第417話 銀色の輝き

 階段を上り終え、スライムダンジョン18階に到着。

 大繁殖中とはいえ、ここ18階はそれまでの階に比べて、スライムの数が少ない。

 まあ、ここにいるスライムがどんなスライムかと考えれば……ダンジョンさんのリソース的にもそれは当然のことといえるかもしれない。


「ふむ……あのスライムにしてはゴツゴツとしたボディに、銀色のボディカラーとくれば……スライムジェネラルか?」

「はい、どうやらそのようです」


 一緒に並んでいるスライムナイトの鈍色と比較すれば、その銀色の輝きは雲泥の差があるといえるだろう。

 まあ、原作ゲームの画面上では、どちらも灰色っぽい感じで色的にはあんまり差はなかったように思ったけどね。


「あのゴツゴツした感じの見た目って、スライム的には鎧のつもりなのかな?」

「う~ん……そうなのかもしれませんわね」

「……かわいげがない」


 そしてこのスライムジェネラルであるが、ナイトやマジシャンの進化先であると人間族の研究者からはみなされている。

 というわけで、それらの上位互換といった感じだね。

 まあ、原作ゲームに登場したスライムジェネラルは、魔法よりも物理攻撃の頻度のほうが高かったように感じたが……それはボディスペック的に物理戦闘のほうが得意だったからだろうか?

 それとも、こうやってナイトと並んで出てくるぐらいだから、ナイトから進化する個体のほうが多いのかもしれない。

 なんというか、スライムマジシャンたちからすれば「俺は魔法の研究で忙しいんだ! 将軍だなんてめんどくさい役職は御免被る!!」って感じなのかもしれない……いや、知らんけどね。

 それはそれとして、この世界のスライムジェネラルがどんな戦い方をするのか、見せてもらおうじゃないか!


「さて……それじゃあ、これまでと同じように、各自の判断で自由に戦ってくれ、俺もそうするから」

「オッケー! このメイスでボコボコにしちゃうねっ!!」

「わたくしも、今回はレイピアによる戦闘を主軸にいたしましょうか……ジェネラルの腕前も気になるところですし」

「私はいつもどおり、魔法で始末するのみ」

「皆さん、スライムジェネラルはこれまでのナイトやマジシャンから一段階進化しているだけあって相応に強くなっているはずです、甘く見ることのないようにお気を付けください」

「まあ、それもそうだな……ではミキオ君、今回もよろしく頼むよ」


 そうしてミキオ君を抜き、あとは魔力を込めればいつでも蹂躙オーケーだ。

 そして、俺がゆっくりとした歩調で進むあいだに、ノムルが風歩で一気にスライムジェネラルとの距離を詰める。


「せいやっ!」

「……ギュ」

「へぇ……最小の動きで避けたぞっていいたいの? それならっ!!」

「……ギュギュッ!」


 ノムルの連撃を、ジェネラルは軟体ボディを活かしてクネクネと巧みに回避していく……なかなかやるじゃん?

 そして、ジェネラルとの戦闘を開始したヨリも似たような状況のようで……


「あらあら、さすがナイトとは一味違うといったところでしょうか……わたくしも燃えてきましたわよっ!」

「ギュムッ!」


 まさに、一進一退の攻防を繰り広げている。

 そしてサナのほうは……


「そんなふうに表面をゴツゴツさせたところで、単なるこけおどしにしかならないことを思い知るといい……」


 そういいながら、いきなり範囲攻撃のロックレインを発動する。

 これはおそらく、ノムルやヨリがジェネラルに攻撃を回避されているのを見ての判断であろう。


「私のロックレインを……耐えた?」

「ギュッギュッギュッ」

「鼻で笑うとは、生意気……」


 スライムに鼻があるのかどうかは意見の分かれるところであろうが……でも、そんな感じに見えたね。

 しかしながら、あのゴツゴツとしたボディは伊達ではなかったのだろう……サナのロックレインを耐え切るレベルの防御力を秘めていたらしい。

 スライムの代名詞ともいえる軟体ボディに加えて、防御力のある表皮……それを駆使して3人娘と普通に渡り合えているあたり……スライムジェネラルって強くね?

 いやまあ、確かに原作ゲームでもそれなりに強かったけどさ……それでも、ちょっとビックリしちゃうね。


「だから先ほど『甘く見ることのないように』と申し上げたのですがね……」

「……ふむ」


 思わず足を止めて観戦モードに移行しかけていた俺の隣にいつのまにかギドが来ていて、そうつぶやいた。

 そしてミキオ君もそろそろ暴れたいと訴えかけてきているので……俺も本格的に戦うとしましょうかね。

 どうも最近の俺ってば、ほかのメンバーの戦いぶりを見てからって感じになりがちだよな……まあいいか。


「……アレス・ソエラルタウト、いざ参る!」

「ギュイッ!」


 ミキオ君の切っ先を正面に向けて、風歩で突進。

 さすがのジェネラルも、ミキオ君の蹂躙モードがヤバいことは理解できるのであろう、全力で回避に努めるようだ。


「ほう……その辺のスライムと違って、機動力もそれなりにあるようだな?」

「……ギュ」

「フフッ、シルバーメタリックに輝く冷や汗が見えているぞ?」

「ギュギュゥッ!!」


 俺の挑発に激昂して突っ込んでくるかと思ったが、どこか平静な部分もあるのだろう、ジェネラルはミキオ君を警戒したそぶりで一定の距離を取りながらウインドカッターを放ってくる。


「そんなもの、効かんな」


 ならばといわんばかりに各種魔法を放ってくるジェネラルであるが、ミキオ君の刀身の周りに渦巻く暴力的な魔力がそれらを薙ぎ払う。

 なんだ、普通に魔法もガンガン使ってくるじゃないか……ということは、あれは原作ゲームに出てきたジェネラルの怠慢だったのかね?

 それはともかく、ジェネラルの魔法を斬り伏せながらジリジリと距離を詰めていく。


「ギュワァッ!!」


 魔法ではらちが明かないと判断したのか、物理攻撃に切り替えてきたジェネラル。

 そんなジェネラルに対し、なんとなく蹂躙モードでグチャグチャにして倒すのも気が引けたので、ミキオ君を名刀モードに切り替えてお相手することにした。


「ジェネラルよ、お前にもレミリネ流を見せてやろう!」

「ギュッ!」


 そしてジェネラルのスライムボディから放たれる攻撃の一手一手に、なんらかの戦闘理論を感じられる。

 これは戦いがいのある相手のようだ。

 そしてしばしの時間を経て、ついに決着のときは訪れる。

 名刀モードのミキオ君による一太刀により、ジェネラルの核を両断。


「……ギュ……ァ……ッ……」

「スライムジェネラル、敵ながらあっぱれであったぞ」


 そうして、ジェネラルが黒い霧となって消える姿を見届けて終わった。

 あとに残ったのは、ジャージ上下……ってトレーニングウェアのジャージ!?

 なんていうか、その……カッコつかないなぁ……

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