第353話 ここは励みどころですね!

 道路工事の現場にやってきた。

 測量などは昨日のうちに、メメカの指示の下で工兵たちによっておこなわれている。

 そのため俺は、工兵たちが設置した目印に沿って地属性魔法で地面を締め固めればいい。


「それじゃあ、魔法を発動するぞ……もちろん安全には配慮するつもりだが、お前たちも気を付けてくれ」

「はい」


 というわけで、路床工事スタートだ!

 そして指示された目印に向けて、地面を地属性魔法でガッチガチに締め固める。

 そうして土を締め固めたことにより、2メートル近く掘り下げられた格好となるのだ。

 ちなみに道路の幅としては、前世でいうところの6車線(片側3車線)を想定されており、歩道なども含めた道路幅員が約50メートルで設計されている。


「み、見事だ……」

「この規模の魔法を一瞬で発動されてしまうとは……さすがアレス様」

「……よっしゃ! これなら路床としての強さも申し分ねぇです!!」

「ふむ、そうか」


 まあね、あらかじめ手本を見せてもらってイメージもつかめていたからさ。

 それに何より、こういった力押しの魔法は俺の得意分野だし。

 というわけで、工兵たちのチェックを無事通過したので、この調子で路床工事をやっていくこととなる。


「そして次は砕石だったか……この辺に生成すればいいか?」

「はい、頼んます!」


 この砕石についても、先に見本を見せてもらってどんな感じの石なのかイメージはできている。

 加えて普段からつららを使ったり、ソイルのおかげでストーンバレットが身近な魔法となったりしていたので、砕石も似たような要領で生成できるというものだ。

 よって、あとはどんどん生成していくのみ!

 また、いわゆる石畳と呼ばれるような表層に使われる立方体の石も生成する。

 こっちはキレイなサイコロ状にしなければならないので適当というわけにはいかず、ある程度イメージに気を使う。

 とはいえ、それでも問題なく生成できた。


「おお……これまた凄い……」

「なるほどな……メメカちゃんが持ってきた計画書の予定工期を見たときはなんの冗談かと思ったが……いまさらながらに納得したぜ」

「お前さんは自分の目で見たものしか信じんからのう」

「さて、石材はこんなもんかな?」

「はい、バッチリです!」

「じゃあ、ここはお前たちにあとを任せればいいんだな?」

「へい、任せてくだせぇ!」

「うむ、それでは次の地点に向かうとするか」

「こちらです、アレス様」


 こうして一つ目の地点の作業を終え、次の地点に移動する。

 そして今回は最初ということもあり、工兵たちに出来栄えを見てもらいながら作業をおこなっていたので、いくらか時間もかかった。

 ただ、それによってだいたいの要領はつかめたと思うので、次の地点からはもっとスピーディーに作業をおこなっていけるだろう。


「ふむ、今度はあの目印だな?」

「はい、そのとおりです」


 というわけで、俺と一緒に移動してきた工兵に確認をして、また同じように地属性魔法を行使する。

 以降は、開発地に辿り着くまで同じことの繰り返しだ。

 このことについて「飽きるんじゃないの?」って声も聞こえてきそうだ。

 しかしながら、そういったルーティンワーク的な作業に俺は苦手意識がない……どころか向いてる気さえするので、むしろ「どんと来い!」といえる。

 とかいっているうちに、この地点における俺の作業が終わった。


「さて、次の地点が俺を呼んでいる」

「あ、あれだけの魔法を何度も使って涼しい顔とは……それに、集中力も尋常じゃない……」

「いえいえ、アレス様ならそれぐらい当然のことですよ」

「そ、そうですか……この調子だと、アレス様の作業は今日中に終わってしまいそうだな……あとは俺たちの頑張り次第というわけか……」

「ここは励みどころですね!」

「ま、まあ、そうですね……ははは……」


 工兵と俺についてきたギドが後ろで軽い世間話をしている。

 あと、ギドは今回ほぼ見てるだけって感じだ。

 まあ、あんまり派手に魔法を行使して「あれ、なんでコイツこんなに魔法が使えるんだ?」ってなってもマズいからね。

 そうこうしているうちにお昼となった……と、腹内アレス君が空腹感を訴えることで教えてくれた。

 


「ここらで昼食としようか」

「やっと私の活躍の場が来たというわけですね!」

「よ、よかったですね、ギドさん」

「ええ、それはもう!」


 そうして、ウキウキとした態度で椅子やテーブルをマジックバッグから出すなど食事の準備を始めるギド。

 そして、この辺は平野部なので、場所としては正直どこでも問題ない。

 そんなことを思いながら椅子に座り、料理が並べられるのを待つ。


「お前も一緒に座れ」

「そんな、恐れ多い……」

「ここは屋敷じゃないんだから、そんなこと気にするな……それに、学園からこっちに移動するときだって既にメルヴァさんたちと一緒に食事をしたからな、お前が遠慮したところでいまさらというものだ」

「そ、そうですか……では、お言葉に甘えて……」

「うむ、それでいい、メシはみんなで食った方が美味いからな!」

「アレス様はこういう方なので」

「は、はあ……」


 こうして男3人で昼食をいただく。


「それで、もう半分ぐらいは終わったか?」

「そうですね、あと4割といったところでしょうか」

「ほう、ならば昼からもうひと頑張りだな!」

「はい! そしてアレス様のおかげで我々もかなり楽をさせてもらえました、誠に感謝いたします」

「まあ、自分の家のことでもあるしな、手伝うのは当然だ」


 そんなおしゃべりをしつつ食事を終え、午後からの道路工事を再開する。

 さあ、やるぞ!

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