第358話 いざ雪山!

「それにしても、あのときはあまり深く考えないでこの辺一帯を銀世界に変えてしまったが……今にして思えば、環境への影響が大きかった気がするな……」


 地属性魔法のフル活用で、木の根っこを引っこ抜き、土を生成して埋めるという作業を繰り返しているうちに、思わず独り言が漏れてしまった。

 それが聞こえたのだろう、メメカが返事をしてきた。


「アレス様の環境へ配慮するお志は大変立派なものだとは思いますが、今回に関してはそこまで心配せずともよろしいかと存じます」

「ほう、それはソエラルタウト家の都合としてか?」

「そうですね、確かにそういった意図があることも否定はしませんが……自然はそこまで弱くありません。もちろん、汚染物質をひたすら垂れ流すなど、環境に負荷をかけ続ければそのうち破壊もされていくのでしょうが……」

「なるほど、許容範囲内ならば自浄作用でなんとかなるということか」

「はい、そのため今回の開発も、そういった点にも気を付けながら計画を立てておりますので安心していただければと」

「そうか」


 そんなことをメメカと話していたら、ギドも加わってきた。


「アレス様、そもそもとしてこの程度の環境の変化に対応できない種であれば、既に淘汰されていることでしょう。そしてアレス様が日頃からおっしゃる魔力操作も、人間にしかできないものではなく、モンスターはもちろん動植物たちにだってできること……そう考えれば、雪や氷による寒さにも、彼らなりに魔力を上手く使って対処しているはずです」

「ギドさんのおっしゃるとおりですね。それに、こうして伐採している木だって、私たちが少し目を離しているうちに、すぐまた生えて強くたくましい姿を見せてきますし」

「いわれてみれば、そうなのだろうな」


 この辺は、俺の前世的感覚が影響しているのかもしれないね。

 そして俺が思っているよりも、この世界の自然は強いということなのだろう。

 まあ、だからといってあんまりムチャなことはしないほうがいいんだろうけどさ。

 こうしてときどき会話を挟みながら作業を続ける。

 そして作業によってあっちこっち踏まれたり、掘り起こされたりして雪がまばらになっていたため、再度魔法で雪を生成して降らせた。


「へぇ、これがアレス様の雪か」

「おおっ! サラッサラのパウダースノーだぁ!!」

「ふむふむ、これは滑り心地がよさそうだ」

「この光景を見ていると、故郷の雪を思い出すわねぇ……」

「確かになぁ……」

「俺は毎年冬に長期休暇を取って北部に行っていたんだが、今年はいらなそうだ」

「こんな雪を……オレも魔法で降らせられるようになりたいな……」


 そんなふうに周囲に集まった作業員たちの感想の声を聞きながら、ついに……!


「リフトなども必要でしょうから完全にできあがったとはいえませんが、ハイクアップでならスキーやスノーボードをできそうですね」

「おおっ!」

「リフトの設置作業はもう少し先になってしまいますが、この状態でよろしければスノーボードをお楽しみいただいても結構ですよ」

「マジか! いよっしゃぁ~!!」

「よかったですね、アレス様」

「おう!!」


 魔法を使えば、雪山に登る手段はいくらでもある。

 だから俺個人としては、別にリフトはあってもなくても正直どっちでもいい。

 つまり、これでようやく念願のスノーボードができるということだ! やったね!!


「アレス様、夕方までまだ時間もありますし、さっそくスノーボードをされてみてはいかがですか?」

「おっ、それは名案だ! ……あ、でも待てよ、俺ひとりっていうのはちょっと悪い気がするな……」

「それでは、この中で板を用意できる者はご一緒させていただいてもよろしいですか?」

「おう、それは大歓迎だ!」

「みなさん、お聞きのとおりです」


 最初ということでみんな遠慮していたのだろうが、この言葉を受けて周囲から大歓声が上がる。

 やっぱりね、ようやく滑れる状態になったんだし、みんなもやりたかったんだね!

 というわけで、今回の雪山整備に参加した全員がそれぞれスキーとスノーボードで好みのほうを楽しむことになった。

 ……そう、全員だ。

 まあ、もともと好きな奴が今回の作業に集まってたってことなんだろうね。

 そんなことを思いつつ、いざ雪山!

 魔法でヒョイっとしてもよかったんだけど、あえてダイダイ君を担いで雪山を登った。

 ……なんというか、おニューのスノーボードを見せびらかしたかったって気持ちもあったからね。

 そんなことを思いつつ登り終え、滑り始める。

 一応、ボードに乗るという感覚はフウジュ君で慣れているつもりではあったが、やはり乗り心地は違うものだった。

 そして、転びそうになるたび風属性の魔法でクッションを展開し、ガチ転びは防ぐ。

 そんな俺を見かねたのか、今回共に雪山の整備を担当した1人のイケメンがスノーボードの乗り方を教えてくれた。

 しかも、その教え方は丁寧で分かりやすく、文句なしに完璧だった。

 これはいわゆる、インストラクターってやつかな?

 そんなイケメンのおかげで、領都に帰る頃には俺の滑りもだいぶサマになっていたように思う。

 フフッ、明日はもっと上手く滑れるようになっていることだろう! 楽しみだね!!

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