第247話 一発入れた男
「へぇ、森の中を走るのかぁ、楽しそうだね!」
「それに私たちも参加するからよろしく」
「え? 昼間は女子で集まったりしてるんだろ? そっちはいいのか?」
「うん、みんなには今日、『試験に向けてパーティーメンバーで練習する』っていっておいたから大丈夫だよ!」
「そういうことよ」
「ふぅん、それならいいが」
「それじゃあ、私たちはこっちだから……みんな! また明日、頑張ろうね!!」
「またね」
そうして、ファティマとパルフェナも明日からの森の中ランニングへの参加を表明して、女湯へと向かっていった。
まあ、パーティーメンバーがそろって活動したほうが、何かといいのだろうという気はするし、女子同士の関係も上手くいっているのなら、俺たちがアレコレいう必要もあるまい。
そんなことを思いつつ、俺たち男子4人も男湯へ向かう。
この、模擬戦で体を酷使したあとにお風呂でゆったり気分を味わうという流れ、最高の贅沢ってやつだよなぁ。
ただ、お風呂から上がったら試験勉強が待っている……あともうひと頑張りってところだな。
そうして、お湯につかりながらこのあとの流れについて考えていたところ……
「おお! 公衆の面前で告白を成功させた色男殿の登場だぞ!!」
「おいっ! やめろって! そういうのいいから!!」
さっきの彼氏君もひとっ風呂浴びに来たようだ。
そして、口ではやめろといいながら、まんざらでもなさそう。
ま、それもそうか、今が一番テンションの高いときなのかもしれないし。
「へぇ、アイツがうわさの……」
「サンズに憧れてる女子って無理めだと思ってたんだけどなぁ」
「え? なんで?」
「いやぁ、なんというか……ガチ感が違うっていうかさ……」
「ああ、オレもさっき見たぞ、そのガチ感全開の女子を……あの子カワイイのになぁ、もったいない……」
その話題のサンズであるが……コイツ、無駄に気配を消してやがる!
「おい、それはなんのマネだ?」
「いえいえ、僕がいると思うとみなさん、歯切れが悪くなるかと思いまして」
「お前なぁ……アイツらは、俺がいるのに堂々と好き放題いってる奴らなんだから、お前がいてもいなくても気にせんだろ」
「まあ、そうかもしれませんねぇ」
「まったく……」
そういえば、さっきはパルフェナに流れ弾が飛んでいくのを危惧したが、今なら大丈夫そうだな……よっしゃ、イジったれ!
「してサンズよ……お前に想いを寄せる女子が1人減ったわけだが……それについて何か思うことは?」
「ちょ! ちょっと! アレスさん!!」
「そうですねぇ……2人仲良く、末永く幸せにといったところでしょうか」
「そんな反応が返ってくることも予想しなかったわけではないが、随分とアッサリしたものだな?」
「た、確かに……」
「僕はまだまだ未熟者ですからねぇ、そんな僕が色恋にうつつを抜かすわけにはいきませんよ」
「ほう、なかなかにストイックなものだな……だが、そういう姿勢も嫌いではない」
「サンズさん……カッコいいです」
そんなふうに感心する俺とソイル。
だが、今に至るまでロイターがダンマリを決め込んでいるのが気になるところだ。
「……それに、ロイター様より先に恋人を作るのは気が引けますからね!」
「クッ! やはりか!!」
ここでロイターの絶叫がこだまする。
最終的に、ロイターイジりに持っていくとはサンズめ、やりおる。
そんなことを呑気に思いつつ、改めて冷静に考えてみると……今でこそ俺とファティマは互いに「友達」と認識することになっているが、それでファティマがロイターの想いに応えるかどうかっていうのはな……
うぅ、サンズを軽くイジるつもりだったが、やっちまった感が出てきてしまった。
「アレス……私もサンズも自分で好きに選んだ道を歩いているのだ、変な気は使うな……それはきっとファティマさんも同じだろう」
「そうですね、冗談が過ぎたかもしれませんが……あくまでも自分の意思で恋人を作っていないだけです」
「……お2人はモテモテですから……その気になったらスグですよ……僕とは違ってね……あいたッ!」
俺たち3人からソイルにチョップが飛ぶ。
コイツめ、隙あらば自虐をかましよる。
いやまあ、今は俺も少しばかりネガティブ思考だったか……
「ソイルよ、お前も一発俺に入れていいぞ」
「えッ!? そんな! 遠慮しときますよぉ~」
「ソイル、そういわず一発アレスに入れてやれ……なんというか、自信につながるかもしれんし」
「そのとおりですソイルさん、そしてまたまたチャンスですよ! 今ならアレスさんに一発入れた男になれます! さあ、拳を握りましょう!!」
「またその言い回しぃ~!!」
「さあ、ソイルよ、どんとこい! 安心しろ、魔纏も解いてある!!」
「……う、うぅ……それじゃあ……」
俺たち3人の勢いに押され、ソイルは恐る恐るといった面持ちで、俺にデコピンをしてきた。
ささやかぁ~!
「……ソイルの一発、しかと受け止めたぞ」
「えぇ! そんな重く受け止めないでくださいよぉ!!」
「いや、お前はアレスに一発入れた男だ、誇るがいい」
「やりましたね! ソイルさん!!」
「えぇ……」
こんな感じで、大浴場で過ごしていたのだった。
「ソイルの奴、なんてことしてんだよ……」
「アイツって、そんなに魔力操作狂いに気を許されてるのか……」
そんな声も多少聞こえてきたが、まあ、関係ないね。
さて、これから試験勉強だ! もうひと踏ん張りいきまっせ!!
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