第318話 うちは武系貴族だからさ……
「しっかりと間引きをしているので、ソエラルタウト領でオークより強いモンスターを探すには、かなり森の奥まで行く必要がありますね」
「なるほど……その辺は学園都市と似ているな」
「そうですね……辺境などで領地を広げようとしているか、領内の森を切り開こうとでもしていなければ、力のある武系貴族が治めている領地はこのようにどこも似たような環境になっていると思います」
「力のある……ね」
「はい、残念ながら武系を標榜していても力のない、もしくは衰えてしまった貴族家もありますからね……そういった領地は間引きが行き届かず、街の近くでも強いモンスターと遭遇することになるでしょう」
「ということは、近場で強いモンスターに会いたければ、あえてザコ貴族の領地に行ってみるのもアリというわけか」
「その点だけで考えれば、そうかもしれませんが……そういった領地はなんといいますか……場合によっては人心が荒廃している可能性もありますので……私としては、アレス様にそういった領地には近寄ってもらいたくないですね」
「そうか……まあ、強いモンスターに会いたいだけなら、森の奥を目指したほうが手っ取り早そうだしな」
「それについても、アレス様のお力なら心配ないと信じてはおりますが……くれぐれもお気を付けくださいね?」
「ああ、もちろんだ!」
サナとノムルが元気よくモンスターを狩りまわっているのを眺めながら、こんなことをギドを語り合っていた。
たぶんあの女子2人、モンスター討伐者としてのスイッチが入ってしまったんだろうね……まあ、よくあることだな。
「サナ、ノムル……そろそろ屋敷に帰りますよ!」
夕食の時間が近づいてきたということで、それを女子2人に伝えるギド。
「ようやく気分がノッてきたところだったのに……仕方ない」
「いっや~久しぶりだったからね~ついつい、燃えちゃった!」
なんていいながら、先行していた女子2人は戻ってきた。
そして、ここまで注意深く辺りを探っていたが、結局マヌケ族らしき存在のアクションもなかった……残念。
まあ、屋敷に帰るまで周囲を魔力探知で探るつもりではあるが……いや、帰ってからも探ることは探るけどさ。
それから、屋敷までの道中で、モンスター素材の分配も話し合った。
といいつつ、分配を話し合ったというより、使用人たちが「私たちは、ついてきただけなので」といって俺に譲ろうとしてくるのを公平に分けることにしただけなんだけどね。
「よし、これを機会に休みの日はモンスター狩りもしよっかな~?」
「賛成……そしてみんなも始めるかもしれない」
「……あまりムチャなことはしないように、いいですか?」
「わかってるってば!」
「引き際も分からないようなら、アレス様付きの使用人失格となるだけ」
この先、アレス付きの使用人となるためには、まず武力が求められるって感じになりそうだ。
でもまあ、うちは武系貴族だからね、問題なかろう。
そしてそのうち、一介のメイドに過ぎないはずなのに、他家の騎士や魔法士より強いって状況に発展するかもしれない。
そんな状況……やべぇ、ワクワクしてきた。
ちなみに、アレス付きの使用人のうち、ガチ文系貴族出身以外はだいたいみんな学生時代に冒険者登録をしていたみたいなので、モンスター狩りも割と抵抗なく再開できそうって感じらしい。
とまあ、こんな感じでおしゃべりをしながら屋敷に戻るのだった。
その後は、部屋でお風呂タイムを挟んで夕食へ。
「今日は楽しめたかしら?」
「はい、それはもう、なかなかに充実した時間を過ごせました!」
「そう、それはよかったわ」
義母上の慈愛のこもった眼差しに心が満たされていく。
あったけぇ……夏なのに……あったけぇ。
……こんなステキな女性が、なぜあんなクソ親父と結婚しているのか不思議でならんよ、まったく!
「アレスの周りの使用人たちも楽しそうだし……僕たちに付いてくれている使用人たちにも、訓練に取り組んでもらったらいいかもしれないね?」
「……まずは希望者だけにしたほうがいいと思うわ」
「まあ、それもそうか……でも、アレスたちを見てたら、すぐに希望者だらけになる気もするけどね」
「……確かに、それは否定しないわ」
あれ、もしかしてソエラルタウト家が脳筋一直線になりかけてる?
いやまあ、うちは武系貴族だからさ……
そして兄上のことだ、上手く文武両道でバランスよく領地経営をしていってくれるはずだ、信じよう。
それに、冷静な判断力を持ち合わせていそうなマイネ義姉上もついているんだ、心配ないはず。
というわけで、こうして夕食のだんらんを楽しんだ。
その後は、昨日と同じように訓練場で模擬戦をする。
ただし、今日は兄上が不参加だ……寂しいね。
そのため、アレス付きの使用人たちと模擬戦をすることになった。
とはいえ、彼らの実力だと、俺が今まで経験してきた兄上やお姉さんたち、それから学園での模擬戦レベルには到達していない。
それでどっちかっていうと、稽古を付けてやるっていう感じになってしまった。
だが、それが無駄だったというわけではなく、そこからいろいろと学ぶこともあったので、じゅうぶん満足している。
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