重ね方をしてもシリーズ装備の効果が発動しなかったので、さすがに同じ物を重ねるのはダメっぽい。

 それでも、素材自体の防御力はゼロにならないみたいなので完全に無駄というわけではなさそうだけど、やり過ぎると逆に動きづらくなるだろうね。

 とまあ、そんなことを考えながら朝食をいただいていると……


「はぁ~もうちょっとで、この楽しいアレス君との旅も終わりかぁ~」

「距離だけでいえば、今日中に学園都市に着くことも可能なぐらい」

「ですが、寄り道せず……そして平静シリーズを着用せずウインドボードだけで移動していれば、今よりもっと早く学園都市に到着してしまっていたでしょうから……むしろわたくしたちは長く一緒にいられたほうですわ」

「それはそうなんだろうけどさぁ~」

「寂しいものは寂しい」

「本音をいえば……そうですわね」


 確かに、ギドや3人娘は俺を学園都市に送り届けたらUターンしてソエラルタウト領に戻らなければならないもんな。


「俺も、この道中みんなと旅をできて楽しかったし、別れるのも寂しいものがある。だが、後期が終わればまたソエラルタウト領に帰ることになるだろうから、そのときまた会えるさ! それに、まだ学園都市に到着したわけじゃないんだからな!!」


 というわけで湿っぽくなりそうなところを明るい雰囲気に変えて、そろそろ出発である。

 そして昼頃に到着するであろう街まで、ゴブリンを狩りながら走って移動する。

 この際、もちろん平静シリーズを着用してだ。

 フッ、今回もまたゴブリン素材を大量納入してやるぜ!

 そんなこんなで、予定どおり街に到着。

 さて、腹内アレス君がお待ちかねだからね、まずはお昼をいただくとしよう。

 そうして、適当な店に入る。

 ここでもやはり、話題の中心は食品の値上がりについてのようだが……おや? 違う部分もあるみたいだ。


「知ってっか? 今年の猛暑であっちこっちの農作物が駄目になる中、収穫量が減るどころか増えてる村があるらしいぜ?」

「えぇっ! それは本当かい!?」

「おうよ! さっき東のほうから来た奴に直接聞いた話だから間違いねぇ!!」

「そりゃ凄い! それでそれで?」

「こっから東に馬車で数日行ったところにソレバ村ってのがあるだろ?」

「え~っと……ああ、しばらく前にゴブリン騒ぎがあって、しかもそれに便乗して盗賊団に狙われたってところだね?」

「そうそう! その村の畑がもうスンゴイらしくてな、農作物がどれも元気いっぱいに育ってるんだとよ!!」

「へぇ、そりゃいいや! ということはだよ? この食料品の値上がりにちょっとでも歯止めがかかる可能性が!?」

「それを期待したいが……村一つの供給量にも限りがあるからなぁ~」

「まあ、そうだよねぇ……」

「でも、最近にしちゃあ、明るい話題だろ?」

「ああ、違いない!」


 ほうほう、ソレバ村とな?

 そして俺はピンときた……泥遊びが大好きなカッツ君あたりが大きく関わっているのだろうなって。

 この前会ったときからだいぶ経っているし、より磨きのかかった地属性の魔法で土地改良とかしてそうだもんね。


「……でもさ、そんなに景気がいいと、また盗賊かなんかに狙われるんじゃないかい?」

「いや、それがな……知ってのとおり、この前の盗賊団の懸賞金で村の防備を固めることができたのはもちろんとして……」

「そういえば、盗賊団の頭に結構な懸賞金がかかってたんだっけ……で、それだけじゃないと?」

「ああ、あの村にはどういうわけか平民なのに魔法を使える奴がそこそこいるみたいで……まあ、その多くは子供らしいけどな」

「なんと!?」

「だが、たとえ子供でも大人たちの横で魔法を1発2発お見舞いしてやれば盗賊ごときを撃退するにはじゅうぶんだろうさ」

「た、確かに……」


 おおっ! どうやらリッド君たちも魔力操作に励んでなかなかレベルアップを果たしているようだね、感心感心。

 これは、ますますソレバ村に行くのが楽しみになってきたな!!

 こうしてソレバ村のウワサ話を聞きながら、お昼を済ませたのだった。

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