第231話 まずはそれからだ!!

「アンタがほかのボウヤと一緒に魔法練習場に来るなんて、珍しいこともあるもんだねぇ」

「いやぁ、なんというか……成り行きでこの者に稽古を付けてやることになりまして……」

「へぇ、それならしっかり教えてやんないとだねぇ……ほら、そっちのボウヤも教えてもらうんだから、もっとシャキッとしたらどうだい!?」

「は、はいぃ!」

「よし、それで練習場だけど、今日は37号室を使いな……それじゃあ、頑張っといで!!」

「はい! ありがとうございます!!」

「はいぃ!」


 こうして、魔法練習場の受付を済ませ、37号室へ移動。

 しかしながら、軟弱ソイルは受付のお姉さんにまでオドオドするとは……本当に軟弱者だな!


「……ッ!? な、なぜ睨むのですか……?」

「……お前のお姉さんに対する態度がなってないからだ」

「えぇ……」


 ふむ……この際だ、コイツにお姉さんの素晴らしさもしっかりと叩きこんでやるとしようじゃないか。


「……ッ!? こ、今度はなんですか……?」


 待てよ……意外とこのナヨナヨした感じはお姉さんたちの庇護欲をそそるかもしれん。

 そういった視点から考えれば、コイツはなかなかのポテンシャルを秘めているといえるだろう。

 ……これは思いがけない拾い物をしたかもしれないな!


「……お前の育成方針を思案していたところだ」

「……そ、そうですか……えっと、その……お手柔らかに……お願いします……」

「フッ……それはお前次第だな」

「そ、そんなぁ……」


 こうした心温まるお喋りを交えつつ、37号室の小練習場へ入る。

 そして、俺はコイツの実力をよく知らんので、とりあえず前期試験と同形式で的当てをやらせてみることにした。


「そ、それじゃあ……やってみます……」

「おう」


 一言交わし、障壁魔法を展開させる装置のスイッチを押す。

 そうして展開される障壁魔法に1発、2発と順調にストーンバレットをヒットさせていく軟弱ソイルであったが……弾数が増えるにつれ、どんどん顔色が悪くなっていき、的も外すようになり始めた。

 ……いや、外すというより、途中で魔法がかき消えてしまうというべきかな。

 また、それと同時に軟弱ソイルから魔法の発動を阻害する魔力……長いから魔法の阻害が放たれてくる。

 なんとなくこれは、以前エリナ先生に教えてもらった魔法の支配権に少し似ているといえるかもしれない。

 まぁ、この程度の魔法の阻害など、俺の魔纏にはなんの影響もないがな!

 とまぁ、そんなこともありつつ、試験1回分の的当てが終わった。

 結果としてはイマイチで、序盤で稼いだ得点でどうにかこうにかといった感じ。


「終わったようだな……まぁ、それはそれとして……なんで俺に魔法の阻害を仕掛けてきたんだ?」

「え? 魔法の阻害!?」

「……それとも、俺に何か文句でもあるのか? もしそうなら口でハッキリいえ……ぶん殴ってやるから」

「そ、そんな理不尽な……」

「理不尽だと? そんなもん、つまらん理由でお前を捨てたヴィーンとやらも大概ではないか」

「それは違います! 僕がいけなかったのです! ヴィーン様は悪くありません!!」

「フン、どうだかな」


 しかしながら、この軟弱ソイルの反応からして、魔法の阻害は無意識によるものだったようだな。

 ふむ、これはどういうことか……


「先ほどのお前は的当てと同時に、魔法の発動を阻害する魔力を周囲に放っていたのだが……気付いていなかったのか?」

「え!? そんなの知りませ……ん? ……そういえばトーリグとハソッドが、僕が近くにいると魔法が上手くいかないっていっていたような? ……いや、でもあれは、単なる言葉のあやだったはず……」


 知らん名前だが、話の流れ的にコイツの元パーティーメンバーだろうな。

 もっといえば、コイツを積極的に排除しようとしていた2人というべきか。

 それはともかく、おそらくその2人がいっていたことは本当だろうな。

 まぁ、あの程度の魔法の阻害に負ける程度の練度でしかないともいえるが……

 いや、だからこそコイツを追い出さねばならなかった……ってことにもなり得るわけか。

 とはいえ、そこまで明確に魔法の阻害を食らってたという認識でもなかっただろうな。

 たぶん、なんとなくってレベル……じゃなければ、きちんと指摘して改善を促しただろうし。


「……お前は魔法を発動するとき、どんなイメージをしている?」

「え? 普通に……ストーンバレットなら、石の弾をイメージしていますが……」

「それだけか? ほかに何か余計なことを考えていないか?」

「う~ん、ほかに……やっぱり、失敗したら嫌だなってことは思っちゃいますよね……?」

「それだ!」

「え?」


 そういえばコイツ……さっきも陰気な魔力を垂れ流していたのを忘れていた。

 おそらく、「失敗」というイメージが強すぎて、それが魔力に乗って周囲に放出されていたのだろう。

 そして周囲は、魔法の発動を阻害される……つまりは魔法の失敗という結果に結び付くわけだ。

 いや、これは周囲だけではなく、コイツ自身の魔法も失敗させていたのだろうな。

 フッ、答えは出た……ならば、やることも決まった!


「……『失敗』というイメージを捨てろ! まずはそれからだ!!」

「えぇ!?」

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