第390話 ついにポーションが出たよっ!!

 スライムダンジョン5階にやってきた。

 この階でもスライムは、これまでと同じように大量だった。

 そして残念ながら、この階にもヒナちゃんのお父さんがいる様子がない。

 でもまあ、彼の目的はスライムがドロップするポーションなんだ。

 しかも、中級までは既に試したらしいから、目指すは上級となる。

 そこで、4階まででは最下級のポーションすらドロップしていないことを考えると、まだここは彼の狩場ではないのかもしれない。

 ……まあ、そう思いたいだけなんだけどね。

 そんなことを思いつつ、おなじみの光弾でスライムたちの核を貫き続ける。


「……あっ! ついにポーションが出たよっ!!」

「あら、本当ですわね」

「5階まで来てようやく……」

「どれどれ……ん? これって下級ポーションじゃないか?」

「はい、アレス様のおっしゃるとおりでしょう」


 なんとなく、最下級のポーションから順番に出ることを想像していたが、違ったようだ。


「いきなり下級ポーションが出るなんて、幸先いいんじゃない?」

「とはいっても、下級ですものねぇ……」

「しかしながら、この階においてはおそらくレアドロップに相当するはず、やはり幸先はいいと思われる」

「ただ、階に応じてドロップする等級の確率が変わるだろうことを考えると……現実的な確率で上級ポーションを狙うにはまだ先の階になりそうだよな……」

「そうですね、少なくとも中級ポーションが普通にドロップするぐらいの階でなければ厳しいでしょうね」

「だよなぁ……」


 一応、この階でも上級ポーションが出現する可能性はゼロではないだろうが、物凄く確率は低いはず。

 そのため、ヒナちゃんのお父さんの実力がハッキリとは分からないものの、やはりここはまだ狩場にふさわしくなかったんじゃないかと思う。

 だが、徐々に近づいてきている気はする。

 ……頼むぞ、無事でいてくれよな!

 こうして、5階も最短距離のルートを選択しながら、6階に続く階段へ向かう。

 ちなみにドロップ品の種類としては、4階までの物にポーションが加わっただけって感じだね。

 そんな感じで、オヤツタイム的にグミを食べながら階段を上った。

 まあ、ダンジョンさんサイドとしては、階段はモンスターの出現ポイントじゃないみたいだからさ。

 とはいえ、各階にモンスターが収まり切らなくなると階段にまで押し出されてくるだろうから、完全なセーフティーゾーンとはいえないのだろうけどね。

 とかなんとかいっているうちに、6階に到着。


「いつもどおり……スライムの団体さんだな」

「このスライムたちより上位種がメインとなる階では、もう少し数も減るのでしょうが……」

「確かに、上位種まで同じペースで繁殖されたらシャレになんないもんね!」

「それは……考えたくないですわね」

「1つ上ぐらいならまだしも、それが2つ3つ……となっていけば、領軍でも手に負えなくなるかも」


 キングやエンペラーあたりのスライムが大繁殖して、それがダンジョンから溢れ出てきたりなんかしちゃったら……その領地は終わるんじゃない?

 しかも、縄張り争いで潰し合いをしてくれそうなゴブリンやオークとかも、どちらかというと肉体派だろうからね……スライムになすすべもなく侵略されちゃうだろう。

 そう考えるとやっぱ、ある程度のところで繁殖を抑えなきゃいけないんだろうなぁ。

 ドロップの渋いスライムダンジョン……その地を治める領主からハズレダンジョンとみなされてそうだ。

 そんなことを考えつつ、この階でも同じように光弾を撃ちまくる。

 そして、いわなくても分かるかもしれないが、ヒナちゃんのお父さんの気配はこの階にもない。

 よって同じく、階段まで最短距離を進む。

 こうしていると、だんだん作業感が増してくるね。

 そんな中で代わり映えがするものいえば、ドロップ品だけである。

 6階からは、ゼリーが出現した。

 そう、あのプルルンとした食感のゼリーである。

 いやまあ、美味しいんだけどね……

 でも、なんでポーションよりあとの階に出てきたんだろう? 不思議に感じてしまう。

 なんだかこのダンジョン……「スライムのお菓子なダンジョン」って呼びたくなってきたな。

 だってこの調子だとたぶん、まだまだお菓子が出てきそうだしさ。

 そんなことを思いつつ、7階に着いた。

 そこでさっそく、魔力探知。


「……この階にも、ヒナちゃんのお父さんがいる様子がない」

「アレス様、気を落とされませんように」

「そうですよ! まだまだダンジョンは続くんですから!!」

「ノムルさんのおっしゃるとおり、全ての階を確認するまでは希望が残されておりますわ!」

「この辺のスライムはまだ動きが遅い、平民でも走って逃げることは可能。あとはスライムが繁殖して逃げ切れなくなる前に安全な場所を確保できているかどうかだけ」

「……ああ、そうだな! 希望はまだ残されているよな!!」


 とはいえ、スライムたちの様子から、徐々に動きが速く、耐久力も上がってきているような気がする。

 いや、今のところ光弾で一撃だから俺からすると大した差ではないのだが、魔法を有効に使えない場合だとキツイのではないだろうか。

 だから、本当にいるのだとしたら、そろそろなんじゃないかと思う。

 セーフティーゾーンだって、そろそろ用意されてもいいはずだしな。

 というわけで、7階もサッサと通過だ!

 8階こそはヒナちゃんのお父さんがいますように!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る