第357話 雪山の整備
「ギドよ、さっそく行くとするか!」
「かしこまりました」
本日地の日、先ほど朝食を終えて、これから開発地へ向かうところだ。
というわけでフウジュ君、今日もよろしくな!
「ふむ、この辺はもう路盤工事の最終段階といったところか」
「どうやらそのようですね」
あの粘土と砂利を混ぜた上層路盤が出来上がれば、ようやく普段俺たちが目にする石畳のような表層工事に取り掛かれるわけか。
そして、領都付近でこれぐらいということは、開発地付近だとまだ砕石の荒い層の途中か、進んでたとしても中ぐらいの層を作るって段階かな?
まあ、どちらにせよもうしばらくすれば道路工事も完成だろう。
というわけで工兵たちよ、頑張ってくれい!
そんな思いを込めて、たまたま空を見上げて俺が上空を飛んでることに気付いた工兵に手を振った。
それから昨日の夕食後の訓練や今日の朝練、そして今こうして眺める周囲の様子から、見送り的な護衛に出ていた騎士や魔法士たちが徐々に帰ってきているのだろう、少しずつ人数が増えてきている。
それはつまり、俺を学園都市からソエラルタウト領まで護衛してくれたお姉さんたちもそろそろ帰ってくるってことだ、楽しみだねぇ。
もし時間がありそうなら、スノーボードに誘ってみようかな?
よし、お姉さんたちがいつ帰ってきてもいいように雪山の整備をシッカリやっちゃうぞ!
「今日も気合いが入っているようですね」
「ああ、当然だ! とはいえ、お前はあんまり派手に魔法を使うことができんだろうから暇かもしれんな」
「いえいえ、私はこうしてアレス様のお側に控えていられるだけで満足ですよ。ですがそうですね、目立たない程度には雪山の整備もお手伝いさせていただきます」
「まあ、地形を大きく変えるようなのはヤバいだろうが、木を切ったり運んだりする程度なら大丈夫そうだな」
「ええ、おっしゃるとおりです」
といいつつ、ギドはときどき地味にさじ加減を間違えてそうなんだよな……
魔族の感覚的に「これぐらいは普通だと思った」みたいな?
だが、これまで誰にもバレずにソエラルタウト家に潜入できていたわけだし、たぶん上手くやれているのだろう。
いや、むしろアレス付き筆頭なのも仕えた長さだけじゃなく、いくらかの優秀さを見せているからこそって部分もあるかもしれない。
そんなことを思いつつ、開発地に到着した。
「ソエラルタウト領に雪がこんなに積もるとか、マジかよ……」
「やっぱり、あのウワサは本当だったんだ……」
「も少し俺っちにも見せておくれよ!」
「オイ! あんま押すんじゃねぇって!!」
「はーい、工事中で危ないから、あんまり近づかないでねー」
主に冒険者っぽい見た目の奴が集まってきてガヤガヤしている。
まあ、道路も完成していないし、ここまで来るにはそれなりの体力と……やっぱり戦闘力も必要だよね、何かと危なそうだもん。
そんな冒険者らしき彼らを、領兵たちが押しとどめているといった感じだ。
昨日スポーツ用品店の店員もチラッと話していたが、この様子だと「ソエラルタウト領に雪が!」ってウワサはある程度広まっているみたいだね。
これから客はもちろんとして、街に住んでくれる人もいてくれなきゃだろうからね、どんどんウワサを広めてくれたまえ!
「おはようございます、アレス様」
「おう、元気にやっとるようだな、感心感心」
俺が人々の様子を眺めているあいだに到着したことを知ったらしく、メメカが挨拶にやってきた。
ちなみに、メメカたちのような文系の開発担当者や、作業の割り当て場所が開発地付近の工兵は、こっちに拠点を築いて寝泊まりしているらしい。
まあ、極端に領都と離れているわけではないにしても、移動にいくらか時間がかかるだろうからね、中には馬ではなく徒歩の奴もいるみたいだし。
そういう移動時間を作業時間に充てたいってところだろうね。
「それでは、さっそく雪山の整備に入りましょうか」
「よっしゃ、任せとけ!」
「ふふっ、頼りにしております」
こうしてメメカが雪山整備の担当者を集めて、雪山に移動する。
というのも、山だから開発予定地の中でも多少奥になるんだよ。
また、集められた担当者たちは王国北部出身者が多いようだ。
そして北部出身じゃないとすれば、力自慢のナイスガイや魔法士たちといったところか。
フッ、俺も前世のことを考えれば北部出身者といえるかもしれないな。
とまあ、そんなことを考えているうちに雪山に到着。
さぁ~てと、いっちょ伐採マンに変身しちゃいましょうかね!
などと息巻いてみたものの、やはりメメカの指示どおり動いたほうが無難だろうからね、指示待ちマンを兼任させてもらう。
「アレス様、よろしければあの辺一帯の木を根本から切ってもらえますか?」
「ふむ、その切った木は建築資材に使うといったところかな?」
「はい、ご推察のとおりです」
というわけで、指示をいただいたので伐採マンは張り切って木を切っちゃいます!
唸れ! 俺のウインドカッター!!
てな感じで、次々と木を切り倒していき、ついでに加工しやすいように枝とかもカットしちゃう。
あ、この的当てっぽい感じ、なんとなく学園の前期末試験を思い出すねぇ。
「……ふぅ、こんなもんかな?」
「お見事です、アレス様」
「フッ、まあな」
そして切り倒した木を運ぶ係や、木の根っこを掘り起こす係などそれぞれ別れて作業に当たる。
そうして作業が進むうちに、少しずつ前世で見たゲレンデの姿に近づいていくようで、自然と頬が緩んでくる。
さあ、あともう少しだ。
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