第276話 まあ、こんなもんだね
「おはようキズナ君! 今日は学科の採点結果が出る日だよ!!」
というわけで本日地の日、そしてキズナ君に話したとおり学科の試験の結果が出る日でもある。
改めて魔法の試験を思い返してみると、周囲の反応から俺がぶっちぎりだったっぽいので1位は固いと思う。
そして運動の試験はコースを何周したかってだけの話だから、うちのパーティー6人とシュウのパーティー5人の計11人が1位となって、次の順位は12位からって感じになるはず。
そんなわけで、俺が気になるのは学科の試験なのである。
一応、前世知識にプラスして真面目に勉強もしたつもりなので、ある程度の成績ではあると思う。
しかしながら、いかんせんこの世界特有の知識が不足していたし、試験中にも度忘れや対策が手薄で覚えきれていなかったところも出題されたので、そこまで突出した成績とまではいかないだろう。
そんなことを考えながら着替えをして、朝練に向かう。
これもホントに、いつもの流れって感じがするね。
それに、前期試験が終わってから昨日までの休みも、エリナ先生とお茶をしたのと冒険者ギルドで大量納品をした以外は、試験対策期間中とやることの比重が変わったというだけで、結局ほとんど似たような生活を送っていたわけだし。
だが、それが俺には合ってるので、なんの文句もない。
魔力操作という魔力との語り合いによって、少しずつでも技量が上がっている感覚があるし、レミリネ流剣術の練習をしているあいだは、レミリネ師匠を近くに感じられるのだ、これほど充実感に溢れた日々に文句をいうほうがおかしいというものだ。
というわけでこの早朝ランニングも、俺の充実した毎日には欠かせないものといえるわけだね。
「おはよう、今日は一段とご機嫌のようね」
「もちろん、こんなに楽しい毎日なのだから、機嫌もよくなるというものだ!」
「それは結構」
「さて、それじゃあ行くか!」
「ええ」
こうして、ファティマと共に今日も走りだす。
そして走っているあいだの話題はやはり、学科の採点結果についてだ。
「まあ、私も学科についてはそれなりといったところかしらね」
「そういいつつ、お前が1位だったりしてな?」
「いえ、それはないわね……おそらく王女殿下か、学科に集中していた文系貴族の誰かよ」
ファティマが予想したように、原作ゲームの設定からすれば王女殿下が1位となりそうだ。
それに、プレイヤーの育て方によっては1位を取る可能性もあった主人公君だが、この世界ではそこまで学科に集中してそうな雰囲気もなかったので、なおさらそんな気がする。
「なるほど……お前のいうとおり、王女殿下が学科の1位というのはありそうだな」
「ええ」
そんな感じで、学科の順位予想なんかもしながらの朝練だった。
とはいえ、その際にファティマが挙げた文系貴族たちの名前だが、聞いたことがあるような気がするって程度でほとんど分からなかった。
いや、俺が名前を憶えていないだけで、顔を見れば「ああ、コイツか!」ってなる奴は結構いると思うけどね……
そうして、自室に戻ってシャワーを浴び、朝食をいただきに食堂へ。
ここでもやはり、学科の採点結果についての話題で持ち切りだった。
まあね、みんな気になるのは当たり前だよね。
そんな小僧どもの会話を聞きながら朝食を済ませ、授業を受けに教室へ移動。
そして待つことしばし、ようやく待ちに待ったエリナ先生が来て授業が始まる。
「昨日までの休みで前期試験の疲れは取れたかしら? それで今日は学科の採点済みの解答用紙を返却するから、名前を呼ばれたら受け取りに来てちょうだい」
そんな感じで解答用紙を返却されていく様子を観察していると、思ったより一喜一憂って感じがない。
みんな「まあ、こんなもんだね」っていう反応ばっかり。
……でもそうか、よく考えたらここはAクラスという上位貴族の集まりだもんな、たぶんみんな高水準で一定なんだろうという気がしてきた。
「次は、アレス君」
「はいっ!」
そんなどうでもいいことを考えているうちに、俺の名前が呼ばれたので解答用紙を受け取りに向かう。
そして受け取った解答用紙だが……結果は500点満点中の432点だった。
なんというか俺も、ほかの奴らと同じように「まあ、こんなもんだね」という落ち着いたリアクションが自然と出た。
いや、前世の俺からすると「うぉぉぉ! やったぜぇぇぇ!!」って大騒ぎするところなんだけどね。
ただ、周囲の雰囲気もあってか、そこまで大はしゃぎするほどでもないっていう感覚なんだ。
そんで解答解説の冊子が配られるとともに、全員に解答用紙の返却が終わったところで、残りの授業時間は正答率の悪かった問題の解説なんかがおこなわれた。
「一応、私も含めて複数人で採点を重ねているので、基本的にミスはないと思いたいところだけれど、何かあったら今日中に私か職員室にいる誰かに報告に来ること……それでなければ明日の順位発表に間に合わなくなってしまうから気を付けてね。それじゃあ、今日はここまでとします」
こうして授業が終わりを告げた。
そして授業後、なんとなくロイターと点数を公表し合う。
「私は458点だった」
「おお、やるじゃないか! 俺は432点だ」
「ふむ、お互いまあまあといったところだな」
「いやいや、お前のほうがかなり上だろ……でも、このクラスの雰囲気がそうさせるのか、どうしてもまあまあって感じがするのは確かだ」
「ああ、なんとなくな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます