第263話 一心不乱
「おはようキズナ君! ついに今日から、前期試験の1日目だ! 頑張ってくるから、キズナ君も応援しててくれよな!!」
この1週間……朝練の時間は毎日ファティマとランニング、午前中はエリナ先生のありがたい計らいによって学科の自習、お昼からは森の中をランニング、夕食後は模擬戦の代わりに魔法の試験対策、そして部屋に帰ったあとは勉強と精密魔力操作をして寝る、という生活を送ってきた。
うん、我ながらとても充実した1週間だったと思う。
フッ、今回の前期試験……自信アリだ!
そんなことを思いながら着替え等の準備をして、今日も朝練に向かう。
「よう、試験がついに始まるな?」
「おはよう、そうね」
そんな挨拶を交わして、早速ファティマと走り始める。
「それで、今日の試験は学科だが、準備は万全か?」
「もちろん、あなたこそどうなの? 確か、学科が一番手薄だといっていたわよね?」
「まあな、とはいえそれは、魔法や運動と比べてってだけで、おそらく学科もある程度の成績は収められるはずだ」
「そう、それなら安心ね」
ちなみに、試験は3日間おこなわれる。
そして学科、魔法、運動が1日ずつとなっている。
また、学科に関しては、前世のように国語とか数学みたいな感じで時間が分かれておらず、3時間という制限時間の中で、すべての問題を解かなければならない。
そのため、地味にハードといえるかもしれない。
ただし、俺には日々の魔力操作で培った集中力という強い味方がいるからね、さほど恐れることもないのさ。
「それじゃあ、お互い頑張りましょう」
「おう! そんじゃ、また昼過ぎだな」
「ええ」
とまあ、こんな感じでファティマと世間話をしながらの早朝ランニングだった。
そのあとはいつもどおり、自室に戻ってシャワーを浴びてポーションをゴクリ。
やはりこの体の隅々までエネルギーが行き渡る感覚、たまらないね。
なんてことを思いつつ、食堂へ移動する。
さて、待たせたな腹内アレス君! お待ちかねの朝食だ!!
というわけで席に着き、早速いただきます。
「……なんで学科が初日にあるんだよぉ!」
「いや、かなり前から日程は公表されてたでしょ……」
「ああ、先生はきちんと知らせてくれていたし、掲示板にも貼り出されていたはずだ」
「そういうことじゃねぇ! 学科が3日目だったら、今日と明日のあと2日間詰め込みができたんだよぉ!!」
「う~ん、魔法の試験はまだしも……運動の試験で走ったあとは疲れて勉強なんか無理な気がするけどね……」
「そもそも、日頃から勉強をサボっていたお主が悪いとしかいいようがないな」
「うわぁ~ん!」
なんというか、前世の俺みたいなことをいってる奴がいるな。
それはそれとして、どれだけ走ったあとでもポーションを飲めば回復できるよ! っていいたいところだ。
ただ、学科と魔法の試験はそんなに時間がかからず、おそらく午前中で終わるだろうけど……運動の試験は耐久マラソンだからねぇ。
ルールとしては午前9時開始で、あとは午後9時までの12時間走ることになるわけだから、たぶん気分的にしんどいってなっちゃうだろう。
とはいえ、「もう走るの無理ぃ~!」ってなったらいつでも走るのを止めることができるんだけどね。
その走るのを止めた時点で、運動場のコースを何周できたかで成績が決まるって話なのさ。
ちなみに、コースを何周したかを記録してくれる魔道具を試験時に渡されるらしい。
何気にハイテクだね!
とまあ、小僧の嘆きをBGMとして試験の内容について考えながら朝食を終えた。
よっしゃ、まずは学科だ! 気合を入れていくぞ!!
そんな決意を胸に秘めつつ教室へ向かい、エリナ先生が来るのを待つ。
「みんなそろっているわね……この前期試験の3日間、みんなが日々積み重ねてきた努力の成果を発揮できるよう祈っているわ」
エリナ先生の期待に応えるんだ! 俺ならできる! できるぞ!!
こうして俺は、モチベーションを静かに高める。
「それじゃあ、1日目の今日は学科からになるわね」
生徒たちが机の上の教科書等を片付けたところで、問題冊子と解答用紙が配られる。
これで、準備は整った……あとは開始の合図を待つだけ。
「始め!」
エリナ先生から、試験開始の合図が出た。
まずはひととおり、問題冊子の落丁等を確認しながら全体をざっと眺める。
そして大まかに、時間がかからず解きやすそうな問題や、自信のある問題を選別して解答を開始する。
あとは一心不乱に解いていくのみ!
そうしてあっという間に、3時間は過ぎていった。
「止め!」
……まあ、こんなもんかな?
度忘れや、単純に分からなかった問題なんかもあったが、一応実力は出し切れたと思う。
解答用紙が回収されているあいだ、そんな感じで軽く振り返りをしていた。
「みんなお疲れ様、これで前期試験の1日目は終了よ。明日の魔法の試験もしっかりね!」
学科の試験が終わったので、昼食である。
というわけで、食堂へロイターと共に向かう。
「どうだ?」
「そうだな……まずまずといったところかな?」
「そうか」
「ロイターは?」
「私も似たようなものだな」
「まあ、そんなものか」
「だな」
こんな会話があっちこっちで繰り広げられている。
いやまあ、俺たちほど淡泊ではなく、悲鳴をあげている奴なんかもチラホラいるけどね。
とりあえず、俺たちは2人ともある程度できたという感覚だったので、さほど語ることもないって感じだろうか。
あと、お互いに試験後の答え合わせとか面倒だったというのもあるかもしれない……少なくとも俺はそうだった。
というか、気持ちは既に明日の魔法の試験に向いているわけだしな。
さて、明日も頑張らなきゃだな!
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