第252話 気迫溢れる

「集まったわね……みんな、しっかりと学科の勉強は済ませたわね?」

「ああ、もちろん」

「はい、抜かりなくです」

「私とファティマちゃんは一緒だったもんね?」

「い、一応……頑張りました」

「フッ、当然だ」


 何気に、前世の頃より勉強している気がしてくるぐらいさ!

 ここで、「前世で勉強しなさ過ぎだっただけだろ!」というツッコミはノーサンキューだぜ?


「……結構。それでは、森へ向かいましょうか」


 こうして、午前中は各自で勉強に励んだ俺たちは、午後になって学園の正門に集合した。

 そして今日も、森の中を走りに向かう。

 さて、ソイルはどんな魔法を見せてくれるのかな?

 そんな期待を込めてソイルの背中を見つめる。

 すると、それに気付いたのかどうかは知らないが、ソイルが話しかけてきた。


「アレスさん……どうしてだか、まだ背中がヒリヒリする気がします」


 そこにロイターとサンズも加わってくる。


「それは、昨日のあれか?」

「ですが、あの程度で痛みが残るのもおかしいですね……それにソイルさんは、アレスさんにポーションも飲まされていましたし……」

「フッ、それだけ想いのこもったスキンシップだったということだ」

「えぇ……」


 こんな感じで森までの道中、お喋りをしながら向かった。


「森に到着だね!」

「そうね……ソイル、今日は期待しているわよ?」

「は、はいっ!!」


 さすがに、今のソイルには顔を赤らめる精神的余裕はないかな?

 というか、ソイルの中でファティマは上官とか教官みたいな位置付けになりつつありそうだし。

 そうして、引き締まった顔で返事を返すソイルに、今日はいけそうっていう感じがしてくるよ。


「それじゃあ早速、走り始めましょうか……魔法の暴発、見せてちょうだいね?」

「そ、そうですね……」


 ソイルが若干の冷や汗をかきつつ、森の中ランニングがスタートした。

 さてさて、近場にモンスターはいるかな?

 そんなことを思いながら、今日もゴブリンハグの腰布を装備しながら魔力探知で周囲を探る。

 お、ここからもう少し行ったところに困惑気味なゴブリンたちがいるねぇ。

 まずは、彼らとの戦闘からって感じだろうか?

 そんなことを思いつつ木々をかき分けて進んだ先に、目当てのゴブリンを肉眼で捉えた。

 さあ、ソイルよ、見せてくれたまえ!


「ストーンッ! バレットォ!!」


 ソイルの掛け声からして、これまでにないほどの気迫溢れるストーンバレットが……爆ぜた!

 ……爆ぜた?


「あっ!? えっと……すいません……」

「いいえ、それでいいわ」

「うん、大丈夫だよ!」

「それよりも、ゴブリンが目の前に迫っているぞ?」

「まずはそちらの対処ですね!」

「は、はいっ! うぉぉ! ストーンバレット乱れ撃ちィッ!!」


 狙いはおおまかに、大量のストーンバレットをバラまいたソイル。

 そして、それを受けたゴブリンは無事なわけもなく……なんというか、ハチの巣とかそういうレベルじゃないね。

 原型をとどめていないぐらい、グチャグチャになってしまっているよ。

 こりゃ、回収は無理かな?


「フーッ……フーッ……」

「ふむ、本日最初の戦闘に、ひとまずお疲れといったところか」

「そうですね……もっとも、まだまだ足を止めるわけにはいきませんが」


 そんな感じで走りながら、ねぎらいの言葉をかけられるソイル。


「それと、最初のストーンバレット……あれは暴発と呼べるほどのものじゃないわね」

「うん、石のイメージと込める魔力のバランスが合わなくて、石のほうが砕けちゃったって感じかな?」


 まあ、そうだよなぁ、原作ゲームでも魔法の暴発といったら、もっと派手にちゅどーんって感じで爆発してたし。

 でもそうか、今まであんまり気にしてなかったけど……イメージと魔力のバランスが合わなかったら、あんな感じで魔法がミスることもあるんだなぁ。


「……えっと……たぶん、いつもの癖で、石のイメージが弱かったのかもしれません」


 ふぅん、イメージか……

 そう思いながら俺も、適当に脆い石をイメージして魔力を込めてみた。

 そうして魔力を込めていくと石の強度を超えたのか、パンって感じで爆ぜた……なるほどねぇ。

 いつもは込める魔力に比例してイメージも強くしていたからなぁ、気付かなかったよ。


「いずれにせよ、まずまずの出だしといえるだろう」

「はい、この調子でどんどんいきましょう!」

「そうね、魔力が足りなくなったらポーションもあるし、魔力譲渡をしてあげてもいいわ……だから、本気を出しなさい」

「頑張れっ!」

「は、はいっ! 僕、頑張りますっ!!」


 ちょっと脳筋気味な魔法の使い方になっているきらいがないではないが……

 まあ、ソイルの今までが今までだったからな、これぐらいでちょうどいいのかもしれない。

 それに、弱めな魔法を使うこと自体は、既に嫌ってほどおこなってきたはずだから、むしろ得意といえるだろう。

 そう考えれば、あとは実戦を重ねることで適切な魔法の運用を学んでいけばいいといったところか。

 ……なんて偉そうにいっている俺だって、そもそも脳筋気味だということは否定できないからねぇ。

 なんてことを思いながら今日もこうして、夕方までひたすら森の中を走った。

 また、張り切って威力高めの魔法を使いまくったソイルは、途中でバテてしまいポーション等の休憩を何度か必要としたが、それも仕方あるまい。

 それだけ本気で魔法を撃ったということなのだからね!

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