第407話 熱い眼差し
朝食をのんびり食べたり、若きスライムハンターたちに武勇伝を語ったりしているうちに、まあまあ時間が過ぎてしまった。
……!!
お姉さんセンサーに反応アリ……こちらに向ける友好的な意識もかなり高そうだ!!
これはと思い、お姉さんセンサーに反応のあった方向に魔力探知を広げてみると……昨日の夜、ゲイントの家で認識した魔力のカタチだった。
まあ、つまりはゲイントの奥さんであるハナさんと、その付き添いらしき人というわけだね。
そして同時に、ゲイントとヒナちゃんの魔力もキャッチした。
どうやらその4人が俺たちのいるホテルに向かってきているようで、彼らを認識後、少ししてから食堂に姿を現したのだった。
「おお、ここにいたんだな、アレスさんたち!」
「おはようゲイント、ダンジョンでの疲れは癒えたか?」
「おう、それはもうバッチリさ!」
「それはよかった」
とまあ、こんな感じで朝の挨拶を交わしたところで、ハナさんが声をかけてきた。
「このたびは夫を助けてもらっただけでなく、私の病気を治すためのとても高価なポーションまでいただいてしまって……大変お世話になりました、どうもありがとうございます」
「いえいえ、我々はもともとスライムダンジョンに挑戦するつもりでこの街に来たのですから、お気になさらず」
「まあっ! なんというお優しい方なのでしょう!!」
「な、いったろ? アレスさんはこういう人だってな!」
「ふふふ、そうみたいね」
なんか、2人が甘い雰囲気を出し始めたぞ……
こうアツアツだと、ゲイントが必死になった理由も分からんではないな。
そして、一緒に来たもう1人のお姉さんが声をかけてきた。
「へぇ、アンタがアレスサンかぁ……ウチのアニキとアネキが世話んなったな!」
「ええと、ご家族の方ですか?」
「おうよ、アタシはゲイントの妹のケイラってんだ、よろしくな!」
「そうでしたか、こちらこそよろしくお願いします」
「なんだなんだぁ? アンタはもう、ウチの家族みたいなもんなんだから、そんな畏まった話し方しなくていいって!」
といいながら、ケイラさんは肩を組んできたのだが……はわわぁ~っ、とてもいい匂いがするぅ!
それに、この姐御って感じ、とってもステキだぁ~
「おい、ケイラ! 急に失礼だろ!! すまない、アレスさん……親父に似たのか、コイツはどうもガサツで……」
「……あ、いや、大丈夫だ。むしろ、フレンドリーに接してもらえて嬉しいぐらいだ」
「そうだろう、そうだろう! アニキは細か過ぎんだってぇの!!」
そういいながら、肩を組んだまま、手のひらでバシバシと俺の肩を叩くケイラさん。
……肩を組んできたときにズッシリと感じたホールド力といい、なかなか力があるみたいだ。
そして、日焼けによるものだろう健康的な肌の色から察するに……ゲイント同じく猟師をしているのかもしれないな。
そう思いながら、手のひらに視線を向けてみると……やはりといべきか、ゲイントと手の感じがそっくりだった。
「ふぅん……アタシがアニキと同じ猟師だって気付いたみたいだね……なかなかやるじゃん」
「いえいえ、それほどでもありませんよ」
「ま~た、そんなしゃべり方してぇ~」
空いたほうの手で頭をワシャワシャされる。
この際、少し離れたところで3人娘が悔しそうな顔を浮かべながらヒソヒソとやっている。
その横では、ギドが朗らかな笑みをたたえて控えている。
まあ、使用人たちは、俺がウェルカムな姿勢であることを承知しているだろうからね……ケイラさんに注意をしない(できない)のさ。
「いやはや、これはクセみたいなものでして……」
「クセだぁ? ま、いいけどよ!」
そういいながら、なおもワシャワシャは続く。
ちなみに、昨日からついさっきまでヒナちゃんは俺に憧れというべきか、熱い眼差しを向けてきていたのだが……
俺がケイラさんにデレデレしているうちに、その眼差しの温度が下がってきているのを感じる。
なんというか、憧れを裏切ってしまったことについては申し訳ない気もする。
だが、分かってくれとはいわないが……俺はそういう男なんだ。
「ケイラ、もういいだろう、そのめんどくさい絡み方をやめるんだ」
「……はいはい、わ~ったよ」
そして解放されてしまった……
俺としては、そのままでも構わなかったんだけどね。
ただ、ゲイントの頭の中には、俺が貴族だからっていうのもあったんじゃないかな?
しかしながら、ケイラさんだって相手をちゃんと選んでいる気はするんだけどなぁ。
なんでって? 俺のお姉さんセンサーがそう判断しているからさ。
そんな感じで、かなり脱線してしまったが……ゲイントたちは改めてお礼をいいにきたらしい、律儀なもんだねぇ。
それから、俺が……正確には腹内アレス君がだけど、食べることが好きだと知ったハナさんはアップルパイを焼いてきてくれた。
こういう、心のこもった贈り物はとても嬉しいものだね。
そうして俺たちの話が一段落したところで、先ほどの若きスライムハンター誕生に大きく関わったオッサンが、若者2人を連れて話に加わってきた。
「おい、ゲイント! コイツらをお前さんの弟子にしてやっちゃくれねぇか!?」
「うん? どうした急に?」
まあ、そりゃそんな反応にもなるわなって感じ。
というわけで、俺とオッサンで事情をゲイントに説明した。
「なるほどなぁ、俺としてもスリングショットに興味を持ってくれる人が増えてくれることは嬉しいし……まあいいだろう」
「やったな、オメェら! ほら、弟子入りするんだ、しっかり挨拶をしろ!!」
「よ、よろしく……」
「えっと、が、頑張ります……」
「ったく、挨拶もなっちゃいねぇじゃねぇか!」
「まあ、アニキがいいんならいいけどよ……コイツら根性あんのかねぇ?」
それはどうなんだろう……
ただ、俺もちょっとやってみただけだけど、スリングショットを楽しいって思えたから、イケるんじゃないかなという気はする。
「あ、あのっ! もしよかったら、俺も仲間に入れてくれませんか!?」
「それなら、オイラも!」
………………
…………
……
とかなんとかいってたら、食堂で今まで俺たちの会話の成り行きを見守っていた奴らまで次々と名乗りを上げだした……
「ま、まあ、何人でも一緒だからな……やりたい奴はみんなきてくれ!」
そうゲイントは答えた。
もしかしたら……この街でスリングショット流行の兆しって感じかな?
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