第401話 叫び声を上げた
「勝った……俺たち勝ったんだよな!? あんな信じられないぐらい巨大なスライムに!!」
「ああ、もちろんだ。ゲイントだってスリングショットでユニオンスライムの核をいくつも破壊していただろう?」
「それはそうかもしれないけど……今も実感がなくてさ……それに、アレスさんが奴を削ってくれなければ、いつまでたっても核に届かなかっただろうし……」
「ま、その辺のところは役割分担ってやつだ」
「そ、そうか……」
ユニオンスライムの討伐を果たし、魔石とドロップ品が出現するまでのあいだ、しばしご歓談のお時間ですといった感じである。
「それにしましても……改めてアレス様のお力に敬服いたしましたわ」
「分かってはいたことだけど、やっぱり私たちとは実力の次元が違ったねぇ~」
「……情けない気持ちでいっぱい」
「いやいや、3人ともまだまだこれからだろ? それにさっきのユニオンスライムだって、もっとじっくり時間をかけていれば、3人だけで倒すこともできたはずだぞ? だからそう気にすんなって!」
「そうですね、確かにあなたたちの攻撃でユニオンスライムの受けたダメージは少なそうではありましたが、かといって全くゼロだったわけでなかったはずです。そして、幸いこのダンジョン内は地上より魔素の濃度も比較的高いようですし、魔力操作をしながら気持ちさえ折らずに戦い続けることができれば勝利も確実だったでしょう」
「やっぱ、ギドもそう思うよな!」
「はい、もちろんです」
「うぅ……アレス様のギドさんへの信頼感の高さがうらやましいですわ……」
「実はギド、最後のほう以外あまり攻撃に参加していなかったはずなのに……実際に攻撃していれば、最初からユニオンスライムの核を破壊できてそうなイメージを持たせてくるところが実に腹立たしい」
「まあ、実際にアレス君の障壁魔法にもヒビをいれてたぐらいだし? それぐらいはできちゃったかもしれないよねぇ~」
ギドの場合は、あんまり本気を出すと魔族バレの可能性があるからなぁ……ある程度抑えなきゃならんところが大変だろう。
今のところはまだ「アレス付き筆頭だから」でごまかせていると思うが、それでもやっぱ、実力っていうのは完全に隠し切れるもんじゃないだろうからね。
ま、これから3人娘はもちろん、ほかの使用人たちもガンガン実力を伸ばしていって、多少本気を出してもギドの強さが目立たなくなるぐらいになってくれることを期待するとしよう。
そんなことを思っているうちに、魔石とドロップ品が出現。
「わぁ~魔石がいっぱ~い!」
「……私は巨大な魔石が1つだけ出現すると思っていた」
「わたくしもそう考えていましたわ……でも、そうでなかったということは……ユニオンスライムというのは巨大な1体のスライムではなく、多くのスライムが寄り集まっていたということなのでしょうね」
「ふむ……ユニオンスライムの発見事例が少なかったのはこれが影響していたのかもしれないな……単なるスライムの大群だったと思われていた、みたいな?」
「なるほど! これ全部を冒険者ギルドに持ち込んだって、普通のスライムの魔石がたくさんとしか査定されないかもしれないもんな!!」
「そうですね、この魔石の感じ……私たちが9階までで倒してきた普通のスライムたちの魔石と微妙な違いはありますが……微妙過ぎて査定では誤差の範囲内とされそうです」
「えぇ~そんなぁ~」
「とはいえ、そのぶん数は多い」
「そうはいいましても、巨大な1つのほうがギルド……もっといえば貴族内での評価は高まりますわね」
そういう評価は、今のところ俺は別にそこまで求めてないからいいかなって感じ。
「ま、一応ギルドにはデカくて核を複数持つスライムがいたとは報告しといたほうがいいだろうが、ホラ吹きだと思われても面白くないから、強くアピールするのは控えておこう」
「確かに……街のみんなもあんまり信じようとしないかもなぁ……いや、そもそもスライムのことをよく分かってない人のほうが多いだろうから、ピンとこないかも……」
「さあさあ、魔石の話はそれぐらいにして、ドロップ品の回収をしませんと」
「おっと、そうだったな……ってこの箱……もしかして?」
「すっご~い! フルーツゼリーの詰め合わせだぁ~っ!!」
「あらあら、まあまあ……これまた上品なケースに入って、素晴らしいですわね!」
「ゼリーのほうも、まるごと果実がごろっと入っている……これは嬉しい」
3人娘が大興奮。
そして、腹内アレス君も大喜び。
というか、このダンジョンに来て、腹内アレス君は終始ご機嫌だったもんね。
……お、こっちはメロンのゼリーか、それも赤肉。
これはなんだか、前世を思い出しちゃうなぁ。
まあ、そこまで頻繁に食べてたわけじゃないけどね……でも、印象深くはある。
とまあ、俺たちソエラルタウト組がテンションアゲアゲなところ、ゲイントも負けじと叫び声を上げた。
「こ、これは……ッ!!」
「どうした……ってそれ、上級ポーションじゃないか! やったな!!」
「やっぱり!? やっぱり上級ポーションだよな!! いよっしゃぁぁぁぁ!!」
ダンジョンさん……あんた、太っ腹だよ!
誰だよ、スライムダンジョンが渋いだなんていった奴は!?
……あ、俺か。
なるほど、スライムダンジョンっていうのは「渋い」じゃなくて「シブい」だったってことだな!
まぁ、なんにせよ、これでゲイントはこれ以上ムチャをする必要がなくなったってわけだ、よかったなぁ。
こうしてユニオンスライムの魔石とドロップ品を、みんな笑顔でワイワイしながら回収したのだった。
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