第286話 変な話、それだけは信じられる!!
朝練とシャワーを終え、男子寮の食堂にて朝食をいただく。
フッ、この優雅なおひとり様ライフもいいもんだね。
そうして今日も、おしゃべりな小僧どもの会話が耳に入ってくる。
「魔力操作狂いたちのパーティーがいっつも夕食後の時間帯に模擬戦をしてるのはお前らも知ってるだろ?」
「はい、もちろんです」
「試験前はよく見てたよね」
「そこで昨日……驚きのことが起こったんだ」
「驚きのことですか?」
「またカップルでもできたとか?」
「いや、カップルはできていないが……なんと、その模擬戦にヴィーンのパーティーが加わりだしたんだ」
「ヴィーンのパーティーということは……ソイルの復帰劇があったばかりですよね?」
「へえ、よくやるね」
「まあ、ソイルと魔力操作狂いたちの関係が悪化してたわけじゃないみたいだから、そこまでおかしな話でもないとは思うが……」
「私なら……少しばかり気が引けてしまいそうです」
「そう考えると、ソイルってなかなかのメンタル強者?」
ソイルがメンタル強者って……アイツは軟弱者克服講座の受講生だったんだぞ?
といいつつ俺も、しばらくはソイルと模擬戦をすることはないだろうなっていう気はしなくもなかったけどさ。
「それで、模擬戦のことそれ自体はいいとして……これは、ヴィーンが魔力操作狂い派に入ったって考えられないか?」
「あっ!?」
「えっと……魔力操作狂い派って何?」
「俺の感覚的にあのパーティーの中心は魔力操作狂いだったから、適当に今そうやって名付けてみた」
「彼が一番の実力者なのは確かですから、間違ってはいないと思います。でもまあ、呼び名は置いておくとして……なるほど、ヴィーン君のパーティーが傘下に入ったとなれば、これから派閥として存在感が強まっていきそうですね」
「ふぅん、魔力操作狂い派かぁ……加入条件は魔力操作かな?」
「マジでありそう……」
「確かに……」
まあね、真面目に魔力操作に取り組むような人と仲間になりたいっていう気持ちは当然ながらあると思うよ?
それと、この前ファティマが俺の野心がどうとかってウワサがあるようなことをいってたっけ?
実に面倒な話だが、客観的にはそういう見方もできてしまうわけか……
あ、もしかすると実家に帰ったらそういう話をされるかもしれないな。
……義母上、私は兄上の立場を脅かすつもりなどありませんからね! 心配をしないでくださいよ!!
というか、兄上がソエラルタウト家を継いでくれないと、俺の自由がなくなるし……それだけは嫌だ。
といいつつ、あのクソ親父が俺を後継者に指名することなど絶対にあり得ないけどな!
変な話、それだけは信じられる!!
フッ、これこそが原作知識というわけだ。
とまあ、小僧どもの会話からソエラルタウト家の後継者問題にまで意識を向けさせられてしまったね。
しっかし、「魔力操作狂い派」か……その呼び名はあまりよくないな。
家格的には公爵家のロイター派か、もしくはパーティーリーダー的にファティマ派って呼んでもらいたいところだ。
ただ、この呼び方だと……なんというか、ファンみたいだね。
そんなことを思いながら、朝食の時間は過ぎていった。
そして朝食後は、お待ちかねのエリナ先生の授業!
とはいえ、前期試験も終わり、明日は前期の終業式だからね、そこまでガッチリとした授業というわけではない。
前期の大まかな振り返りと、夏休み中にどう過ごすべきかっていう話がメインとなっている。
その中には、しっかりと魔力操作に取り組みましょうっていう話もされている。
まあ、エリナ先生も魔力操作推奨派だからね、当然さ。
……あ、この「魔力操作推奨派」っていう呼び名はいいな。
よし、機会があれば、そう名乗っておくとしよう
さて、広まってくれるかな?
こうして、前期最後の授業が終わりを告げたのだった。
それじゃあ授業が終わったということで、エリナ先生に相談しに行くとするか。
というわけで、教室を出て廊下を歩いているエリナ先生を呼び止める。
「エリナ先生」
「あらアレス君……とりあえず、研究室に行きましょうか。簡単なものだけれど、お昼も作るわね」
「え、あ、はい! ありがとうございます!!」
これまでにも何度か同じような流れがあったからか、俺が用件を述べる前にエリナ先生の研究室へ行くことになった。
……まあ、正直なところ、そういう期待が少なからずあったのも事実だけどね。
憧れのエリナ先生の手料理を食べる喜び! これに勝るものなどない!!
そんな幸せな気持ちに浸りながら、エリナ先生の研究室へ移動した。
「それじゃあ、ささっと作っちゃうから、ちょっと待っててね」
「はいっ!」
さて、今日は何を作ってくれるのかな?
そうワクワクしながら待つことしばし、ついにできあがったようだ。
「お待たせ、今日はオークカツサンドにしてみたわ」
「おお! やったぁ!!」
オーク(豚)肉好きな俺として、これは嬉しい。
「それじゃあ、食べましょうか」
「はいっ! いただきます!!」
そうして、オークカツサンドをひとかじりする。
「美味しいっ!!」
「ふふっ、それはよかったわ」
風味豊かなオーク肉がサックサクの衣に包まれている。
もうね、このオークカツの時点でいうことなし。
そんなオークカツに塗ってある甘辛いソースが、これまた食欲をそそるのだ。
それがふんわりとしたパンに挟まれ、味が引きたれられている。
……フッ、今日この瞬間、俺のカツサンドランキングは大きく変動した。
エリナ先生が作ったオークカツサンド、これこそがナンバーワン!!
そしてもちろん、腹内アレス君も大喜びである。
こうした素晴らしいお昼の時間を過ごしたところで、次は相談の時間である。
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