第400話 削っていけばいい

「最初見たときは、その大きさに圧倒されてしまいましたが……アレス様のいうとおり、『核がいっぱいあるスライム』でしかありませんわね!」

「そうだね! よぉ~し、頑張っちゃうぞっ!!」

「……まずは、遠距離攻撃で様子を見るべき」


 そうして、3人娘はファイヤーランスをユニオンスライムにお見舞いする。


「よし、それなら俺もスリングショットで!!」


 また、ゲイントも鉄球を撃ち込む。

 それらの攻撃を戦闘開始の合図と受け取ったのか、ユニオンスライムが覇気のようなものを発揮し始めたのを感じる。

 まあ、そんなことは関係なしで、3人娘とゲイントはドカドカ攻撃を加えていく。


「う~ん、やっぱり、核には届かないねぇ……」

「それどころか、さほど体表面にもダメージを負った様子がありませんわ!」

「……スライムのクセに生意気」

「おい! 奴が……なんか青く発光しているぞ?」


 なんてゲイントが言葉を発した瞬間、ユニオンスライムが特大のウォーターボールを飛ばしてきた。

 なんとなく見た感じでウォーターボールといってみたけど、3メートルぐらいの水の球ってもう、一般的なウォーターボールの規模じゃないよな?


「まあ、その程度で俺の障壁魔法を突破しようだなんて、甘いにもほどがあるってもんだ……まあ、スライムのドロップ品は甘いものが多かったけどな」

「どうやら、あの発光は魔法を放つときの予備動作のようですね」


 なるほどなぁ、事前に知らせてくれるだなんて、親切な奴じゃないか。

 とはいえ、そんなバレバレな予備動作をしているようじゃ、魔力操作の鍛錬不足といわざるを得んな。

 なんて冗談はさておき……3人娘だけでも回復を繰り返しながら根気強く魔法を撃っていれば、そのうちユニオンスライムを削り倒すことも可能だろうとは思う。

 だが、それだと時間がかかり過ぎて日付が変わってしまうかもしれない。

 俺たちだけなら3人娘のレベルアップにもう少し時間を割いてもよかったが、あまりヒナちゃんを待たせるのも悪いしな……


「俺もここらで積極的に攻撃参加といこうじゃないか……そしてギドよ、大丈夫であろうとは思うが、みんなの防御をよろしく」

「かしこまりました」


 ギドならしっかりと守り切ってくれるだろう。

 まあ、これはマジで念のためって感じだけどね。

 そうして、一歩一歩ゆっくりとした歩調でユニオンスライムに近づくとともに、腰に差していたトレン刀を抜く。


「ミキオ君、久しぶりに暴れようか……ちょうど蹂躙しがいのありそうなスライムがそこにいるからね」


 そして徐々に歩きから駆け足になり……


「よってミキオ君! 蹂躙モードだぁ!!」


 最後は猛ダッシュでユニオンスライムに突っ込む。


「ビッ! ビッギャァァァ!!」

「へぇ、ユニオンスライム……なかなかいい声で鳴くじゃないか」


 最近、何かと手加減することが多くて、ミキオ君を本気で活躍させてあげる機会がめっきり減っていたからね……

 それもあってか、ミキオ君が俺の魔力を吸って実にイキイキとしているよ。


「ビギッ! ビギャァッ!!」

「う~ん、メロディアス!」


 というわけで、ビチャビチャと酸性の体液を撒き散らしながらユニオンスライムは、俺とミキオ君に肉厚のボディを削り取られていっている。

 ここでふと思ったが、スライムにも痛覚ってものはあるのかね?

 この必死な鳴き声を聞いていると、どうにもそんな疑問が湧いてきてしまうよ。

 でも、このプルンプルン加減からして、痛みなんかなさそうだけどなぁ。


「俺はダイエットに成功した! だからお前もこのまま頑張ればスリムボディを手に入れられるはずだ!!」

「ビッギュァァァッ!!」


 そしてユニオンスライムが赤く発光したかと思うと、これまた特大のファイヤーボールを飛ばしてきた。


「そうか! お前も熱血しているんだな!!」

「ビギャァ! ビギャァァァァ!!」


 さらに何発もファイヤーボールを飛ばしてくるが、俺の魔纏には影響なしだ。


「ユニオンスライムがみるみるサイズダウンしていきますわ……」

「……凄い」

「そっかぁ、あんな感じで削っていけばいいんだねぇ」

「そうはいっても生半可な実力じゃ、あんなこと無理だよなぁ……」

「………………フフッ、坊ちゃんもなかなかやんちゃでいらっしゃる」


 なんてみんなの声が聞こえてくる、そして……


「ねっ、あそこまでいけば私たちの攻撃でも核に届くんじゃない?」

「そうですわね……あれぐらいの厚みなら可能かもしれませんわ」

「あれぐらいでようやくというのも悔しいが、間違いなくいける」

「俺はどうだろうか……スリングショットの一発に全力を込めれば、あるいは?」


 ふむ、確かにこれぐらいならじゅうぶんかもしれないな。

 であるなら、そろそろいいだろう……というわけで、ミキオ君の蹂躙モードを解除する。


「お疲れさん、ミキオ君!」


 そうミキオ君に一声かけ、みんながいるところへ戻った。


「あとはみんなの遠距離攻撃で締めるとしよう」

「よぉ~し、今度こそ頑張っちゃうぞっ!」

「わたくしも負けていられませんわ!」

「私の魔法では、まだまだ威力が足りないことを痛感させてもらった、その感謝を魔法に込めて撃つ」

「よぉ~く狙って……この一発に全力だぁ!」

「では、私も少々」


 こうして、魔法やスリングショットなど、みんな思い思いの方法でユニオンスライムの核を破壊していく。

 そしてどんどん核の数は減っていき……


「ビッ……ギャ…………ッ………………」


 ユニオンスライムは全ての核を失い、少しの間をおいて黒い煙となって消えたのだった。

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