第280話 今日の昼も一発かましたらしいぜ?
お昼を食べ終わり、自室に戻って来た。
さて、今日は何をしようかなってところだが、まずは勉強だな。
というのも今回の前期試験、もともと学科は魔法や運動に比べたら微妙だろうと思っていた。
そんな中で432点というのは、前世的感覚では割とイケてるような気もしていた。
しかしながら順位で見れば、魔法と運動がそれぞれ1位なところで、学科は16位……これはちょっと低いかなって思っちゃう。
まあ、そんなわけで、もう少し勉強に時間を割いておこうかなって感じだね。
そうして勉強を始めてしばらく経ったとき、ドアからノック音が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼するよ」
男子寮の管理人さんだった。
なんの用かな?
「先ほど、ご実家から使者の方がいらしてね、明日の午後2時に面会希望とのことだけど、空いているかい?」
「午後2時ですか……はい、空いてます」
「それはよかった、それじゃあ外来用談話室の予約を取っておくね。何号室を使うことになるかは明日、改めて教えるよ」
「はい、分かりました」
「それと、もし急用が入ったりしたら管理人室に知らせに来てくれるかな? そのとき、ほかに空いてる時間を教えてくれれば、こちらで使者の方に伝えておくからさ」
「はい、その場合はよろしくお願いします」
「うん、話はそれだけだよ、それじゃあ、お邪魔したね」
「いえ、連絡いただき、ありがとうございます」
こうして管理人さんは去って行った。
しっかし、ソエラルタウト家からの使者とはね……
まあ、これから夏休みが始まるわけだから、それ絡みの話かな?
もしかして、「部屋の荷物とか全部処分したし、お前が帰ってくる場所なんかねぇから!!」って感じだったりして。
いや、別に俺としてはそれでもいいんだけどね……そもそも帰る気もなかったし。
だって、ソエラルタウト家にアレス君の味方なんかいないからさ。
一応、義母上は原作アレス君にいくらか愛情を持とうとしてたっぽいけど、それもクソ親父が阻んだみたいだからなぁ。
ま! とりあえず、今ここでいくら考えたところで分からんね。
明日になって、話を聞いてから判断ってところだろう。
ただ、まったく気にならないっていうのもウソになるから、そこは仕方ない……
よし、こういうときは体を動かすに限る!
レミリネ流剣術の練習だ!!
余計なことは頭から放り出して、一心に剣を振るのみ!!
というわけで、運動場へ移動。
「ねえ、もっと早く~! じゃないと、遊びに行けないよ~」
「……100周で……終わっていい……とはいった……けどよ」
「ペース……上げ過ぎ……だよね」
「フン……なんの……これしき」
おお、賑やかな4人組もまだ走っとるようだね、いい感じじゃないか!
それにしてもサボりたがり君、ホントに元気だな。
ま、ほかの3人も頑張りたまえよ!
なんて思いつつ、俺もレミリネ流剣術に集中だ!
神経を研ぎ澄ませろ!!
こうして、腹内アレス君に夕食の時間を知らされるまで、一心不乱に剣を振り続けたわけだ。
その後、運動場に備え付けのシャワーを浴び、男子寮の食堂へ向かう。
そして食堂では、小僧どもによる前期試験の総合1位議論がおこなわれていた。
まあね、最強議論とかそういうの、男子は好きだもんね。
ちなみに、この学園は総合順位というのは出さないみたい。
正確には、昔は出してたらしいけど、いろいろ揉めて出さなくなったらしい。
……文系と武系で重視する科目が違うとか、いろいろあるからね。
「やっぱり、学科・魔法・運動の順位を平均すればさ、ファティマちゃんが一番になるわけじゃん? だから、総合1位はファティマちゃんだよ、決まり!!」
「まあ、俺としてもファティマちゃんが一番ってことには異論はねえ」
「だけど、王女殿下はもったいなかったよね? せっかく学科で1位、魔法でも7位だったんだからさ」
「そうだなあ、運動だって取り巻きに合わせて順位を落としてなかったら1位を取れてただろうし……そしたら、王女殿下が総合1位と考えてもおかしくなかったわけだ」
「でも、そんな王女殿下だからこそ、みんなが慕うわけじゃん?」
「だね!」
なるほど、やっぱ総合的にはファティマが一歩リードって感じになるわけか。
そして、王女殿下は原作ゲームの設定上全科目1位だったわけだし、ポテンシャル的にはそうだろうなって気もする。
「いろいろいってるけどさ、でもやっぱり魔力操作狂いの魔法の点数……このインパクトには勝てなくない?」
「確かに……でも、魔力操作狂いは……なんていうか、その……最狂って感じ?」
「ははっ! それはいえてる~」
ほう、「最狂」か……それもアリっちゃアリだな。
「そういえば、その最狂だけど……今日の昼も一発かましたらしいぜ?」
「かましたって何を?」
「あ、それ知ってる、というかその場所にいたんだけど……ヴィーンたちに『魔力操作に取り組め!』って吠えてた」
「なんでまた、そんなことを?」
「えっと、ソイルがヴィーンのパーティーに戻ったらしくて……そのときトーリグとハソッドがへこんでたみたいだから、たぶん元気づけようとしてたっぽい」
「元気づけで魔力操作とは、まさにって感じがしますねぇ」
「でも、トーリグとハソッドはそれで元気が出たみたいだから、まったくの無駄ってわけでもなさそうだったよ?」
「ふぅん? ま、アイツらって割と単純だからな」
そうなんだ……ただ、単純だったとしても、下手に引きずるよりはマシな気もするが、どうだろう?
「しっかし、急激に力を見せ始めたソイルがヴィーンのパーティーに戻ったとなると……あのパーティーの戦力は大幅アップだね」
「正直、今回のことでヴィーンが一番得したんじゃねぇか?」
「それはありますねぇ……」
「あ~あ、俺んとこのパーティーも誰か、すんげぇ実力を発揮してくんねぇかなぁ~?」
「……自分で発揮すれば?」
「……できたら苦労しねぇよ」
「そこで、『魔力操作だ!』ってあの人ならいうんじゃない?」
「ははっ! 違ぇねぇ」
うん、そのとおりだ、だから君らもやったらいいと思うよ?
とまあ、こんな感じで小僧どものウワサ話に耳を傾けながらの夕食だったわけだが……ソイルは今頃ヴィーンたちと一緒かな。
フッ、今度こそ仲良くやれよな!
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