第253話 燃えてきたみたいだな
夕食と模擬戦を終え、今日もまた反省会のお時間がやってまいりました!
「今日のソイルは、魔法の暴発こそしなかったが、まあまあな出来だったのではないか?」
「そうですね、何度も魔力切れになるほど魔法を撃っていましたし、全力を出し切ったといえるでしょう」
「そうね……最低限は満たしたといっておくわ」
「ファティマちゃんもこういってくれてるし、よかったね! ソイル君!!」
「は、はいぃ」
パルフェナの笑顔がまぶしかったのか、恥ずかしそうに返事をするソイル。
そんな嬉し恥ずかしの感情が乗った魔力がソイルから漏れている……相変わらず分かりやすいな。
この先どれだけ魔力操作をこなしても、ソイルのこれだけは治らんかもな……そんなことをふと思ってしまった。
まあ、今は戦闘中ではないので、ある程度気が緩んでいるからというのもあるだろう。
そういった場面ごとのケジメさえ付いていれば、ちょっとぐらい大目に見てもいいかもしれない。
それに、昨日厳しいことをいったファティマが、今日のソイルの魔法に対して一定の納得を示したのも、大きかっただろうしな。
「フッ、ソイルよ……思いっきり魔法をブッ放すのは気持ちがいいだろう?」
「えっと……はい、そうですね……」
戸惑いがちではあったが、ソイルも肯定の意を示した。
うむ、いい傾向だな。
これからソイルは、威力の強い魔法を使うことにためらいもなくなっていくことだろう。
そんなことを思っていたら、ロイターがソイルへ一つの問いかけをした。
「そこで思ったのだが……ソイルはストーンバレットに特化した魔法士を目指しているのか?」
「えっ?」
「今日森で使っていた魔法……魔力を込めて威力を上げたり、数を増やしたりしていたが、全てストーンバレットだったからな、こだわりでもあるのかと思ったのだ……ああ、いや、それが駄目だといいたいわけじゃない、一つの魔法を磨き抜いて名を上げた魔法士も数多くいるわけだし」
「まあ、ソイルさんの場合、阻害魔法で敵の魔法を完封した上で、ストーンバレットによる狙撃をしていくというスタイルでじゅうぶんともいえますからね」
「今のままでは、魔力操作の練度不足で上位者には通用しないでしょうけれど……保有魔力量の豊富さから考えれば、面白い選択肢ではあるわね」
「それで、ソイル君としてはどうなのかな?」
「あ、えっと……う~ん……ヴィーン様に魔法の暴発で怪我を負わせてしまってからずっと……ストーンバレットしか使ってこなかったので……ほかの魔法のことはあんまり、考えたこともなかったです……」
ストーンバレット……石の弾丸を飛ばすってだけのシンプルな魔法。
だが、シンプルゆえに用途が限定されず、使いやすい魔法ともいえる。
それは牽制に使ってもいいし、広範囲にバラ撒いてもいい……なんだったら、思いっきり硬い石を生成して超高速で飛ばせば必殺の一撃にだってできるだろう。
というか、俺の場合つららをそういう位置付けで使用しているわけだし。
「ソイルのストーンバレットは、俺のつららと一緒というわけだな……うむ、やはり俺たちは似ている!」
「つらら……ああ、アイスランスのことか……魔纏といい、風歩といい、お前はいろいろと独自の名前を付けるのが好きだな?」
「フッ……後世の魔法史において、『アレス前』、『アレス後』という表記がなされることだろう、それを楽しみにしているがいい!」
「アレスさん……おそらくですが、その頃には僕たちの寿命も尽きていると思いますよ?」
「ふふっ……でも面白いわね、そういうスケールの大きさは嫌いじゃないわ」
「むむっ、私も魔法史に『ロイター』の名を刻まねばならんな!」
「あらあら、それも楽しみねぇ」
「ファティマちゃんったら、また無責任なことを……」
「まあまあ、この前のような決闘とは違うので、止めなくてもいいでしょう」
「そっか、それもそうだね」
「……歴史に名前を残すアレスさんのような人が……僕と似ているといってくれている……そうか、僕はもっと頑張れるんだ……上を目指せるんだ……やってやる!」
お、何やらソイルが燃えてきたみたいだな。
これまではどちらかというと、俺たちに押されてって感じだったが……ここにきて、自分から新しい扉を開こうとしている。
「そうだ、ソイルよ! 俺はそれを待っていた!!」
「はいっ! 僕も魔法、もっと頑張ります!!」
「そうか……ではソイル、お前もこれからは私のライバルということだな?」
「おっと、僕のことも忘れてもらっては困りますね!」
「ロイターさん、サンズさん……ありがとうございます……僕ッ! みなさんをガッカリさせないよう、頑張りますッ!!」
ここですかさず、ロイターとサンズも名乗りを上げる。
それにより、ソイルの火力がさらに増した。
俺たちは、互いが互いの燃料……そういう関係というわけだね!
「ふふっ、素晴らしいわ……パルフェナ、私たちも長生きしなければならないわね」
「ファティマちゃん……邪法とかには手を出さないでね?」
「何を当たり前のことを……そんなものに頼らず、自力で長生きして見せるわ」
「ファティマちゃんならやり遂げちゃいそうなのがなんともいえない……」
こうしてソイルは、ストーンバレットの技術を磨くのはこのまま継続しつつ、ほかの魔法にも挑戦していくことにしたようだ。
まあ、俺も何度かつららを砕かれたことがあるからな……
ストーンバレット以外の手札をいくつか持っておくのもアリだと思うね。
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