第418話 堅い

「これでっ! どうだぁっ!!」

「ギュ……ウァーッ……」


 ノムルの渾身の一撃がジェネラルのゴツゴツとした硬い表皮を打ち破り、核にまで到達したようだ。


「なかなか愉しいひとときでしたが、いつまでもこうしているわけにもいきませんものね……そろそろ終わりにして差し上げますわっ!」

「ギュ……ッ」


 そしてヨリの魔力が一瞬で膨れ上がったかと思うと、閃光のような突きでジェネラルを刺し貫く。

 もちろん、核も貫かれているので絶命コースだ。


「はぁ……はぁ……疲れたぁ~っ!」

「わたくしも、今ので魔力を使い果たしてしまいましたわ……」

「ちょっと、ポーション休憩させてもらおっと」

「ええ、それがいいですわね……」

「あとはサナだけだよぉ~っ!」

「頑張ってくださいまし~」

「……いわれなくても、分かってる」


 ジェネラルを無事討伐し、ノムルとヨリはいったん休憩に入るようだ、ごくろうさん。

 そして、サナの場合はもともと一発の威力に課題があったことも影響してか、防御に優れるスライムジェネラル討伐に苦戦しているようだ。

 まあ、ヨリの場合は体内の魔力をありったけ込めた一突きでようやくだったし、もともと一発の威力に優れるノムルでさえ疲れ切ってヘトヘトになってるぐらいだからね。

 それだけジェネラルの防御力を褒めるべきだろう。


「まだ制御に不安があるが……やるしかない……」


 なんか、サナが不穏な言葉をつぶやいているぞ。


「大丈夫……アレス様と共に過ごしたこのしばらくのあいだで私の魔力操作能力も上がっているはず……」


 なんか、思いっきり最後の切り札って雰囲気なんだけど。


「サナってば、アレをやるつもりなのかな?」

「でも……アレはまだ未完成だといっていたはずですわよ?」


 ねぇ、本当に大丈夫なの? 怖くなってきたんだけど……

 なんて思っているあいだにも周囲の魔素がサナの体内に取り込まれ、魔力として変換されていく。

 そしてサナと戦闘中であったジェネラルは、サナの様子を察して防御態勢に入って身を固め、さらにその周囲を護衛するとでもいうようにナイトが寄り集まって、防御陣形を整えている。


「……ふぅ、魔力はこれでじゅうぶん……私にこの魔法を使わせるのだから、覚悟するといい……ギガッ! エクスプロージョンッッッ!!」


 その掛け声とともに、ジェネラルを中心として大爆発が起こる。

 なんというか、サナよ……やり過ぎでは?

 それに爆発の眩しさと直後の煙で、周囲が見えない……16階でもらったサングラスをかけときゃよかったかな?

 そんな冗談はさておき、煙が晴れたあとにはドロップ品が残るのみで、スライムたちの姿はなかった。

 まあ、ジェネラルだけでなく、その周りを守っていたスライムナイトたちも爆発の巻き添えで戦死といったところだろうか。


「……ふぅ……ふぅ……発動こそできたけど……まだ、思ってたほどじゃない……」

「そうですねぇ……見た目こそ派手でしたが、実際の威力は控えめといったところでしょうか……ギガ・エクスプロージョンを使うのなら、魔力をもっと内へ内へと凝縮させるように発動させるのがコツといったところですね」

「……クッ……返す言葉もない」

「ですが、既にいくらかダメージを負ったジェネラルとはいえ倒すことができたのですから、合格といってもいいでしょう」

「またしてもドヤ顔をされてしまった……」

「それはそれとして、やったね、サナっ!」

「さすが、サナさんでしたわ!」

「……それほどでもない」


 といいつつ、満更でもない顔のサナだった。


「あれほどの魔法を隠し持っていたとは……驚いたぞ?」

「あれはまだ、発動が安定しない……だから、今回の使用も正直いうと賭けだった」

「そうか……だが、お前は立派に魔法を発動させてジェネラルを討伐したのだ、よくやった」

「お褒めに預かり、光栄」


 そうして澄ました顔を維持しつつも、ほのかに顔がほころんでしまっているサナ。


「それから、ノムルとヨリも見事な戦いぶりだった、俺はそんなお前たちを誇りに思う」

「恐悦至極に存じますわっ!」

「アレス君、ありがとぉ~っ!」


 やっぱりさ、人っていうのは褒められて嫌な気持ちにはならないものだもんね、だから誉め言葉は積極的に贈っていきたいなって思うんだ。


「………………アレス様に『よくやった』といわれてしまった、うふふふふ」


 うん……モチベーションを上げてくれれば……何よりだね。

 こんな感じで、18階の残りのスライムたちを狩っていく。

 だが、ここではさすがに3人娘も討伐ペースが下がってしまうので、ギドも本格的に戦闘参加している。

 まあ、スライムの数的にもそこまでドロップ品の回収に専念する必要もないからね。

 そうして狩り尽くしたところで、ゆっくりドロップ品の確認。

 それでいくらか討伐していくうちに気付いたのだが、ジェネラルを倒せばジャージの上下、ナイトだと上下のどちらかをドロップするって感じだった。

 一応、その辺ジェネラルにもプライドがあるのかな?

 そしてもちろん、「平静」のワンポイントは健在。

 さらに、前世の記憶にあるジャージのデザインで、サイドラインにメーカーのロゴがひたすら連続で並んでいるのがあったと思うんだけど、そんな感じで平静平静平静~って続いているのもあった……マジかよ。

 いや、ここまでくると、逆に尖がってるっていえちゃうのかな?

 それから、18階で初登場のお菓子としては煎餅!


「これまでに出てきたお菓子とは趣が違いますわね?」

「うん、歯応えがあるねぇ」

「……堅い」


 ここにきて、ハードなお菓子がきちゃった。

 まあ、焔菓子ヤッホーではある。

 でも、スライム要素とは……って感じがしなくもないが、ダンジョンさんとしては原料的にオッケーとでも判断したのだろうか?


「もしかすると、スライムジェネラルのゴツゴツとしたボディをイメージしたのかもしれませんね?」


 ああ、そんな感じなのかなぁ。

 なんて思いながら、18階の攻略完了……残すところあと2階!

 もうちょっとだ、残りも全力で突っ走っていくぜっ!!

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