第262話 ライトバレットではない
みんなの見守る中、魔法練習場に備え付けられている障壁魔法を展開させる装置のスイッチを押した。
前世で俺が憧れた光の戦士たちよ……あなたたちの武器や技のイメージ、使わせていただきます!
そうして、光の弾を頭の中で思い描く。
ただし、初っ端からアニメで見たような宇宙戦艦とかを沈められるレベルのすんごいビームはイメージしない。
たぶん、やり過ぎで魔法練習場を破壊してしまい、異世界転生の先輩諸兄のように「やっちゃいました……」とかいう羽目になりそうだからね。
まあ、なんだかんだといいながら、結局はライトバレットという形に落ち着くことになりそう。
だけど……その辺の奴が使うライトバレットとは差別化を図るため、光弾――KOUDAN――と名付けることにした。
どうだい、カッコいいだろう?
……ごめん、そのまんまだね。
それはさておき、次々と出現していく大小様々の、消えるタイミングもバラバラな障壁魔法に対し、徐々に威力を高めながら光弾を撃ち込んでいく。
どれぐらいで割れるのかってのを見極めながらね。
ちなみに弾速については、よほどイメージが上手くいっているのか、光弾の名に恥じぬ速度で目標に到達している。
これなら、あのすぐ消える障壁魔法も狙える!
そうしているうちに、今回最初のすぐ消える障壁魔法が出現!
「ほう!」
「あれを撃ち抜くとは、さすがです!」
「ふふっ、やるわね」
「やったね! アレス君!!」
「や、やっぱりアレスさんは凄いや……」
みんなの感嘆の声を浴びながら、次々と障壁魔法を光弾で貫通させていく。
そうして、序盤で威力を試していたため割れなかった分は得点が下がったものの、すぐ消える障壁魔法の破壊に何度も成功したため、かなりの高得点を記録することができた。
……正直、出来過ぎな気がしなくもないが、高得点を出せたこと自体は嬉しい。
今まであんまり考えてこなかったけど、俺って光属性と相性がいいのかな?
まあ、聖者(仮)と廃教会のスケルトンにもいわれたぐらいだしな、可能性はあるかもしれない……
いや、待てよ……もしや! 原作アレス君の悪役としてのマイナスと、前世の俺の陰キャとしてのマイナスが掛け合わさってプラスになった……だからこその光属性だったのだ!!
……なんてね。
「ライトバレットであの威力……やるじゃないか」
「そうですね、ライトバレットは威力を出すのが難しいので、牽制用ってイメージが強いですし……」
「悪いが、俺が使っていたのはライトバレットではない……光弾だ」
「こ、光……弾?」
「ソイル、これがアレス独自の名付けというわけだ……そして、魔法自体はライトバレットといえるだろう」
「な、なるほど……これが魔法史の『アレス後』となるわけですね?」
「そういえば、そんな話もこの前しましたねぇ」
ソイルよ、覚えていてくれてありがとう。
「アレスを見習って私も一度ライトバレット……いえ、光弾を試してみようかしら?」
「私も試してみようかなって思うけど……たぶん、試験には使い慣れたストーンランスで挑戦することになりそう」
「ぼ、僕も……まずはストーンバレットを完全に使いこなせてからにしたいと思います」
早速ファティマは「光弾」という名前を使い始めてくれたようだ……嬉しいもんだね。
そして、パルフェナとソイルは地属性が得意なようだからね、そういう選択となるのも頷けるところだ。
「まあ、試験には自信のある魔法で挑むのが基本だろうな」
「ひとまず私はファイヤーボールと使い比べてみて……という感じだな」
「う~ん……ライトバレットの威力をアレスさんの光弾に匹敵するまで高められるかが勝負といったところでしょうか……」
まあ、さっきも少し話していたが、ロイターは火属性が得意みたいだからな。
ちなみに、ファティマは風属性で、サンズは水属性が得意らしい。
これは各自の魔法に対するイメージのしやすさとか、魔力との相性とか、いろいろな要素が絡むことらしいが、総じてなんとなく得意な気がするっていう感覚の問題っぽい。
それはそれとして、光弾によって魔法の試験も好成績を残せそうな感触を得ることができた。
そのため、これからの1週間でさらに光弾を磨いていきたいところだね。
こうして、俺たちは魔法の試験対策にも入念に取り組み始めることとなった。
これによって午前中は学科の自習、午後は森の中ランニング、そして夕食後は魔法の練習となるわけだ。
それに加えて、朝練と夜勉もしているわけだから、かなり万全といえよう。
フッ、これなら結構な成績を期待できそうだぞ!
エリナ先生! 見ていてください! 俺、思いっきり頑張りますから!!
そんな決意を込めながら、今日の魔法の模試を終えた。
それと、みんなも光弾に挑戦してみたところ、現段階では俺ほど威力を出せないみたいで、そこはこれからの課題といった感じである。
とりあえず、今回の試験に間に合うかどうかは分からんが、みんな素晴らしい才能の持ち主ではあるので、そのうち使いこなせるようになるだろうなぁって気はする。
とはいえ、そのあいだ俺も光弾の技術を高めるつもりではあるので、そう簡単に並ばれるつもりはないけどね。
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