第12章 大繁殖
第379話 お見送り
お茶会から一夜明けた。
そして今、雪の街に宿泊していてこれから帰る貴族家のお見送りに来ている。
「アレス殿の教えを忘れず、領に帰ってからも魔力操作の練習をしっかりやります!」
「わたちも、すてきなれでぃになれるよう、もっとがんばるつもりよ!」
「いろいろ面白かったぞ~」
「また魔法とか教えてくれよなっ!」
「スノーボードも、またやりたいなぁ」
こんな感じで、子供たちが出発前に言葉をかけてくる。
「成長したみんなにまた会えることを楽しみにしているよ。それじゃあ、元気でね! 気を付けて帰るんだよ!!」
たった1日だけとはいえ、魔力を通わせ合った仲間たちなんだ。
これからの成長に期待するとともに、毎日を幸せに過ごしてもらいたいと思う。
また、子供たちだけでなく、夫人たちにもご挨拶申し上げたのは当然のことといえるだろう。
そしてその夫人たちであるが、もともと俺に好意的ではあった。
だが、子供たちに魔法を教えるなどして仲良くなったことによるものか、さらに好感度が増したように感じる。
なんとなく声の調子や表情に、より一層の慈愛のようなものが含まれている気がするんだよ。
フッ……これは、お姉さんパラダイスが一日遅れでやってきたってわけだね!
そんな満足感に満たされながら、貴族家のみなさんをお見送りする。
それと、お茶会が決まってから既に心の準備もしていたし、一緒にいられる時間を大切にもしてきたが……
「アレス様、そろそろ私たちも出る時間がきてしまったよ」
「ちょっぴり……いえ、すっごく寂しいですけど……」
「ま、春休みまで、しばらくの辛抱だな!」
「また会える日を楽しみにしてるっす!」
「お体に気を付けて~お元気でいてくださいね~」
「今度会ったときはまた、たぁくさん魔力交流、しましょうねぇ?」
護衛のお姉さんたちとも、これでしばらく会えなくなる。
春休みまで……そのときガッカリされないよう、もっともっと自分を磨いておこう。
「夏休みに入ってから今日まで、みなさんのおかげでとても素晴らしい日々を過ごせました、ありがとうございます! また会える日を楽しみにしています! それまで、どうかお元気で!!」
もともとソエラルタウト領に帰ってくることについて、前向きな気持ちではなかった。
それでもルッカさんやシノリノさんも含めて、このお姉さんたちが護衛として迎えに来てくれたからこそ、学園都市からソエラルタウト領までの道のりを楽しむことができたし、ソエラルタウト領への後ろ向きな気持ちも緩和されたのだ。
改めて、そんな感慨にしみじみと浸りながらお姉さんたちを見送った。
「さて、僕たちも領都に戻ろうか」
「そうねぇ」
「戻ったらまた、書類仕事が始まるわね」
「うっ……ま、まあ、頑張るさ! ははっ……」
こうして俺たち、ソエラルタウト家の面々も雪の街から領都へと移動を開始する。
はぁ、スノーボードもこれでしばらくお預けだなぁ……
といいつつ、いつでもどこでも魔法で雪山を作ること自体はさほど苦もなくできるんだけどね。
でも、なんとなく春休みまでのお楽しみに取っておいたほうがいいような気がするんだ。
それによって、ソエラルタウト領に帰ってくることもより楽しみになるわけだしさ。
あと、ボードならウインドボードもあるからね、じゅうぶん我慢もできるさ。
なんてことを考えていると、兄上から声がかかる。
「今回のお茶会は、アレスのおかげで大成功だったよ!」
「そうね、来てくれたみんなも、この時期のソエラルタウト領に雪があることをとても驚いていたし」
「あと、アレス君がお子さんたちの面倒を見てあげたのも大きかったでしょうね」
「ああ、それもあるね! 子を持つ貴族の共通の悩みが『ウチの子が魔力操作をサボりたがる』らしいし、そういった意味でも子供たちに魔力操作に興味を持たせたことを喜んでもらえただろうね」
「確かにおっしゃるとおりで、私も毎回いろんな人に『つまらないから、やりたくない』といわれます……とはいえ、私も学園でエリナ先生の指導を受けるまでは似たようなものでしたけどね」
「もしかしたら、あの子たちにとってアレスはエリナ女史のような存在になっているかもしれないね」
「そ、そうですか?」
「あり得るわねぇ、『アレス先生』ってね」
「そんな……恐れ多いですよ」
「でも、自分の子供がアレス君に魔法の手解きを受けることができたと誇りに感じている親御さんもいると思うわ」
「えっ、あんな少しでですか?」
「もちろん、『誰から』っていうのはとても大事な要素だからね」
「な、なるほど……」
いわゆる貴族のマウント合戦ってやつかな?
確かに、「俺は超スゲェ誰々さんから魔法を習ったことがあるんだぜ?」とかいったら、多少はハッタリになるかもしれない。
とはいえ、俺っていろんな人に魔力操作を勧めたりしているし、「アレスから魔法を教わった」といってもあんまりレアリティはない気がするけどね。
そんな感じで、今回のお茶会についての話をしながら領都に戻ったのだった。
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