第255話 お前はそれに気付いているのか?
朝練と朝食を終え、自室にて勉強中。
勉強に関してはここしばらく、模擬戦等を済ませたあとの夜にやっている。
まあ、前世知識に加えて、こっちの世界に来てからというもの、常日頃から勉強はしている。
そのため、直前になって一夜漬けでしのぐ羽目にはなるまい。
やっぱさ、一夜漬けはできることなら避けたいよね。
というか、怠惰だった前世の俺は、一夜漬けすら中途半端だったし……
どう中途半端なのかというと、「徹夜で頑張るから昼間は寝ておこう」とかいって寝て、夜中には「日頃から頑張っていれば……」とかいって冷や汗をかきながら要点暗記……そして午前3時頃になったら「いや、試験中に寝てしまったらマズいぞ……」とかいってやっぱり寝る。
結局、思ったほどできずに試験を迎えてイマイチな成績で終わる……ってパターンが多かった気がする。
ホント、あのときの俺が今の俺を見たら、その真面目さに驚くんじゃないかな?
……それというのも、クラスの担任がエリナ先生だったおかげだよなぁ。
やっぱり、「エリナ先生にいいところを見せたい!」っていう気持ちがやる気につながっているわけだからね。
ま、何がいいたいかっていうと、「エリナ先生、最高!」ってことだよ。
そんな感じでモチベーションを高めながら、勉強に勤しむ。
フフッ……「アレス君、よく頑張ったわね」とかいってもうらうんだぁ。
よっしゃ! 頑張っちゃうぞ!!
こうして、エリナ先生への想いと勉強へのやる気を高めながら、午前中を過ごしたのだった。
そして、腹内アレス君の昼食要求を受けて、意識を勉強モードから通常モードへ移行。
「ふぅ、もう昼かって感じだね。机の上を片付けて……っとキズナ君、お昼ご飯を食べてくるよ、またね!」
そして、食堂へ移動しながら思う。
エリナ先生への想いが俺の力になっているのはもちろんだが、日頃から魔力操作をおこなっているのも集中力の高さに寄与しているのではないかってね。
なんか、スッと集中状態に入れるって感じがするんだよ。
……やはり魔力操作だ! 魔力操作はあらゆる面で効果を発揮してくれる!!
さあ! みんなも魔力操作をやろうぜ!!
そんなことを思いつつ、食堂へ到着。
ソイルがいたので、そちらの席へ向かう。
「ソイルよ、魔力操作は素晴らしいな」
「えっ? あ、はい、そうです……ね? どうしたんですか、いきなり?」
「俺は気付いたんだ……魔力操作によって養成された高い集中力が勉強にも役立つとね」
「え、えっと……ま、まあ……そういう感じ……ですかね?」
「なんだ、お前は実感していないのか? まだまだ魔力操作が足りんようだな」
「えっと……あはは………………これだから『魔力操作狂い』っていわれるんだろうなぁ……」
「ん? 何かいったか?」
「いッ! いえ! 何も!!」
一応ソイルは聞こえない声でつぶやいたつもりだろうが、俺には聞こえている。
だが、難聴系の振りをしておいてやった。
これもやはり、魔力操作によって耳にまでよく魔力が行き渡って聞こえがよくなっているって可能性があるね。
……まあ、悪役らしく地獄耳っていうのもあるかな?
ちょっとしたことでも聞き取って、主人公君に難癖を付けに行かなきゃいけなかったわけだし。
とまあ、こんなふうに俺の魔力操作狂いっぷりに半ば呆れたような態度でありながら、実をいうとソイルも食事と並行して魔力操作をおこなっている。
というのも、ソイルを鍛え始めてから今に至るまで、折に触れて散々「魔力操作をやれ!」と言い聞かせてきたし、本人も魔法に対する意欲が上向きつつあるからな。
フフッ……いい子だ。
そう思った瞬間、ソイルの頭を撫でてやろうかと思ったが、やめておいた。
さすがに「もう、そういう年齢ではない」といわれそうだしさ。
これがリッド君だったら、ためらいなく撫でてただろうなぁ。
そういえば、前に会ってからちょっと期間が空いたし、そろそろ会いに行ってもいいな……レミリネ流剣術も教えてあげたいし。
そこで前期試験が終われば、そう期間を置かず夏休みに突入するわけだ。
まだ夏休み中に何をするかは決めていないが、とりあえずソレバ村に行くことは予定に入れておこう。
こんな感じでソイルと会話したり、合間に考え事をしたりして食事をしていたわけだが、俺の視界にはヴィーン一行の姿も入っていた。
相変わらずヴィーンの取り巻きの2人は、ソイルへ敵意のこもった視線を送っている。
ファティマのいうとおり、あの2人は誰かから……最悪マヌケ族から思考誘導を受けているのか。
そう思えば、あの敵意も納得はしやすいが、果たしてどうなのだろうか……
差し障りがあるだろうから、あまりあからさまな魔力探知はできないが、軽く探ってみたところ闇属性の魔力は感じない。
このことから、いつだったかの敵意君のような強烈な思考誘導が使われているってことはなさそう。
だが、上手く隠蔽されているだとか、心の奥深い部分で思考誘導をかけられていたら、気付くのも難しいかもしれない。
あと、あのうさんくさい導き手みたいに、言葉とか状況で誘導しているって可能性も考えられちゃうからね……
それはそれとして、多くを語らず2人を制止しているヴィーン。
ソイルに対して敵意はなさそうなんだが……何を考えているのか、イマイチ理解できん。
ソイルはソイルで、時折切なそうな視線をそれとなくヴィーンに送っているというのに……お前はそれに気付いているのか?
気付いていて、無言を貫いているのか?
まあいい、試験でソイルの凄さを見せつけてやる!
俺が……いや、俺たちがそれを引き出してやる! 待ってろよ!!
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