第259話 魔力に愛されし者
「さて、今日の反省会を始めましょうか」
模擬戦を終え、運動場から談話室に移動してきた。
そして、いつものようにファティマの号令により反省会が始まる。
「ふむ……今日は森の中で多少のアクシデントはあったものの、それ以外は上手くいっていたし、模擬戦も充実したものだった……そのことから考えても、ソイルの魔法はだいぶ形になってきたといえるのではないか?」
「そうですね、現時点で魔法の試験を受けたとしても、平均を優に上回ることができると思います」
「えっ!? そんなわけ……!!」
「あるわね……あなたの元パーティーメンバーと比較したとしても、取り巻きの2人なんかは相手にもならないでしょうし、保有魔力量が伯爵家相応のヴィーンにだって、いい勝負ができると思うわ……でも、あなたの実力はそんなものじゃない、まだまだ伸びしろはたくさんよ」
「フッ……ファティマのいうとおり、お前は俺を脅かすレベルの魔法士となれる器の持ち主だからな!」
「アレスさんまで……」
今はまだ、自分の実力を完全に信じ切れていないソイルであったが、それも時間の経過とともに確信に変わっていくことだろう。
「それでさ、思ったんだけど……明日からはちょっとやり方を変えて、先頭を走るのを順番に変えていったらどうかな? 先頭を走っていた人が倒したモンスターの回収に行って、回収が終わったらみんなに追いついて最後尾になる。そのあいだ、次に走っていた人が先頭になるって感じでさ」
「なるほど、いいんじゃないか?」
「そうですね、そろそろ僕たちもモンスターと戦いたくなってきましたし」
「そうね」
「僕も、それでいいと思います」
「俺も構わん」
パルフェナの提案に対し、みんな賛成の意を表明する。
俺も特に反対する理由もないので、賛成しておいた。
「決まりだね! それじゃあ、明日からはそんな感じでがんばろっ!!」
こうして、森の中ランニングの内容に多少の修正が加えられることとなった。
よし、俺が先頭になったときは、魔力探知でモンスターが大量にいるところに行くぞ! 乱獲じゃい!!
「それと、たまには魔法の試験形式の練習もしておきたいわね」
「ふむ、試験形式か……確かに試しておくのも悪くないな」
「そうですね、進捗確認は必要でしょう」
「僕がどれだけできるようになったのか、自分の目で確認することになるのか……」
「とはいえ、互いのストーンバレットを打ち落とし合うっていう、より難易度の高いことをしている気もするがな!」
「そうだねぇ、アレス君のいうとおりだと思うけど、試験の形式に慣れとくのも大事だよね」
「まあ、否定はしない」
前世でも受験とかで、過去問とか模試をやり込んで慣れるっていうのもあったし、そんな感じだろうね。
「それじゃあ、明日の模擬戦の時間にでも一度どうかしら?」
このファティマの問いに対してみんな賛成したので、明日の模擬戦の時間は魔法の模試となった。
そういえば……高得点阻止用であろう、すぐ消える障壁魔法の攻略がまだだったな。
よっしゃ! 明日はソレだな!!
そんなことも考えつつ、今日の反省会が終わった。
あとは大浴場でゆったりしてから勉強。
それが終わったら、寝る寸前まで精密魔力操作だ。
昼間、「魔力操作の神髄は愛と感謝だ!」とかいっただけに、今日は一段と魔力君と語り合いたいところだね。
ま、とりあえずまずは、お風呂だ! さあ、行くぞ!!
そうして、大浴場にて……
「アレスさん、アレスさんが声をかけてくれてから今まで……そのおかげで、だいぶ魔法を使うことへの恐怖心が小さくなってきた気がします……本当にありがとうございます」
ソイルの感謝の言葉。
「何をいっている、魔力に愛されし者同士、そんな礼など不要だ」
「ふむ、『魔力に愛されし者』か……私の場合、公爵家に生まれたのだからこれぐらいの保有魔力量は当然のことと思っていたが……そんな考え方ではいかんな……私も魔力に感謝しよう」
「はい、貴族家に生まれれば当然のことと考えがちになってしまいますからね……僕も魔力に感謝を捧げようと思います」
「ああ、そのとおりだ……魔力は大いなる愛で俺たちの想いに応えてくれる、ゆえに『愛と感謝』だ」
「……魔力さん、今まで怖がったりしてごめんなさい……これからは、怖がりません……だから、これからもよろしくお願いします」
なんか、気付いたら流れ的に4人で魔力への祈りを捧げる感じになっていた。
「うぉっ! まぶしっ!!」
「なんであいつら……あんなに輝いてるんだ?」
「それどころか……清浄な空間が広がって……いる?」
「う、美しい……」
「なんか知らんけど、さっき彼女にビンタされた頬の痛みが引いてきた、ラッキー」
「……おい、雰囲気ぶち壊しじゃねぇか」
「いやいや、ここは風呂だよ? 風呂であんなにピカピカしてるほうがおかしいでしょ」
「いや、体を洗うんだから、ピカピカにはなるだろ」
「あ、それもそっか!」
「う~ん……なんかニュアンスが違うんだよなぁ……」
……もしかしてだけど俺たち、聖者(仮)モードにでもなっていたのかな?
まあ、俺だけじゃなく、学年トップクラスの実力者であるロイターと、それに次ぐ実力のサンズ、そしてさらに保有魔力量の豊富なソイルの祈りだ、それなりの強さを持っていても不思議ではあるまい。
そんなわけで、おそらく光属性の魔力が周囲へ広がっていたのだろうね……特にソイルの魔力は外に漏れやすいし……
とまあ、そんな感じでちょっとばかりザワザワした瞬間もありはしたが、それもすぐ収まった。
さて、明日からまた学園だ……エリナ先生に会える! 楽しみ!!
あ……そういえば、ソイルにお姉さんの素晴らしさをまだあまり教えてなかったな、魔法だけじゃなくそのことについても伝えてやらねば!
「……アレスさん、なんでそんなに覚悟の決まった顔をしているのですか?」
「ソイル、こういうときのアレスは……その……な?」
「そうです……ね?」
「えぇっ! お2人とも、なんでそんなに歯切れが悪いんですかぁ!?」
ロイターとサンズの苦笑いは置いておいて、風呂から上がるまでの残り少ない時間ではあったが、ソイルに「お姉さん論」を語ってやった。
是非とも、お姉さんのよさをソイルも理解してくれることを願うばかりだね。
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