第378話 ずいぶん懐かれたみたいだね?
「魔法の練習をしているところだよ」
「アレス殿の説明は、とっても分かりやすいんだよ!」
「あら、それはすてきね、わたちにもおちえてくださるかちら?」
「レディに魔法をお教えできるとは光栄です、私のほうこそお願いしますよ」
「うふふ、よろちくてよ?」
なんとなくノリでいってみたのだが、喜んでくれたようだ。
「……なるほど、女の子とはこうやって接すればいいのか、勉強になるなぁ」
えぇ……本当に勉強になったの?
ま、まあ、向上心に溢れた少年のことだから、いろんな人の言動を参考に自分のスタイルを確立していってくれることだろう……そう思いたい。
それはそれとして、アレス先生の魔法教室を再開。
そして興味が引かれたのか、周りにいた子供たちが次々と寄ってくる。
なんというか、マジで魔法教室になってきたね……
ここ最近、領兵や使用人へ魔法の指導をおこなっているし、リッド君やエメちゃんみたいな若い子にも教えたりしているので、それ自体はそこまで大変ではない。
ただ、飽きさせないように気を使ってはいるのだが、それでもやはり……
「え~! 魔力操作なんかつまんないの、やりたくな~い!!」
「そうだ! そうだぁ!!」
「……魔力操作をやらないで、スゴい魔法を使えたらいいんだけどなぁ~」
まあね、そういう意見は今までにもよく耳にしてきたからね、もう慣れたさ。
でも、できることなら魔力操作嫌いにはならないでもらいたい。
だから、俺なりに言葉を尽くすとしよう。
「そうだね……君たちは、まだ魔力と仲良くなれていないからそう思ってしまうんだ」
「魔力と仲良く? そんなバカな……」
「なんだよそれ~! イミ分かんな~い!!」
「あなたたち、ちずかにちてくださる? わたちはアレスさまのおはなちがききたいの!」
「なんだよ、女のクセにナマイキだぞ!」
「まあっ! なんていいぐさかちら!!」
「そうよ! これだから若い男はダメなのよ!!」
「なんだとぉ!」
「はいはい、そこまでにしようね……え~と、魔法を使うのに魔力が必要なことはみんなも知っているよね?」
「それは知ってる~」
「当たり前~」
「そして、魔力をどれだけ上手く扱えるかで魔法の完成度が変わってくるってことも知っているかもしれないけど……その魔力は一定のものじゃないってことはどうかな?」
「一定の……ものじゃない?」
「そう、その時々において魔力は表情を変える……まあ、これは人によって表現は変わるだろうけど、とにかく魔力には感情があると俺は考えていてね……魔力操作をしていると『今日は魔力がざわめいているな』とか『おお、今日は穏やかだね』みたいな感じで魔力の感情を読み取れるようになるんだ」
といいつつ、実際のところは己の気分の反映なんだろうって気がするけどね。
「そんなの、分かんないよぉ~」
「でも、アレス殿がいうのならそうなのかもしれない」
「まあ、これはこちら側から魔力のことを知ろうと思わなければ分かりづらいことかもしれないね……でも、そんなふうに魔力と寄り添うつもりで魔力操作をしていれば、きっと分かるようになる……また、そうしていくうちに魔力の側も心を開いてくれて仲良くなれる! そうなれば、魔力は君たちの心強い味方になってくれるんだ!!」
「心強い味方に……」
「ホントに!?」
「ああ、ウソじゃない。ただし、それには魔力操作を一生懸命やらければいけない……それが魔力と仲良くなる一番の方法だからね」
「やります! アレス殿を信じて、私は魔力操作を頑張ります!!」
「もちろん、わたちもやるわ!」
「しょうがね~な~オレもやってやっか~!」
「えっ、えっ……それじゃあ、僕もやるぅ!」
「そういえば、兄チャンがいってたっけ……学園に『魔力操作狂い』っていうヤバい奴がいるって……それはひょっとして……ヒッ!」
おそらく実家に帰ったとき、弟に俺のことを話した奴がいたんだろうなぁ……
そんな弟君と目が合ったので、とりあえずスマイルをプレゼントしてみたらビクッとされてしまった。
まあ、それはともかくとして、ここに集まってくれた子たちが素晴らしい魔力操作ライフを送ってくれることを祈るばかりだね。
そんな想いを込めつつ、締めにみんなで円になって魔力交流に挑戦だ。
とはいえ、どちらかというと俺が主導で子供たちの体に魔力を循環させるって感じになっちゃうけどね。
「これが……魔力交流……」
「なんか、あったかい……外は寒いのにね……」
「この感覚が魔力操作のイメージ……勉強になります」
「これもなかなか、おもちろいわね」
こうしてしばらく魔力交流に取り組んだところで、兄上がやってきた。
「アレス、ずいぶん懐かれたみたいだね? ちょうどいいから、このままみんなにスノーボードを教えてあげてくれないかな?」
「ええ、それは構いませんが……」
「ありがとう。ああ、アレス1人じゃなくて、ウチの北部出身者たちも一緒だから心配しなくていいよ」
「そうですか、確かに私1人では目が行き届かなくなる可能性もありますからね」
「まあ、アレスなら大丈夫だろうけどね……それじゃあ、よろしく頼むよ」
「お任せください」
そして、貴族専用に整備されたコースに子供たちを連れて行った。
また、希望によりスキーを選択した子供のことは、スキーが得意な使用人に任せることにした。
「なるほど、これがスノーボードというものですか、なかなか面白いですね!」
「うふふ、わたちのえれがんとなすべりはいかがかちら?」
「うぉ~すっげ~めっちゃスリリング!」
「おっと、あんまりムチャな滑りはいけないよ?」
とまあ、こんな感じで最後は子供たちとスノーボードを楽しんだのだった。
……あれっ?
今日はお姉さんパラダイスのはずだったよな!?
これじゃあ、お子さんパラダイスじゃないかぁ~!!
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