第384話 グッドラック!

「みなさん、準備はよろしくて?」

「おっけ~! 今日も頑張っちゃう!!」

「コツコツと努力を積み重ねるのみ」


 というわけで、朝の恒例行事となっている障壁魔法に挑戦である。

 また、ギドもいるようだが、今は様子見の段階といったところかな?


「……そういえば、ギドはやんないの?」

「思い返してみると……ギドさんはアレス様の障壁魔法に挑戦されたことがなかったのでは?」

「はい、あなたたちに挑戦権をお譲りしていたものですから」

「今日は人数も少ないのだから、ギドも挑戦すればいい……それとも自信がない?」

「え~っ、そうなの? みんなまだ攻略できてないんだから、気にせずやってみればいいのに~」

「そんなに自信がおありでないのでしたら、筆頭の地位もお譲りいただいてよろしくてよ?」


 おっと、ここで3人娘がギドを挑発!

 さて、ギドの返答やいかに!?


「やれやれ……仕方ありませんね」


 なんと、なんと、なんと! あのギドが緊急参戦!! これはどうなってしまうんだぁ!?

 なんてテンションを上げてみたが……今までアレス付きの使用人たちに挑戦させていた障壁魔法程度、ギドなら普通に破壊できちゃうよな……


「そうですね、今回はより視認性を高めるためストーンバレットにしておきましょうか……というわけでまず、ストーンバレットを生成するわけですが、ここで可能な限り魔力を圧縮しましょう」

「あれ……なんか講義が始まっちゃった?」

「ギドのドヤ顔先生……再び?」

「迂闊でしたわ……」


 そういえば、ギドがほかの使用人たちにスノーボードの滑り方を教えたってときもこんな感じの反応をされてたよな……

 ギドの奴……どんな顔をして教えてるんだ?

 くっそ、寝たフリで目をつぶってるから分からん……薄目を開けてバレるのも恥ずかしいしな……


「そして、しっかりと魔力を圧縮したところで射出します……まあ、こんなものでしょうね……ただし、これで終わりではありません。着弾点と寸分違わぬ位置に同様のストーンバレットを連射します……このようにね」


 その言葉とともにドカドカとストーンバレットが一点に集中して撃ち込まれ続け……


「……あっ! 障壁魔法にヒビが!!」

「くっ……やられましたわ」

「さすがは筆頭……悔しいが認めるしかない……」

「とまあ、参考になれば幸いですね。それから、こんなふうに他者の魔法から魔力を抽出して己のものとする、なんていうのはいかがでしょう? これは特にヨリさんの課題達成に役立つと思いますよ?」


 といいながらギドは、俺の障壁魔法に手をかざし、魔力の吸収を試みる。


「なるほど……それができれば、空気中の魔素の魔力変換なんて簡単に思えますわね」

「おぉっ! 障壁魔法の強度も下がってるみたい!!」

「……確かに」


 そもそもギドなら苦もなく破壊できるレベルの障壁魔法だったからな。

 これは現段階で、3人娘が到達可能な水準でデモンストレーションをおこなったといったところだろう。

 3人とも、きっちりモノにするんだぜ!

 といったところで、そろそろ俺も目覚めのときがやってきましたね。

 そして起床後は、これまたいつものように朝練。

 今日はホテル内に設置されている運動場で走る。

 走り終わったら、シャワーを浴びて朝食。

 それで、ここのホテルはビュッフェスタイルの朝食か……実に俺好みだ。

 なんて思いながら山盛りで席に着き、いただきます!

 そうして美味しく朝ご飯をいただいていると、周囲の話し声が聞こえてくる。


「昨日、飲み屋で聞いた話なんだけどよ」

「あれま、昨日も飲んじゃったの?」

「毎日毎日、飲み過ぎじゃないですか……」

「そんなことはいいんだよ! それよりな、お前らソエラルタウト領の話を知ってっか?」

「ああ、季節外れの大雪が降ったって話でしょ? そんで大雪が降ったかと思えば、こう暑い日が続く……例年なら、そろそろ気温が下がってきてもおかしくない頃だっていうのにさ……もしや、これがイジョーキショ―ってやつ?」

「異常気象ですよ、なんでカタコトなんですか……」

「ふふん、ハイカラだろ?」

「訳が分かりませんよ」

「だから、そんなことはどうでもいいんだよっ! そのソエラルタウトの大雪だけどな、あれは魔法で人為的に起こしたことらしいぜ?」

「えっ、そうなの?」

「なんでまたそんなことを……」

「えぇと、なんだっけ……ああ、そうそう、ヒショッチを作りたかったんだとよ!」

「へぇ、ヒショッチかぁ……それは凄いや」

「だから、なんで2人ともそこでカタコトになるんですか! 避暑地っていってくださいよ!!」

「「ハイカラだろ?」」

「ハイカラってそういうことじゃないですからね! 焔の国の人が聞いたら、たぶん怒りますよ!!」

「そんぐらいで怒るわけねぇだろ」

「ただでさえ暑いんだから、そうカッカしなさんなって」

「……はぁ、まったく……それで、ソエラルタウト領の避暑地がどうしたというんですか?」

「そこに……俺たちも行ってみねぇか?」

「なるほどぉ~俺たちも涼みに行くってわけだね?」

「これまた唐突ですね……」

「唐突でもなんでもいいんだよ! だいぶ街の開発は進んじまったらしいけど、まだまだ割のいい仕事も残ってるらしいんだ、これは行くしかねぇだろ!!」

「ま、この暑さとオサラバできるなら、俺は行ってもいいよ」

「う~ん、割のいい仕事があるなら、移動の費用を差し引いても損はない……かな? まあ、どうしてもというのなら、構いませんけど……」

「お、本当か! よっしゃ、そうと決まれば、さっそく今日から行こうぜ!」

「よ~し、行こう行こう!」

「ちょっと待ってください、まずはソエラルタウト領行きの馬車を見つけないと!」

「そこに気付くとは、やるじゃねぇか! よし、それはお前に任せるとしよう!!」

「さっすが! できる男!!」

「も~う、僕がそんなおだてに乗る男だと思ってるんですかぁ~? いやだなぁ~まったくぅ……くふふ」


 そういいながら、思いっきりおだてに乗ってるじゃねぇか!

 いや、それはまあいい……君たちもソエラルタウト領に来るというのだね? いい選択じゃないか。

 きっと雪の街は君たちの期待を裏切らない、思う存分に楽しんできてくれたまえ!

 そうして、彼らは意気揚々と席を立つのだった……グッドラック! ボーイズ!!

 あと、「ハイカラ」ってこの世界では焔の国の言葉って扱いなんだな……まあ、元ネタが日本だもんな。


「この様子だと、ソエラルタウト領に来てくれる人がまだまだたくさんいそうですね」

「ああ、兄上も喜んでくださることだろう。さて、朝ご飯も食べたことだし、俺たちも行くとするか……あ、そうだ、途中でダンジョンに寄ってみたりしたいんだが、ちょうどいい場所はあるか? まあ、なければモンスター狩りでもいいけどな」

「そうですね……昨日と同じペースでお昼頃に着く街の付近に、確かダンジョンがあったかと」

「よっしゃ! そこだっ!!」


 久しぶりのダンジョンだ! ワクワクするねぇ!!

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