第368話 お仲間の理解を得られたらいいですね
「トディはな、本当はもっとクールな男なんだ! それが、あんなくだらねぇお遊びに目ん玉キラキラさせちまって……どうしてくれるんだ! コンチクショウッ!!」
「も、もう、それぐらいにしといたほうがいいっしょ!」
「す、すいません! この男、万年酔っ払いなものでして……」
「あぁ!? 俺は酔ってなんかいねぇ!!」
「いいから、黙るっしょ!」
「あ、あはは……よ、酔ってる奴ほど、酔ってないっていうものですから……は、はは……」
う~ん、そんなにトディがスノーボードにハマっていることが気に入らないもんかね?
あんなに面白いのに……
あの面白さを理解するため、この通称酔っ払い君もやってみたらいいのにさ。
……いや、酔いが回って大変なことになっちゃうかな?
ま、とりあえず、俺の返事は決まっている……
「お前の要求に対して……俺の答えは『否』だ」
「なんだとぉっ!?」
「そもそも、プライベートをどう過ごすかなどトディの勝手だろうに……それを他人がとやかくいう権利などないはずだ」
「ほら、いったとおりっしょ!」
「ほ、本当に、そのとおりですよね~ほら、もう行こう!」
「おい、放せ! まだ俺の話は終わってねぇっ!!」
「いいから、来るっしょ!!」
「お騒がせしてどうもすいません! それでは、失礼しました~!!」
「放せこの野郎! チックショォォォ!!」
そういって、酔っ払い君は仲間たちに引きずられていったのだった。
また、これによって使用人たちが物騒なことを囁き合い始めた。
「……ああいうヤカラは処すべき?」
「……そうね、身の程知らずは思い知るべきよね?」
「……やるなら、いつでもゴーよ?」
「こらこら、今の俺は冒険者のアレス君なんだからな? あんまりムチャなマネはせんように、いいな?」
「……むぅ」
「アレス様がそうおっしゃるなら……」
「……ガマン」
もしかすると、原作アレス君が破滅することになったのは、こういう周りの過剰反応も影響していたりして?
しっかしあの酔っ払い君も、そんなに嫌ならトディに直接いえばいいだろうに……
「トディさんは……お仲間の理解を得られたらいいですね……」
なんて、ギドが遠い目をしながらポツリとつぶやいた。
程度の差こそあれギドも、俺という人間族に本気で味方するという、元の仲間であるマヌケ族に理解されないことをしているわけだからな……いくらか思うところがあるのかもしれない。
そんなことを思いつつ日も暮れかかってきたので、今日のところは領都へ戻ることにした。
……気を取り直して、夕食を楽しみに飛ばすぜ!
そして自室に戻り、シャワーを浴びて食堂へ向かう。
「アレス、領兵たちが生成する雪もだいぶよくなってきたそうだね?」
「はい、まだまだ訓練の余地はあるでしょうが……とりあえず今年の冬までは持ちこたえられそうです」
「うんうん! それを聞いて安心したよ。とはいえ、今のままだと維持でせいいっぱい……冬休みにまたアレスに大量に雪と氷を用意してもらわなきゃだね?」
「そのときになったら一度帰ってきますので、心配には及びません」
「フフッ、すまないねぇ」
「いえいえ、とんでもない。義母上や兄上たちはもちろん、屋敷のみんなに会いたいですからね」
「ありがとう、そういってもらえて嬉しいよ」
「……もう少ししたら、アレスは学園都市にまた行っちゃうんだものねぇ……寂しくなるわぁ……」
「私も、アレス君ともっと一緒に過ごしたいと思うし……使用人の子たちもきっと辛いでしょうね……」
夏休みに入る前は、ソエラルタウト家のみんなとこんなふうに打ち解けることができるなんて思ってもみなかった……
まあ、相変わらず親父殿派は俺に対して苦々しい感情を持っているようだけどね。
それはそれとして、また冬に帰ってくる理由ができてよかったといえるだろう。
それに新しい街も、いろいろと手伝ったこともあって、かなり親しみを感じているからね。
「それでアレス、街もある程度形になってきたし、そろそろお茶会を開くことにしたんだ」
「ほほう、それは素晴らしい」
「それで、まずは近隣の貴族を集めて極々小規模でおこなうつもりでさ、アレスが学園都市に出発する前には開くことができると思うんだけど……参加してくれるよね?」
「はい! 喜んで参加させていただきますとも!!」
よっしゃ! お姉さんパラダイスが決定だね!!
真っ白な雪が、お姉さんたちの美しさを一層引き立ててくれるに違いない……あぁ、楽しみだなぁ!!
そのとき、ふとルッカさんと目が合ったのだが……一応すまし顔をしているものの、その目からは苦笑いを感じ取れた。
ううむ、俺の心が読まれているねぇ……でも、仕方ないよね?
ただまあ、あんまりデレデレせんようにしなければな……クールだ、クールでいくぞ!!
そういえばクールで思い出したけど、さっきあの酔っ払い君はトディのことを「クールな男」といっていたよな……?
もしや、トディもクール道に身を置く男なのだろうか……それによって、俺たちは気が合ったのか?
なんにせよ、せっかく仲良くなったのだから、学園都市に行くまでのあいだにもう少し何かトディに伝えられたらいいよなって思う……特に魔力操作の素晴らしさとかね!!
そんなことを思いながら、夕食を終えたのだった。
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