第265話 それは私への挑発かしら?
「おはようキズナ君! 今日は魔法の試験だ! 俺が光弾ですんげぇ記録を出すのと、みんな……特にソイルが自信を持って試験に臨めるように熱い声援を送ってくれると嬉しいよ!!」
そんなキズナ君への朝の挨拶から、今日という水の日が始まる。
そしてまずは、朝練に向かうために着替えを済ませる。
よっしゃ、気合を入れていくぜ!
そうして、いつものコースでファティマと合流し、走り始める。
「……ソイルの魔法、なんとか試験に間に合ったってところかしら?」
「そうだな、素質的にはまだまだ伸びしろはあると思うが……模擬試験でとりあえずサンズやパルフェナに匹敵するレベルには到達したからな、上位は狙えるだろう」
「そうね……あとは、本番で実力を発揮できるかどうか」
「だなぁ……それと確か、ソイルはあの取り巻きの2人と同じクラスだろ? 変に萎縮しなけりゃいいんだけどな……」
「おそらくAクラスの試験の様子を全員で見終わったあとに、Bクラス以下の試験が同時に始まるでしょうから……あなたとロイターでソイルを見守ってあげてちょうだい……場合によっては活を入れてね」
「ああ、任せとけ」
入学後にすぐあった魔力測定のときも広い運動場で、まずAクラスを全員で見てからって感じだったから、今回もファティマのいうとおりになるだろうと思う。
まあ、みんな王女殿下とかAクラスに入るような上位貴族については把握しておきたいだろうからね。
そう考えると、Bクラス辺りの試験の様子も見る価値はありそうだ。
そのため、Cクラス以下でなんらかの注目を浴びている生徒以外は、基本的にBクラスの生徒が視線を集めることになるだろう。
それは例えば、ファティマであったり、サンズやパルフェナだったり……要するにうちのパーティーメンバーたちだね!
ああ、そうそう、いってなかったかもだけど、ファティマたち3人は今期はBクラスだった。
3人とも実家が伯爵家だからね。
実はサンズも伯爵家なわけだから、ヴィーンみたいに家来を持って派閥を作ることもできたらしいんだけど……家の意向や、何よりサンズ本人がロイターとつるむほうが性に合ってたみたいでね、今の形に収まったってわけ。
あと、ファティマの実家は「実質辺境伯」とか陰で呼ばれていることがたまにある。
ただ、そう呼んでいた奴の雰囲気的に侮蔑っぽい感じがあったので、今まであえて聞かなかったことにしてきた。
まあ、この王国では「実力でのし上がれるのは伯爵まで」みたいな風潮があるみたいだからね……いろいろあるのだろう。
とはいえ、実家の爵位なんか、俺にはそこまで興味のある話題でもない。
それに、やや脱線してしまったが、ファティマたち3人は後期にAクラスへとスンナリ上がってくるだろうし。
「まあ、お前たちBクラスの3人のこともしっかりと見守っておいてやるよ!」
「あら、嬉しいわね……じゃあ、ソイルと試験の順番が重ならないことを祈っておくわ」
「ああ……下手したらソイルに視線を独占されてしまうかもしれないしな!」
「ふふっ、それは負けていられないわね」
「そうはいっても、お前に勝つのは至難の業だろうがな」
「あらあら、それは私への挑発かしら?」
「フッ、そう受け取ってくれても構わんよ?」
「……ふふっ」
「……フッ」
こんな感じで、俺とファティマはおしゃべりを楽しみながら、朝練を終えた。
「あの2人の走るペースが速すぎて、何を話していたのかまでは分かんないけど……その、な?」
「うん、雰囲気というか、圧力が強かったよね……最後のほうとか特に……」
「でも、ファティマちゃんのあの感じ……いいよな?」
「うん……分かる」
自室に戻りがてら、小僧どものファティマトークが耳に入ってきた。
まあ、ファティマは気が強いからなぁ……その辺に魅力を感じる奴もいるんだろうね。
そんなことも思いつつ部屋でシャワーを済ませて、食堂へ移動。
そして適当な席に座って食事を始めれば、あちこちから試験トークが聞こえてくる。
「今日は魔法の試験だね、調子はどうだい?」
「う~ん、まあまあだね」
「ふふん、僕の前期試験は既に、昨日で終わったのさ!」
「……それは、どういうことだい?」
「むしろ、ここからが本番みたいなところもあると思うんだけど……」
「僕みたいな文系男子にとっては、学科が全て! だから魔法とか、運動とか? そんなもの、僕には必要ないのさ!!」
「そ、そうかい……」
「う~ん、そういいながら、魔法と運動も高得点とかだったらカッコいいんだけどね……」
「それは違う! 一点特化だからカッコいいのさ!!」
まあ、前世でも特定の科目にだけやたらと気合を入れてた奴とかもいたからなぁ、そういう感じなのかな?
……そういえば、ウケ狙いで「保健体育だけ頑張る!」みたいなことをいってた奴なんかもいたよなぁ。
それにしても、学科だけだなんて……魔法のない世界から来た俺みたいな奴にとっては、なんてもったいないことをするものだと思わずにはいられないね。
それに、魔力操作を頑張れば集中力だって付くのだから、学科の勉強にも役立つだろうに……
とはいえ、そんなことをいっているのは、ごく少数だけ。
基本的には、その辺にいる小僧どもみんな、魔法の試験に気合を漲らせている。
ふむ、ご飯もしっかり食べたし、そろそろ行くかね。
そうして俺も気持ちを高ぶらせながら、移動を開始。
「ほら、君が変なことをいうから……」
「きっと魔力操作狂いのことだから、魔法を蔑ろにして怒ってただろうね」
「うぅ……」
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