悪役転生者は自由人～原作ゲームのシナリオを無視して行動したいと思います～

第336話 情報料が高くつきそうだ

「久しぶりだねぇ……といっても、僕はいつも君のことを見ているんだけどね！」

「あっそう……それで学園都市からここまでかなりの距離があったと思うんだが、ずっとついてきたというわけか？」

「フフフ、僕は君の同志であり大ファンだからね、いつだって僕は君のそばにいるのさ！」

「ウゼェ……せめて、お姉さんだったら、このウザさも軽減されるだろうに……」

「君がお望みなら、お姉さんに擬態することも可能だけどねぇ……でも僕は、君とは真の姿で逢いたいからね、そんなもったいないことはしないんだ」

「ますますウゼェ……その真の姿とやらもどうだかな？」

「アハハ、こればっかりは信じてもらうしかないねぇ」

「ま、どっちでもいいけどな……」

　それに、もし仮にこれが真の姿だったとしても、好きなように擬態できるというなら、真の姿などあってないようなものって気もするしな……

「とりあえず、前置きはそれぐらいでいいだろう……で、今回の目的はなんだ？」

「え～もうちょっと雑談を楽しんだっていいじゃないのさ～」

「……用がないなら、帰れ」

「まったく、アレス君はせっかちさんだなぁ～まあいいや……それで君は今、ソエラルタウト家の屋敷に紛れ込んでいる魔族さんを探しているんだよね？」

「ああ、そうだな」

「しかしながら、それもなかなかに難航を極めているって感じだよね？」

「……まあな」

「フフフ、そこでこの情報通である僕の出番ってわけさ！」

「……情報料が高くつきそうだ」

「なんのなんの、料金なんか取らないよ！　というより、既にそれ以上のものを君には魅せてもらっているからね!!　……それにさ、同じ導き手としてそういう水くさいことはいいっこなしだと僕は思うんだ」

「……何度もいうが、俺はその導き手とやらになった覚えはないんだがな」

「フフフ、君がどう思っていても構わないさ……君によって導かれている人がいる、それでじゅうぶんなのさ」

「あっそ……」

　どうあっても、コイツの導き手認定から外れることはできないのかもしれん……

　だからといって、俺がノーと回答し続けることに変わりはないがな。

「さて、焦らし過ぎもよくないからね、そろそろ魔族さんが誰なのかってことを教えちゃう！」

「ほう？」

「それは……」

「それは？」

「ジャジャーン！　ギド君でした～!!」

「……なッ!?　……おい、おいおいおい……ウソ……だろ……？」

「いやだなぁ、僕がそんなつまらないウソをつくわけないじゃないか」

　そんな……ギドが？

　いや、俺も最初はポジション的に疑っていたが、害意も感じなかったし、アイツに限ってそれはなさそうって判断したのに……

「それにしても、めちゃくちゃプライドの高い魔族さんが凄いよね、見下してる人間族なんかにあそこまで誠心誠意尽くしているフリをできちゃうんだからさぁ」

「フリだって……？　じゃあ、あの俺の内心の求めに応じてボケをかましてきたのも、なかなかいいにくいであろう諫言の数々も全部、俺に尽くしているフリだったっていうのか……？」

「そうに決まってるでしょ？　いやぁ、あのニコニコとした笑顔の下にいったいどれだけの屈辱感があったんだろうねぇ……それも『大儀のために！』って必死に歯を食いしばって堪えてたんだろうなぁ」

「アイツの笑顔も、演技……」

「演技じゃなかったらなんだっていうのさ……まあ、そうはいっても敵の……それも貴族の屋敷に紛れ込んで工作活動をするっていう難しいことをするんだから、それぐらいの根性が極まってないとできないってことも確かだよね……これは、君がこの前導いたソイル君を陥れようとしていた魔族さんにも同じことがいえるね」

　ソイルを陥れようとしていた……ああ、エリナ先生に始末されたって奴のことか。

「彼もランジグカンザ家の中で頑張ってたみたいだけど、最後のツメを誤った……といいたいところだけど、彼の場合は単純にアレス君がソイル君を見つけてしまったっていう不運のほうが強いかな？　ああ、でも、君が絶大な信頼を寄せているエリナ先生が上手いこと阻止していたかもしれないね」

「……エリナ先生なら当然だ」

「おお、エリナ先生の名前を聞いてちょっとだけ元気が取り戻せたみたいだね？」

「フン……まあな」

「多少は冷静になったみたいだからあえていうけど、ギド君のことを裏切り者だなんて思っちゃいけないよ？　彼の所属はあくまでも人魔敵対派の魔族……つまりは最初っから敵だったんだからさ」

「……チッ、お前の話なんか聞かなきゃよかったかもしれん」

　この前、スケルトンダンジョンで会ったときに聞いた話がありがたかっただけに、つい聞いてしまった……

「でもさ、それだとずっとソエラルタウト家に紛れ込んだ魔族を探す羽目になってたと思うよ？」

「……クッ」

「といいつつ……ギド君もまあまあポカをやらかしてたからなぁ、そのうち気付けたかもしれないけどね」

「ポカだと？」

「そうさ、所々で無駄に優秀だったでしょ？」

「アイツはアレス付きの使用人筆頭なんだ、それなりに優秀さは必要なことだろ」

「そうかもしれないけど、たかが一介の使用人ごときが君の隠形の魔法を見破れるわけないでしょ」

「いや、アイツは自己研鑽に励む男な上、魔力交流で俺の魔力の形も理解していたんだ、可能性はあるだろ」

「う～ん、君は頑張る人を肯定的に見るクセがあるからなぁ……まあ、そこがいいところでもあるんだけどさ……」

　けなされているような、褒められているような……って感じ。

　これは無自覚系の異世界転生の先輩諸兄も同じような感覚だったんだろうなぁ。

「まあいい、分かった……とにかくギドは魔族だった、そういうことだな？」

「そのとおり、どう？　なかなか興味深い情報だったでしょ？」

「……チッ……まあまあだな」

「フフフ、それは重畳……それじゃあ、僕はこの辺で……またね！」

　そういってうさんくさい導き手は去っていった。

　いうことだけいって……相変わらず神出鬼没な奴だ。