第10章 家族
第279話 期待できそうな少年たち
「私とファティマちゃんはこれからお昼の女子会だから、またあとでね!」
「そういうことよ、ではまた」
こうして、女子2人は女子寮の食堂へ向かって行った。
「私たちも約束があるのでな」
「僕はロイター様の付き添いなんですけどね」
「……あちらはお前でも構わんようであったが?」
「うっ……あ、あはは……いやだなぁ、あくまでも一番はロイター様ですよ」
「さて、どうだろうな?」
「お前らも、毎日ご苦労なことだな……とりあえず、あまり相手を待たせるのも悪いだろうから早く行ってやれ」
「確かに、それじゃあな」
「それでは、失礼します」
こうして、男子2人は中央棟の食堂へ向かって行った。
これによって、俺はソロ活動となったわけだ。
というわけで、男子寮の食堂へ向かう。
そこでは、既に前期試験の順位を見て来たのだろう、小僧どもが順位についてアレコレと会話に花を咲かせている。
お、あそこにいるのは将来は走りのスペシャリスト候補生の賑やかな4人組じゃないか。
なんとなく、あの4人組に面白味を感じているので近くに座ってみる。
そして食事をしていると会話が聞こえてくる。
「学科と魔法はそこそこだったけど、運動で24位を取れたのは最高だったな!」
「そうだね、Bクラスはもちろん、Aクラスの人にも何人かには勝てたんじゃない?」
「ああ、こうして努力が実るというのは気分のいいものだな」
「よし! 結果を残せたんだから満足でしょ!? だからもう走らなくていいよね!!」
「おいおい、何いってんだ……これが『始まり』だろ?」
「僕たち、きっと運動能力に才能あるよ! それを伸ばさないのはもったいないでしょ?」
「それに、領地にモンスターの大群が攻め込んできた場合なんかだと、瞬間的な強さだけでなく体力がものをいうだろうしな……というわけで、早速」
「やっぱりなのぉ~!? い~や~だ~! 遊びにいきた~い~!!」
「はいはい、走ったあとな」
「どうせだから、走るのを遊びだと思えばいいじゃん」
「そのとおりだ、いいことをいう」
「全然、よくな~い~!!」
そして今日も元気に引きずられていくクラス落ち覚悟……改め、サボりたがり君。
また、運動の試験で彼らが11時間までは先頭集団に残れていたところからすると、基本的な運動能力だけではなく、魔力操作で体力回復もある程度できていたはずだ。
そう考えれば、アプローチの違いこそあれ、彼らも魔力操作仲間と呼んでいいだろう。
よし、賑やかな4人組よ、同じ魔力操作仲間として応援しているぞ! 頑張れよ!!
そんな想いを込めて、彼らを見送ってやった。
「……今日、メッチャ暑くない?」
「そりゃ、もう夏だからな、暑くもなるだろうさ」
「それもそっか」
「そういえば、魔力操作狂いの魔法の点数を見たか?」
「見た……796点とかヤバすぎだよね、あれって人間の出せる点数なの?」
「出せてしまったみたいだからな……そして、2位のロイターも大概だが、それでも588点……」
「まあ、1点差で3位のファティマちゃんもメチャクチャだけどね」
「いや、ファティマちゃんはカワイイからいいんだ……きっとあの子は神に愛されているのさ」
「……そ、そうだね……はは」
「問題は、魔力操作狂いさ……俺は前、先生に聞いたことがあるんだが……学園側としては、魔法の試験は最高を500点ぐらいと見込んでいたらしい……それを裏付けるように、例年400点台後半が最高だったとのことだ」
「あ、それは僕も聞いたことある! 確か去年は豪火先輩の492点が最高だったんでしょ? それでも去年はヤバ過ぎってなったって聞いたよ!!」
「そうだな……とはいえ、魔法で速度と威力を出せて、あの当てるのが不可能に近い障壁魔法を破壊できれば高得点というのも納得はできる」
「それはそうだけど、それが不可能って話なんだよね……」
「ああ、まったくそのとおり……だが、魔力操作狂いはそれをやってのけた……やはり、奴が唱える魔力操作、それが鍵なのだろう……」
「でもでも、あんなのをチンタラやりたくないよね……」
「だが、奴はそういっている……俺たちも魔力操作に賭けてみたほうがいいのでは?」
「えぇ……あんなつまんないのをいまさら?」
「そう、いまさらではある……しかしながら、奴の教えを受けてソイルが見違えるほどの実力を見せつけたこと、お前も忘れたわけではないだろう?」
「まあ、そうだけど……でも、ソイルはちょっと特別っていうか……」
「……ああ、すまん、無理強いはよくなかったな……とりあえず、俺は騙されたと思ってこの夏、魔力操作に取り組んでみるつもりさ」
「ちょっ、ちょっと待ってよ! 別に、やらないってわけじゃなくてね……ああもう! しょうがないから、僕も魔力操作に付き合うよ!!」
「そうか、ありがとな」
「あ~あ、言い出したら聞かないんだからな~」
「ははっ、まあな」
へえ、豪火先輩は492点でトップだったんだ……さすがだな。
それに豪火先輩のことだから、おそらく火属性の魔法だけで出した点数だろう。
そこで光属性も併用していれば、もっと点数を出せたはず。
そう思うと、豪火先輩は試験の点数にそこまでこだわてなかったんじゃないかって気がしてくるね。
う~ん、俺もつららだけで勝負してみるべきだったか?
まあでも、スタンスは人それぞれだよな! うん、それでいい!!
そんで、ここにも魔力操作仲間として期待できそうな少年たちが現れたようだ。
正直、俺は嬉しいよ。
こうやって、魔力操作の輪が広がってくれたらいいよね。
そんなわけで、俺はお前たちにもエールを送る!
そして、お前たちも! 魔力との語らいの素晴らしさに気付いてくれることを願っているぞ!!
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