第277話 前期試験の順位が発表される
「みんなも知っていると思うけれど、今日は前期試験の順位が発表される日よ。そして授業が終わる頃には、学内の掲示板に張り出しも済んでいると思うから、確認しておいてね」
ついに、という感じだね。
そして昨日、ロイターたちと学科の採点結果を発表し合ってみたところ、ソイルには勝てたが……それ以外のメンバーには負けてしまった。
そのときは正直、「君ら武系貴族じゃなかったの!?」と叫びそうになったね。
まあ、それは現時点の俺に発揮できる最大限のクールさで抑えたけどさ。
ちなみに点数は高い順に、ファティマ(473点)、パルフェナ(471点)、ロイター(458点)、サンズ(445点)、俺(432点)、ソイル(345点)だった。
そこで印象的だったのが、ファティマと2点差で負けたパルフェナが俺たちの中で一番悔しそうにしていたことだね。
「今回の前期試験は、全体的にみんなよく頑張っていたわね。でも、みんなにはまだまだ伸びしろがたくさんあるから、これからも努力を継続するように! それじゃあ、少し早いけれど今日はここまでにします」
よっしゃ! エリナ先生の期待に応えるためにも、これからさらに精進を重ねていくぞ!!
そうして俺が想いを強めているあいだに、ロイターがやって来た。
「少し時間もあることだし、順位でも見に行ってみるか?」
「おっ、そうだな」
こうしてロイターと連れ立って、教室から最寄りの掲示板へ移動する。
「ふむ、運動はともかくとして、学科は9位で魔法は2位か……」
ロイターの反応のとおり、運動はうちのパーティーとシュウのパーティーの全員が1位だからなぁ。
そんでこの運動の順位だけど、こうやって1位が11人連続で並んでいると、なんとなくありがたみが弱まってしまうのは仕方ないよね……
それはそれとして俺はっと……ふむふむ、魔法と運動は当然1位として、学科は16位か~
ん? よく見たら俺の一つ上がシュウという名の武術オタクのメガネじゃないか!
はは~ん、アイツは武術以外の知識は地味に薄いようだな!
いや、もしかすると誰も知らないような新説とかを書いてしまって、定説と違うからバツ! ってなってる可能性も考えられるな。
ついでだから魔法の順位も見てやるか……
えっ、26位!? 思ったより低いな。
……あっ! まさか、あの野郎!! 実力を隠してる系か!?
そういえば、武術大会にも参加していないって話だった気もするしな……あり得るぞ!
でも、それなら運動の試験で実力を示したのが意味不明となってしまうか……う~む、分からん!
とりあえず、アイツには試験の結果だけでは計り知れない何かがあるのは確かなんだ、そこを見誤らないようにしたいものだ。
「……やはり、シュウのことが気になるようだな?」
「ん? ああ、アイツは只者ではない、それだけは確実にいえることだからな」
「ふむ、私も奴と直接対戦したことはないが……もし仮にそんな機会があれば、苦戦を強いられることは想像に難くない」
「違いない」
どうやら俺は、よっぽどシュウの魔法の順位を凝視してしまっていたようだな。
「学科は5位で、魔法は3位……だいたい予想したとおりだったわね」
「うぅ、あと2点だったのにぃ……」
「でもパルフェナ、魔法はあと2点でソイルに並ばれていたところよ?」
ここでファティマとパルフェナが登場。
それで、あと2点令嬢ことパルフェナであるが、学科は6位で、魔法は5位だった。
特に驚くことでもないが、うちの武系令嬢たちはやっぱり優秀だねぇ。
「僕は学科が12位で、魔法が4位ですか……まずまずといったところですね」
そして、ファティマたちと同じクラスのサンズも、同じタイミングで登場。
何気に、うちのパーティーが続々と集合していっているね……ということはもしかして?
「皆さんこんにちは、僕も順位を見に来ました」
少し遅れてソイルも到着し、順位の確認を始める。
どれどれ、お兄さんも見てあげよう。
「学科が65位で……魔法が6位! 運動が1位!!」
上位層の数字に慣れ過ぎて低く感じてしまうが、学科の65位はじゅうぶん健闘しているほうである。
それに元のパーティーメンバーを見てみれば、43位のヴィーンは別としても、取り巻きの2人は104位と119位で3桁台だからね、それと比べればソイルはよくやったといえるだろう。
「アレスさん、皆さん……本当に、ありがとうございます! 皆さんに協力してもらったおかげで、こんな凄い成績を残すことができました!!」
「ソイルきゅん、よかったねぇ」
「素直に感謝できるソイル君、ステキよ!」
「さっすがアタシのソイル!」
「何をおっしゃっているのかしら? 『あなたの』ではなく、『みんなの』ソイル様よ!」
「……へぇ、みんなでシェアする方向はアリなんだ」
「いいなぁ、俺もそんなふうにいわれてみてぇよ」
「ソイルに勝てたらいってもらえるんじゃない?」
「……ワンチャン学科なら」
「……それじゃ駄目だね」
なんか、周りがキャーキャーいっているが、まあそれはいい。
だが、このままだとソイルがまた泣き出してしまうかもしれん。
その場合、ソイルの泣き顔を期待していた小娘が喜びだしそうだが、どうだろう?
なんて思いながら、このハートウォーミングな空間に浸っていたら……向こうからヴィーン一行が歩いてくるのが目に入った。
そして、そのことに気付いた周囲の小僧や小娘が1人、また1人と雰囲気を重いものに変えていく。
それはソイルも同じで……
「……ヴィーン様」
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