第436話 母を重ねておりました
「さぁて、今日も頑張っちゃうよっ!」
「昨日の平静シリーズを着た合同訓練によって、わたくしたちの魔力操作能力がさらに磨かれたはずですわ!」
「……今ならやれる気がする」
「皆さん、その意気ですよ」
3人娘は今日も休むことなく障壁魔法チャレンジである。
なんて思っていたら、さっそく俺が展開した障壁魔法が干渉を受ける。
ふむ、障壁魔法に込めた魔力の吸収され具合から、今日は一段と強度を下げられてしまったようだ……ヨリめ、腕を上げたな!
そして、ついにそのときがきたようで……
「今っ! ピシッっていったよねっ!?」
「……いった」
「わたくしは直にアレス様の障壁魔法に干渉を試みているので、よりハッキリと感じ取ることができましたわ!」
「やりましたねぇ皆さん、おめでとうございます」
そこで俺もがばっと勢いよく起き上がる。
「俺の障壁魔法にヒビを入れることができたようだな! よくやったぞ!!」
「つ、ついに……やりましたわぁっ!!」
「えっへん!」
「……感無量」
「よかったですねぇ」
「そんなお前たちにいい知らせだ、明日からはさらに強度を上げてやるからな! しっかり励めよ!!」
「あ、あはは……デスヨネェ……」
「ふぅ……私たちの挑戦に終わりはない」
「そ、そうですとも! わたくしたちはまだまだこれからですわっ!!」
「フフフ、皆さんがどこまで頑張れるか、見届けさせていただきましょう」
といったところで目覚めの障壁魔法チャレンジを終え、着替えて朝練に向かう。
昨日、メイア夫人に「朝練がしたいです」っていったら快く訓練場を使う許可をくれたからね。
そこで訓練場に到着してみると、平静シリーズを身に纏った領兵たちの姿があった。
そしてさらに! メイア夫人もいた!!
「おはよう、アレス殿。私たちもご一緒させていただくわね」
「はいっ! 喜んで!!」
こうして、平静シリーズに身を包んだ一団が訓練場を走ることに。
なんというか、前世の部活っぽいなって思った。
……ごめん、俺ってば部活に入ってなかったわ。
「……これを着て走っていると、私たちは日々魔力に助けられて生活していたのだなって、改めて気付かされるわ」
「はい、メイア夫人のおっしゃるとおりですね」
とはいえ、前世だとこの状態が普通なのかもしれんけどね。
いや、前世でも「気」とかそういうのがあるっていってたし、意外と知らんうちにそういう不思議パワーに身体操作をアシストしてもらっていたかもしれないな。
まあ、こっちに来て太った状態からスタートだったこともあって、身体感覚についてはもう前世の状態がどんなだったかだいぶ朧気になっている気がするよ。
なんて思いつつ、約1時間みっちりと走り込んだ。
う~ん、いい汗かいたなぁ。
そしていったん解散し、部屋に戻りシャワーと着替えを済ませて食堂へ向かう。
「アレス殿が来てくれてとても楽しい時間を過ごせたけれど、それもあと少しなのねぇ……」
「私もお名残り惜しいですが……」
「私の子供たちも皆既に成人していて、領主修行のためほかの街を任せていたり、他家に嫁いでいたりでしばらく会っていないことも影響していたのかしらね……ついつい失礼にもアレス殿のことを子供たちと重ねて接していたかもしれないわ」
「いえいえ、私こそメイア夫人に母を重ねておりました」
「あらあら、うふふふ……そう思ってもらえていたのなら、嬉しいわぁ」
そうしてふんわりとした微笑みを浮かべるメイア夫人。
まあね、前世でもママキャラって一定の人気があったからね。
かくいう俺も「娘よりママさんのほうがかわいくね?」なんてよく思ったものさ。
もちろん作品にもよるけど、割とそう思うことが多かった気がする。
なんていうのかなぁ、独特のかわいさがあるんだよなぁ。
いや、俺とて2次元だからこそという部分もあるだろうことはじゅうぶん承知しているつもりだ。
加えてギャルゲーの場合、基本サブキャラゆえ攻略できないから余計求めてしまうっていうのもあっただろう。
そんなことを頭の片隅で多少考えつつ、メイア夫人と楽しいおしゃべりを交わしながら食事をいただく。
こうして食事を終える頃、実家の義母上と兄上へ宛てた手紙をメイア夫人へ渡す。
「お手数ですが、よろしくお願いします」
「ええ、任せてちょうだい」
食後はお茶を飲みながら、しばしのゆったりタイムを過ごす。
だが、そうしているうちにもノーグデンド領を出発するときが刻一刻と迫ってきていることを感じる。
「……また、いつでも遊びに来てちょうだいね」
「はい、必ず!」
そして至福のひとときは終わりを告げ、ノーグデンド家の屋敷をおいとまするときがきた。
このときメイア夫人をはじめ、屋敷の方々が見送りに出てきてくれた。
「それじゃあ、くれぐれも気を付けてね」
「はい、メイア夫人もお元気で。そして大変お世話になりました」
「ううん、全然よ……」
「……では、またお会いできる日まで」
「ええ、またね」
また、使用人たちもそれぞれ親しくなった人々と挨拶を交わしたところで出発する。
ノーグデンド領……いいところだった。
また来る日を楽しみにしつつ……さて、学園へ向けて移動を再開だ。
次の街ではどんな出会いが待っているのだろうか、そんな思いを馳せつつ大空をゆく。
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