第294話 とっても大事な
「……ふぅむ……もしかしてここは天国?」
「おはようございます、アレス様」
「………………ほぁっ!?」
うっわ! ビックリしたぁ!!
眠りから覚めたものの、まだ頭がぼんやりしていたところで、目の前にルッカさんのお澄まし顔があった。
ベッド脇から俺の顔を覗き込んでいたようだが……なんで?
「よく眠れましたか?」
「……あ、ああ」
そしてルッカさんは、何事もなかったような態度である。
昨日からずっとこんな調子で振り回されてばっかりな気がするが、気のせいだろうか?
とりあえず、野営研修前に魔纏を展開したまま寝る練習を始めておいてよかったかもしれない。
あれから日々練習を続けた結果、今では一晩中魔纏を展開できるようになっていたからね。
もし魔纏を展開していなかったら、メッチャ驚いてヤバいぐらい叫んでいたかもしれない。
そういった意味でも魔纏は俺の心を安定させてくれる、とっても大事な魔法といえるだろう。
だから、ありがとう魔纏! これからもよろしくな!!
そんなことを考えつつ、着替えるからとルッカさんに外してもらう。
ここでも「お着替えを手伝います」とかいわれたら、かなわんからな。
そうして着替えも済んだところで、ホテルの敷地内に整備されている庭園へ出てみることに。
そこに、ルッカさんと護衛のお姉さん4人がついてくる。
ちなみに、御者と護衛のお姉さん2人は部屋で朝食の準備中である。
とまあ、そんな感じで庭園に出て、まずは様子見がてら散策してみる。
何気なく植えられてる花を眺めたりしながら、ランニングとレミリネ流剣術の練習、どちらがここでするには向いてそうかを考える。
その結果、走れなくはないが、剣を振るほうがよさそうって感じがしたので、レミリネ流剣術の練習をすることにした。
「剣術の練習をするから、少し離れてくれ」
「そうですか」
そしてルッカさんや護衛のお姉さんがじゅうぶん距離を空けたところで、マジックバッグからミキオ君を出現させて構える。
この清々しい朝の空気に、きっとミキオ君もゴキゲンなことだろう。
そんなミキオ君が俺の体の一部となったかのように意識の統一を図る。
そうしてレミリネ師匠の動きを思い浮かべながら、一振り一振り丁寧に振っていく。
「ほう、アレス様の剣術……なかなか素晴らしいじゃないか」
「でも先輩、あの動きは始めて見る型じゃありません?」
「確かに! 私も初めて見るっす!!」
「そうねぇ……古流剣術に似た感じのはあったと思うけど、それとも違うみたいなのよねぇ」
護衛のお姉さんたちが俺の剣術について感想を述べ合っているのが聞こえてくる。
ただ、レミリネ師匠の存在は愚王によって歴史の闇に隠されたわけだからな、護衛のお姉さんたちが知らないのも無理はないかもしれない。
だが、これから俺がレミリネ師匠の名をもう一度世に広めていくのだ。
よって、お姉さんたちも知っていくことになるだろう、今日はその第一歩さ。
なんて思いつつ、約1時間の剣術練習を終えた。
そこで部屋に戻る際、今回の護衛任務でリーダーを務めているらしいお姉さんが話しかけてきた。
おそらく、原作アレス君のままだったら必要最低限しか話そうとしなかっただろうが、昨日一日俺と接してみて話しかけても大丈夫そうって思ったんだろう。
「アレス様、今おこなっていた剣術は学園で習ったものだろうか?」
「いや、学園ではない……ダンジョンだ」
「……ダンジョン? ええと、それはダンジョンでたまたま出会った、剣術に優れる冒険者に教えてもらったということかな?」
まあ、そう思うのが普通なんだろうね。
俺も逆の立場なら、最初にそう思っただろうし。
「……スケルトンナイトですね」
そこでルッカさんが正解をズバリ。
なるほど、ルッカさんはどうやら俺が学園でどう過ごしていたのかを多少は知っているようだね。
「ほう……スケルトンナイトとな?」
「えっと……意味がわかんないです」
「私も、同じくっす!」
「あらあら……剣術を教えるだなんて、スケルトンナイトにそんな器用なことができたとはねぇ」
基本的にモンスターは敵対するものと考えられているだろうからね、護衛のお姉さんたちの反応は当然だろう。
「フッ、レミリネ師匠……ああ、剣術を教えてくれたスケルトンナイトの生前の名前だが、彼女は特別だからな!」
「なるほど、特別か……」
「や、やっぱりわかんない……」
「それは凄いっす!」
「レミリネ……はて、そんな騎士の名前は聞いた記憶がないわねぇ……アレス様、もしよろしかったら、その方のことをもう少し教えてくださらないかしら?」
「ええ、いくらでも!」
レミリネ師匠の話に食いついてきてくれるとは、嬉しいもんだね。
とか話しているうちに部屋に着いてしまった。
「その前に一度シャワーを浴びるので、レミリネ師匠の話はそれからにしましょう!」
「そうですねぇ、ソエラルタウト領までまだまだ馬車の旅も長いですから、そこでゆっくりお話を聞かせてくださいな」
「はい、喜んで!」
こうしてレミリネ師匠の話をすることを約束してから、シャワーを浴びに向かう。
その際、常に澄ましているため分かりづらいが、ルッカさんの顔が軽くほころんでいるのが目に入った。
……あっ! レミリネ師匠の話に興味を持ってもらったことでテンションが上がって、ソエラルタウト家モードの維持のことをすっかり忘れてた!!
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