第250話 ダブって見えてくるよ

 先ほど夕食を終え、模擬戦をしに運動場へ来た。

 そして、模擬戦の形式は昨日と同じで、ソイルの阻害魔法に重点を置いた内容でおこなう。

 そのため、今日もストーンバレットによる遠距離戦闘が主体となるだろう。


「準備はいいわね? それじゃあ、模擬戦を始めます」


 恒例のファティマの号令の下、模擬戦が始まる。

 加えて、もちろんというべきか、今日もギッシリのギャラリーである。

 ……また、どさくさに紛れてカップルとかができちゃうのかなぁ。

 それはともかくとして、今回のチーム分けは俺・パルフェナ・ソイル対ロイター・ファティマ・サンズとなった。

 それから、この模擬戦中は俺も魔纏を解いているので、ソイルからの魔法を阻害する魔力の影響を受けることが予想されるので、気合を入れていかねばなるまい。

 とはいえ、俺の魔力操作の練度を舐めてくれるな、といいたいところ。

 フッ、「魔力操作狂い」の呼び名が伊達ではないところを見せてやろうじゃないか!

 というわけで、無数のストーンバレットを待機状態で周囲に浮かばせる。


「ハハハハハ! お前たちは、このストーンバレットに対抗できるかな?」


 なんか、気分が乗ってきたので、ちょいと俺の中のイキリ虫に登場いただくことにした。


「うわぁ、相変わらず魔力操作狂いの魔法ってヤベェな……」

「あんな数のストーンバレットを一斉に撃ち込まれたら、体中穴だらけにされちゃうよ……」

「そういえば、この前のロイターとの決闘でも、アイスランスで同じようなことをしていたな……」

「や~ん! ロイター様ぁ、負けないでぇ~!!」

「ふん! 私のサンズきゅんなら、あんな小石程度どうってことないわ!!」

「あんな殺意の塊みたいなストーンバレットを小石って……正気か……」

「ふっふっふっ、恋しちゃってる乙女には、そんなこと関係ないのさ!」

「……何いってんだ、お前?」


 ふむ、集まってくれたギャラリーも湧いてくれているようだ、嬉しいもんだねぇ。


「アレス! 私にだって、同じようなことはできるぞ!!」

「そうね」

「僕のことも、大剣だけの男だとは思ってほしくないものですね!」


 そういいながら、ロイターたちの3人もストーンバレットを俺と同じように生成し、空中に待機させている。


「へぇ、やるねぇ」

「それじゃあ、私も今日はストーンバレット主体でいこうかな? ソイル君は昨日と同じように阻害魔法に集中してね! たぶん、相殺し切れなかったのが飛んでくると思うから」

「は、はいっ!」


 そうして、パルフェナもストーンバレットの生成を開始する。

 また、自然とこっちのチームはパルフェナがリーダー的存在となった。

 ま、とにかく俺はガンガン魔法を撃つだけだね。


「さて……それでは宴の始まりといこうか!」


 そんなイキリ語を一言発し、待機状態のストーンバレットを発射する。


「負けるか!」


 向こうからも、ロイターの掛け声とともにストーンバレットが撃ち込まれてくる。

 こちらとあちら、両チームから撃ち出されたストーンバレットは、ちょうど真ん中の辺りでぶつかり、弾けて粉々になる。

 ふむ、一先ず相殺といったところか。

 だが、そんなこと関係なくお互いに、次から次へとストーンバレットを生成して射出する。


「な、なんなんだよ、あれ……」

「……こわい」

「まあ、ある程度想像はできていたが……それでもやはり、この光景には恐ろしさを感じてしまうな……」

「こうやって見てるとやっぱ、昨日の魔力操作狂いたちは思いっきり手加減してたってことなんだろうなぁ」

「いわれてみれば確かに、迫力が全然違う……」

「いやぁ~! ロイター様ぁ! お怪我なさらないでぇ~!!」

「ふ……ふん! 私のサンズきゅんなら……大丈夫よ……きっと!」

「う~む、俺たちのパルフェナちゃんに、もしものことがなければいいが……」

「いえ、僕たちのファティマさんにこそ、もしものことがなければいいのですが……」

「あぁ!? パルフェナちゃんだろうが!!」

「何をおっしゃいます! ファティマさんです!!」


 あ、今日はパルフェナファンクラブの男子諸君とファティマファンクラブの男子諸君がケンカするっぽい。

 それはそれとして、最初はある程度ソイルも自分の魔力を制御できていたみたいだが、時間の経過とともにそれが甘くなってきているようだ。

 そのため、徐々に魔法の発動を阻害する魔力が漏れてきている。


「む、魔力操作狂いとパルフェナ嬢の魔法が少し弱まったか?」

「う~ん、そうか……な?」

「まあ、あれだけ魔法を連発すれば、そりゃバテてもくるでしょ」

「そうそう、それにロイターたちだって、だんだん魔法をミスり始めてるし」

「ふむ……果たしてそうなのだろうか……」

「パルフェナちゃん! 頑張れぇ!!」

「ファティマさん! 頑張ってくださぁ~い!!」


 魔纏でガッチリとガードせずに阻害を受けると、地味に魔法の発動に影響が出るのは確かだね。

 そのため、外野からも魔法が弱まったように見えたのだろう。

 しかしながら、それをソイルがもたらしていることだと気付かないとは……悲しいもんだね。

 それに、ロイターたちも魔法をミスっているのではなく、ソイルが阻害魔法で消しているというのに……

 だが、この点について不審に思い始めている奴もいるようで、そういう奴には期待できそうな気がしてくる。

 あと、どうでもいいことだが、パルフェナファンクラブの男子諸君とファティマファンクラブの男子諸君の争いは、応援合戦となったみたいだ。

 俺としては、集団で模擬戦とかしたほうがいいと思うんだけどなぁ。

 なんというか、君らが前世のアイドル好きの鈴木君にダブって見えてくるよ。

 ……そのうちオタ芸とかやりださんでくれよ?

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