第326話 お仕えしてどれだけになるとお思いですか?
「お悩みのようですね?」
「ああ、まあな……」
朝食を終え、自室に戻り休憩しているところで、義母上からどのような話をされるのかアレコレ考えていたのだ。
「やはり、リューネ様との会話の内容が気になりますか?」
「そうだな……昨日お前から指摘されたことか……後継者問題か……いろいろ思い当たることがあるからな……」
「ほかにも、昨夜のイタズラについてが気がかりですものね?」
「……気付いていたのか?」
ウソだろ……俺なりに寝室の偽装工作に気をつけたし、隠形の魔法で姿も隠していたんだぞ?
「私はアレス様の部屋に危険物が仕掛けられていないかなど、毎日隅々まで点検していますからね……そうした経験から、寝室のちょっとした違和感なんかにも敏感に反応するようになっています」
「な、なるほど……」
魔纏と障壁魔法で防御にある程度の自信があったこともあって、寝室の鍵をかけていなかったけど……やっぱかけたほうがいいのかな?
あ、でも、ギドなら鍵を持ってそうだし、あんまり意味はないかな?
「それにアレス様が、いわゆるソレス様派と呼ばれるソレス様付きの使用人やソレス様に信服している騎士や魔法士、その他一般兵を警戒しているのも理解しているつもりです。そして昨日は、あの騎士に注意を向けていたのも感じていましたからね、彼を追っているのだろうと容易に想像がつきましたよ」
「むぅ、そうだったのか……それはほかの奴も気付いているのか?」
「そうですね……アレス様付きの使用人たちは、アレス様とソレス様のご関係をそれなりに理解はしていますので、アレス様がソレス様派の方々にも良い感情を持っていないだろうことは想像しております。ですが、アレス様が昨日の騎士に注意を向けていたこと自体は気付いていなかったでしょう」
「ふむ……なかなかよく見ているものだな」
「一応、私なりにアレス様付き筆頭の自負がありますからね、それぐらいの注意深さは持ち合わせているつもりです」
「ほほう、実に頼もしい筆頭殿だ……そういえば、俺は隠形の魔法で姿も隠していたのだが、それにも気付いていたのか?」
「アレス様……私がアレス様の側にお仕えしてどれだけになるとお思いですか? 少々不遜な物言いになりますが、この世で私が一番アレス様の魔力の形を理解しているつもりですからね、いくら姿を隠していようとも、かすかにでも感じる魔力でアレス様を見つけられる自信がありますよ」
「えぇ……マジかよ……」
「ええ、マジです……それに、アレス様はもうお忘れになっているかもしれませんが、昔イタズラをして隠れたアレス様を何度も探してきたのは、この私ですよ? それもあって、アレス様を探すことにかけてはベテランの域に達しています」
ああ、確かに原作アレス君の記憶にあるわ。
クローゼットに隠れたとき、体の肉が引っかかって出られなくなっていたところをギドに救出されたこととかね……いろいろある。
「……ああ、思い出した……お前のいうとおり、何度かそのようなことがあったな……」
「そうですか、覚えてくださっていましたか……嬉しいものですね」
「とりあえず、俺の隠形の魔法が完璧に至るためには、少なくともお前にバレないようにしなければならんということだな……」
「フフフ、そうですね……精進なさいませ」
「ああ、そのうちお前を驚かせてやるよ!」
「楽しみにしております……ああ、それで話が大きく脱線してしまいましたが、おそらくリューネ様は昨日のことについてはご存じないと思われますので、それについては心配なされずとも良いでしょう」
「……そうなのか?」
「はい、あのときは私も周囲を確認しておりますし、その後の彼らについても様子を見てみましたが、気絶したことすら覚えていないようでした」
「そうか……しかしながら、そのことについての説教をしなくていいのか?」
「……説教をして欲しいのですか?」
「いや、できればなしの方向で頼みたいのだが……」
「先ほどはイタズラと申しましたが……あれは何か目的があってのことで、仮に説教をしたとしてもやめられないのでしょう?」
「まあ、そうだな……」
「ならば、説教などしませんよ……その代わり、事後のフォローに専念するだけです」
「そうか、すまんな……」
「構いません、それが従者の務めなのですから」
なんだよコイツ……メッチャええ奴やんけ!
えーこー! ギドはメッチャええ子!!
……思わず、朝のアレがうつってしまったな。
まあ、これでとりあえず、義母上からクソ親父派狩りを咎められることもなさそうで、一安心といったところか。
なら、どんな話をされるのかってことだが、先日お茶をしたときもそこまで深刻なものじゃなかったし、今回も世間話的なものかもしれんね。
なんてことを思いつつギドとの会話も一段落したところで、訓練場に移動して昼まで鍛錬を積む。
それが終わったら、自室でシャワーを浴びるなどして身嗜みを整える。
そうして昼食を済ませたら、義母上と庭園に移動してお茶の時間だ。
さあ、どんな話でも、どんとこい!
なんて思っていたところ……
「これからアレスと大事な話をしたいから、少し外してくれるかしら?」
そういって、義母上はついてきていたルッカさんやギドに離れるよう告げ、ガゼボにも防音等を含めた認識阻害の魔法を展開した。
「うん、これぐらいでいいかしらね……」
なんだろう……思ったより深刻な話をされそうだぞ……
「さて、それじゃあお話をしましょうか……実は、一つ気になることがあってね……」
「は、はい……なんでしょうか?」
「……あなたは……誰なの?」
「……なッ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます